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2024/06/03 16:11

【SINGULA】堤幸彦監督最新作 spi単独インタビュー後篇 / 「体験型思考実験アトラクション」

(C)「SINGULA」film partners 2023

Summary
監督・堤幸彦 新作映画『SINGULA(シンギュラ)』AI vs AIのディベートバトルロイヤル。近年Chat GPTの登場など急激にAIが注目される中、AI同士が討論したらどうなるのか?前篇では役作りの難しさを語り、今回後篇では役の設定や物語自体の構成について深堀した主演spiにその思いを聞いた。(取材・文 / 中谷 元)


――ストーリーとして、私が最初に受けた印象は“なかなか入り込みづらい”という印象でした。前半では一言聞き逃すだけでついていけなくなる不安感があり、逆に後半はスピード感んがあって哲学や芸術的要素が多かった印象です。

spi:実は仕掛けの一つで。冒頭から、「15体のはずなのに5人しか座ってない。どういう設定なんだ?」と違和感のある欠陥があるので、理解できない部分から始まります。なので前半で脳汁を使い果たすようにできているんですよ。後半で話がスッと入ってくるように。後半がスピード感がある、というのは前半の脳内ブロックと戦う時間なので、そう感じます。演じている側は一貫しているので何も変わることはありません。

――撮影現場の雰囲気はどうでしたか?作中は基本的にはムーディな雰囲気というか、ややダーク要素の強い雰囲気でしたが。
spi:現場は死に物狂いでした。雰囲気も時間なく、一日7時間寝て、あと一時間のごはん休憩。それ以外はずっと撮っていました。次のカメラあり、次のカットある。次の俺のセリフの繰り返しで、ロボットような動きでした。ただ、その時はものすごく集中していたので、監督の「コツコツやっていこう」というを言葉を信じてやり切りました。例えると石を積んでいくような感覚でした。

(C)「SINGULA」film partners 2023

――15役分、その設定に切り替える役者さんの時間が設けられていると思っていました。

spi:1秒もないです。「次、3番です」と言われて「3番だから…かかとこっち、膝こっち、腕ここ...」みたいな感じです。

――1週間終わった後の疲れが半端じゃなさそうですね。
spi:この作品が終わったら「俺もう、何でもできるな」と思いましたね。これをやり切ったんだから他の仕事には自信がつきました。撮影中はずっとラムネ食べて、血糖値と戦っていました。

――その甲斐もあって、マドリードの国際映画祭で最優秀主演男優賞受賞おめでとうございます。全てが大変だったと思いますが、一番演じる際に難しかったところは?
spi:”ネーベル”という8番のAIがカウボーイ訛りで。『インターステラー』の主人公が元になっています。そもそも1~10までハリウッドスターが割り振られていて、8番はそのウエスタン訛りの喋り方で、聞いたことのない古の英単語のようでした。ギャルのようなAI覚えていますか?あの子が使う英語は、現代の高校で使う英語なのでとても簡単でした。8番だけは、全然つかみどころのないアクセントで、単語の訳し方も難しくて大変でした。撮り直しが多かったキャラクターです。イギリス訛りでもあったので、舌の使い方から違うので、どうしてもできなくて苦戦しました。

――各設定があったとは驚きです。Spiさんが各AIそれぞれに設定されたのですか?
spi:脚本家が設定しました。喋り方もある程度、イメージの英語がありましたが、各AIのルール(癖)は自分で設定しました。アン・ハサウェイだったら、アン・ハサウェイが喋っている動画を観て研究しました。それを15体分。普通は15体の役を作るのに4ヶ月以上かかります、一人につき最低1週間。それが台本もらってから、1か月半しかなかったので約1/4の時間でした。

(C)「SINGULA」film partners 2023

――作品の裏側を知ると、さらに細かく観返したくなってきました。
spi:機会があったら、誰かに見せるという口実で2回観てほしいですね。前半の意味が分かった状態で、後半を観ると「なるほどね」となるので。そうすると、前半が面白い。初見は前半の脳内ブロックが強いため、「・・・難しい。」となりますが、2回目は議論に慣れてるために「前半は各々こういう含み方でこういう関わりで探り合いをしているのか」と理解して議論が始まる。2回目の方が更に面白いですね。

――5月10日(金)公開ですね。本作の言える範囲での魅力を教えてください。
spi:「何度観ても面白いみたい」とよく言いますが、この映画は本当にそれですね。“体験型試行実験アトラクション”というような、まさに脳中ジェットコースター。そして、終わった頃には「なんかすごい作品を観た」という気になる。確かに初見はぐったりすることもありますが、何日・何週間か経つと『SINGULA』を話題に出したくなるんですよね。「『SINGULA』っていう超変な映画なんだけど、見たことある?」みたいな。自分はもう一回目を経験できないじゃないですか。誰かの一回目に観た感想を聞きたくなるんですよ。でも自分はもう2回目だから、2回目の面白さに気づいてしまっている。話題性もあり、「堤監督の作品で、一人15役のすっごい変な映画らしいよ」と言いたくなるようなループする魅力のある作品なので、ぜひ観てみてほしいです。

タイトル:SINGULA
出演:spi
監督:堤幸彦
本・原案:「SINGULA」⼀ノ瀬京介
主題歌:「イフ」r-906 feat. 初⾳ミク配給:ティ・ジョイ
5/10(金)より新宿バルト9ほか全国公開

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