忍術児雷也
忍術児雷也
製作:1955年 / 配給:新東宝
スタッフ
監督: 加藤泰/荻原遼
脚本: 賀集院太郎
キャスト
大谷友右衛門/田崎潤/若山富三郎/ 市川男女之助
/ 利根はる恵/ 香川良介/ 大河内伝次郎

鯨波照忠の策謀にはまり、更科城を失った尾形家の遺児、周馬が、ガマ仙人から秘術を授かる。“児雷也“として生まれ変わった彼は宿敵、鯨波に迫るが、恐るべき大蛇丸がその前に立ちはだかる。奇想天外な忍術合戦を映像化した特撮時代劇。

怪獣ブームの最中、松方弘樹主演で作られた「怪竜大決戦」(1966)と同じく、歌舞伎の演目としても知られる「児雷也」の物語である。
元々は、江戸時代に流行った長編草双紙の題材らしい。
「蝦蟇は蛇に弱く、蛇はナメクジに弱く、ナメクジは蝦蟇に弱い」と言う「三すくみ」の由来ともなった話。

梨園出身の大谷友右衛門が、女装したり、踊りを披露してみせるのが見物。
またこの当時特有の見せ方だったのか、照忠役の市川男女之助が登場するシーンなど、わざとキャメラの方に顔を近づけて、わざとらしくアップになる撮り方などが目立つ。

印を結ぶと煙がパッと出て来て、忍術使いが消える…と言った、かなり大時代なセンスのトリック映画なのだが、1955年と言うと、ゴジラ(1954)の次の年の作品である。
劇中に登場する火(花火)を吐く大蛇、大蝦蟇、ナメクジなどの造形は、ゴム製の着ぐるみと言うよりもハリボテに近く、動きもかなりぎこちない。

後は、白黒フィルム特有のオーバーラップなど初歩的な合成技術が使われているくらいなのだが、まだ特撮ファンタジー作品が少なかった当時としては、それなりに子供たちからの人気を得たらしい。
見た目おとなしそうで、さほど強烈な印象も残らない大谷友右衛門に対し、敵役の大蛇丸を演じている田崎潤の方が生き生きとしており、はるかに印象に残る。
田崎潤ファンには、必見の映画の一本かも知れない。

この作品、若山富三郎のデビュー作でもある。
加藤泰監督は「冒険大活劇にすれば良かったのに不完全なドラマの方に色目を使い一生懸命になり…教訓を得た失敗作」と評しておられるそうですが、
私は決してそうとは感じませんでしたし田崎潤の女好きの暴れん坊振りや嵯峨三智子の美しさ等々にも魅せられながら解り易い物語を存分に楽しませて貰いました。