カッツ
2025/12/09 09:05
秘書
2002年公開、マギー・ギレンホールが内向的で精神的に不安定な女性、リー・ホロウェイを演じた異色のラブストーリーである。
リーは自傷癖を抱えながらも、社会復帰の一歩として弁護士事務所の秘書として働き始める。彼女の上司であるエドワードは、厳格で陰湿とも言える教育を施すが、次第にその関係は単なる上下関係を超え、支配と服従という独特な形で深まっていく。
リーはエドワードの命令に従うことで、自分の存在を肯定されているような感覚を得ていき、やがて彼に恋心を抱くようになる。一見すると倒錯的な関係に見えるが、二人の間には他者には理解しがたい、しかし確かな信頼と愛情が芽生えていく。
マギー・ギレンホールはこの難しい役を見事に演じきっており、リーの繊細さと強さ、そして変化していく内面をリアルに表現している。彼女の演技があってこそ、この物語は説得力を持って成立していると感じた。
物語は最終的にハッピーエンドを迎えるが、それは単なる恋愛の成就ではなく、自分自身を受け入れ、他者と真に向き合うことの大切さを描いた結末でもある。『秘書』は、愛のかたちの多様性と、人間の深層心理に迫る挑戦的な作品だった。
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