DISCASレビュー

カッツ
2025/12/14 07:42

哀しみのトリスターナ

1970年/スペイン=フランス=イタリア合作/監督:ルイス・ブニュエル

高校生の頃、映画館で観た予告編の「トリスターナが窓を開け放ち胸を広げる」シーンが強く印象に残り、少し刺激的な場面を期待していた。しかし当時は本編を観る機会がなく、50年以上を経てようやく鑑賞することができた。

前半では、カトリーヌ・ドヌーヴが若く美しい少女として登場し、その清純さが際立っている。ところが後半になると、彼女は冷たく意地悪な女性へと変貌していく。この心の変化は理解しがたく、観る者に戸惑いを与える。ドヌーヴの演技は確かに魅力的だが、期待していたような艶めかしい場面はなく、その点は少し残念に感じた。

本作は、単なる恋愛劇ではなく、人間の心の移ろいや欲望、そして権力関係の歪みを描いたドラマである。ドヌーヴの美しさと冷酷さの対比が強烈な印象を残し、観る者に複雑な感情を呼び起こす。

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