Discover us

取材・イベント

IKA バッジ画像
2024/07/24 15:47

【エス】太田真博監督・松下倖子さんインタビュー前篇 / 「自身の逮捕から着想した物語」

Discover usの「Dポーズ」 / 左:松下倖子、右:太田真博監督

Summary

太田真博監督が、自身の逮捕から着想した物語『エス』。『青春ジャック 止められるか、俺たちを2』の井上淳一監督(『福田村事件』では脚本担当)から「この映画と出会わないと損しますよ」(一部抜粋)との絶賛コメントをいただき、『福田村事件』森達也監督のコメントとともに予告編へも収録。
監督の太田真博さんと、主演の松下倖子さんに逮捕された本人が登場しない作品の再現方法や、太田監督の人物像を聞いた。
(取材:中谷・IKA / 文:上田)


中谷:本作を撮影する上で、モチーフとなっている監督自身がいない場面のシーンが多く、再現が非常に難しいと感じました。監督自身が居た環境は描けても、友人同士の会話や裏側をどう実現したのでしょうか。
太田:自身の経験を基に再現した事実の割合は3 割程度となっています。
事実の部分としては、ある特定のセリフが実際に言われた言葉であったり、一部登場人物が実際の人物のモデルである部分です。
「縮こまって生きてりゃいいじゃん」や、「本当透明だよね」というセリフは、実際に仲の良い友達や、職場の人に言われた言葉を用いています。
普段、構成を作る際に、湯船につかりながら、自ら即興でシーンを作り、1人2役、あるいは1人6役を頭の中で演じながら考えているのですが、その時に、実際に言われたセリフから始めてみて、どんどんフィクションになっていくという作り方をしています。
捕まった当事者は作中にでてこないという構成は、企画を立てた当初から決めていたので、周りの友達や、職場の人たちが自分のいないところで、どのように話すかを想像しながら作成しました。
登場人物に関しては、あてがきをしないため、現実にいる人をモデルとして書いていました。1人とてもケチな先輩が出てくるのですが、この人にいたっては9割方実在のモデルの人物を再現しています。私自身、嫌いな人がいなく、多くの人と関わることが好きなので、現実の事柄や人をモデルとした制作手法は私自身の性格にもあっていると思っています。

IKA:太田監督は松下さんの引退を思いとどまらせてくれたとお伺いしましたが、松下さんから見る太田監督はどのような方でしょうか。
松下:私は太田さんのことを「人間コレクター」だと思っています。
人間愛に溢れている人では決してないのですが、面白い人を見つけるとすごく嬉しそうに人と関わっているコレクターだと思います。
太田さんの中で人間図鑑のようなものがあり、ステレオタイプではなく、実際の経験に基づく自身のコミュニティを映画作りに反映しているのではないかと思っています。
プライベートの太田さんは人との距離の詰め方がとてもうまい人です。
硬くなってしまうような場面を1人で盛り上げたり、初めて会う人をカラオケに誘ったり、果敢に人と関わっているような印象です。
撮影時もそのままの太田さんで、役者さんやスタッフさんと、よく裏でふざけあったりしています。
キャラクターの要素を見抜く力がすごいと感じていて、役者さんの良いところを引き出すのがとてもうまいと感じています。そのようなこともあり、現場で役者さんのいい表情をたくさん引き出している印象で、多くの人から現場で信頼されていく人だなと感じています。

中谷:本作は会話のテンポと掛け合いが多く、演じるうえで非常に難しい作品だと感じました。キャスト同士で気を付けたことや意識していたことはありますか?
松下:まず太田組のルールとして、太田さん抜きで役者同士で何かを話し合うこと、セリフ合わせの練習をすることが禁止となっています。そのため、リハーサルと本番のみで作り上げていく形となります。
太田さんには「お互いがお互いのために芝居をしてください」と言われていて、1人の役者さんがセリフを言いづらかったとしたら、その人ではなく、“その人が言いやすいような流れが作れていない周りが悪い”ということを事前に言われています。私たち役者は皆、このようなルールや重視すべきことの共通認識をもって演じていました。
また、セリフは一言一句変えてはいけないというルールがあります。一音一音全て細かく台本に書かれていて、撮影時には、助監督さんが2名いましたが、台本を撮影中にずっと見ていて、一音でも抜けていたら、さっと飛んできてくれて、「この音抜けていましたよ」と伝えてくれました。
そのため、本番中は、お互いのセリフや演技に対する集中力がとても高い状態でずっと演じられていたと思います。私は、12年ほど太田さんと一緒にやっていますが、初めて太田さんと組む人は大変だろうなと感じていましたが、皆このルールを徹底するように意識づけしていたと思います。 

IKA:セリフは一言一句変えてはいけないというルールはどのような思いから定めているのでしょうか。
太田:セリフをちゃんと覚えていない状態の役者が何をやってもそこに存在することは不可能であるという思いからです。作品全体に与える影響で言うと、単純なことですが、セリフをしっかりと覚えていない人が、「語尾を間違えてもいいでしょ」と言うとして、どうしてその次の人に与える影響を考えないのか問いたいです。
「~だよ」と、「~だね」というのでは、全然印象が変わってしまうため、次の人に与える影響や、印象付けの部分を重視してもらいたく、このようなルールを定めています。

(C)上原商店

2024年7月20日(土)より、シアターセブンにて公開
 

『エス』
監督:太田真博
出演:松下倖子、青野竜平、後藤龍馬、安部康二郎、向有美、はしもとめい、
大網亜矢乃、辻川幸代、坂口辰平、淡路優花、河相我聞
(C)上原商店
公式サイト:https://s-eiga.com/#
X: @s_eiga

コメントする