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私の好きな映画

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2024/02/27 21:36

ヤクザと中学生の青春ハーモニー♪「カラオケ行こ!」

ありえないシチュエーションであるからこそ非日常感を味わえる、それがファンタジーの醍醐味である。

 

スタイルが恐ろしく良く、顔が良いヤクザ・綾野剛(成田狂児役)がすでにファンタジーだし、そんなヤクザが中学生の合唱コンクールを観に行っているのもまたファンタジーでしかない。そして、そんなイケメンヤクザに目をつけられた残念な男子中学生が、齋藤潤(岡聡実役)である。

 


 

映画「カラオケ行こ!」は、毎年組長主催のカラオケ大会で、組長の趣味である下手くそな手彫り刺青の餌食になるのを免れたいヤクザと、変声期に悩む合唱部部長である男子中学生の物語。原作は人気漫画家・和山やまの累計発行部数60万部を突破したコミック「カラオケ行こ!」である。

 


 

私は漫画の「カラオケ行こ!」が大好きで、そもそも和山やま作品が好きだった為、先生の公式SNSをフォローしていたのだが、実写化に伴い、岡聡実役をする男子中学生はオーディションで決めると流れてきた時にはびっくりした。和山やま先生自身が応募を呼びかけ、脚本家である野木亜紀子さんまでもが「誰かいませんか?」と呼びかける異常事態に、事の顛末を面白く見守っていた。

 

そして決まったのが、新人俳優である齋藤潤くんであった。

 

 

新人俳優を起用するということは前評判がないという事である。私は公開当初、すぐにこの作品を観にいって無かった。公開から二週間後ようやく観に行ったのだが、初動が遅れたことを激しく後悔した。

 

というのも、グッズはおろかパンフレットも完売。主演の二人をイメージしたフレグランスも完売。公式ビジュアルブックは増版前の完売、コミックスは当然完売。そして舞台挨拶など、泣いても笑ってもいけないのである。(と言いつつ、最後駆け込みで行けましたが)

 

後追い・口コミで人気がグングン上がり、絶唱応援上映なる企画も大成功し、結果、公開1ヶ月以上も経ってからアドトラックが運行するという。意味がわからない。

 

 

そんな「カラオケ行こ!」だが、ジャンルとしてはコメディーである。

脚本家・野木亜紀子マジックとも言うべき、必要人物に必要なセリフをあてがうところに毎回笑ってしまう。そしてヤクザのメンツのラインナップがヤバい。よしもと芸人やら本気の歌手、そしてMIU404好きにはお馴染みの橋本じゅんさん等がガチで笑わせにかかってくる。さらには、

 

綾野剛の”間”がヤバい。

 

あまり表情を変えず、低音ヴォイスで淡々と滑稽に話す様は、原作の成田狂児を彷彿とさせる。設定では顔がよく、卒業後は女のヒモとして生計を立て、バイト先の「カラオケ天国」で現組長にスカウトされ、ヤクザの世界に入ったという。そんな成田狂児は当然の如く”人たらし”。そんな成田狂児に翻弄されながらも、芯の強い思春期BOY・岡聡実が可愛くて仕方ない。

 

通算7回はこの作品を観に行っているのに、聡実くんが出てくるたびに、かんわいいな〜とため息が出る。それほど可愛い。狂児と聡実くんの掛け合いが、徐々に身分や年齢を超えた友情に変わっていく様がこの映画の見どころである。(そして現在、続編でもある「ファミレス行こ!」が連載中。エモさの向こう側が知りたい方はぜひ)

 


 

そして、この作品にはさまざまな箇所に対比のエッセンスが盛り込まれている。

 

 

①鶴と亀

 オープニングで狂児の背中のドアップが映るが、その背中には鶴の紋紋が彫られている。

 大雨の中、「カラオケ行こ」と連れ去られた聡実くんが忘れていった傘の柄は亀。

 傘の柄が派手すぎて、お母さんに言って買い直してもらうも、次の傘の柄が鶴。

 

②天国と地獄

 狂児と聡実くんがいつも集合するカラオケ店の店名は「カラオケ天国」。

 狂児はヤクザだから地獄に堕ちると言っている。

 聡実くんの歌声は天使の歌声。狂児曰く「神からのお告げか思た」そう。

 狂児の身が危うい時にまでカラオケ大会を実施する組長に「地獄に堕ちてまえ」と言う聡実くん。

 

③白と黒

 オープニングでは白シャツを着ている狂児。聡実くんも白の半袖ワイシャツを着ている。

 カラオケ店内で雨に濡れた狂児は黒シャツに着替える。聡実くんは白の半袖ワイシャツのまま。

 聡実くんの学校に着た狂児は黒スーツに白シャツ黒ネクタイ。聡実くんは白の半袖シャツ。

 季節が移ろい、狂児は黒スーツに白シャツ黒ネクタイは変わらず、聡実くんは白の長袖シャツとパーカー。

 クライマックスシーンでは、狂児が白服。聡実くんが学ラン(黒)。

 そして、服装だけではなく、エモシーンの一つである屋上シーンで狂児が買ってきた缶コーヒーがブラック(黒缶)とカフェラテ(白缶)。

 

 

他には、脇を固める名優たちにも注目してほしい。聡実くんの両親には坂井真紀宮崎吐夢、狂児の母にはヒコロヒー、祖父が加藤雅也

聡実くんの合唱部にはももちゃん先生(芳根京子)、合唱部の後輩には既にカラオケ行こ!では名物キャラの和田(後聖人)がいて、細部に渡って抜かりない。

 

 


 

終始笑えるのだが、全体を通して「紅」や合唱部の歌があったり、カラオケではヤクザの歌があったりとミュージカル要素もあるところがこの映画の好きなところでもある。

ディズニー映画の音楽のエッセンスが好きな方には、きっと刺さるのではないかと。

 

そして何と言っても、齋藤潤くんの《人生一度きり》であろう変声期の時期だと思うとなお、

クライマックスシーンが「刺さってもおた矢」のように、この映画の中毒性から抜けず刺さったままである事も付け加えておこう。
 

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