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私の好きな映画

かずし
2024/02/29 16:55

ヴィム・ヴェンダース監督 ロードムービー3部作そして『パリ、テキサス』

初コラムです。(ありがとうございます)

『PERFECT DAYS』が絶賛公開中のヴィム・ヴェンダース監督。1984年、西ドイツ時代に作られた『パリ、テキサス』(原題 Paris,Texas)、知る人ぞ知る著名なロードムービーですよね。

監督のロードムービーの原点である、1970年代、ニュー・ジャーマン・シネマとして位置付けられた3作品と『パリ、テキサス』を紹介します。監督は1945年生まれなので、26歳〜30歳ぐらいで撮った作品なので、当時からすごい才能があったんだなと感心した作品です。

ニュー・ジャーマン・シネマとは、以下の条件に当てはまる映画とのこと。
(世界シネマ大事典から引用)

①1970年代の若手の新進映画作家であること
②監督が作品全体をコントロールしていること
③機動力のある新技術を採用して少ないスタッフで撮影していること
④アメリカ映画の影響をうけていること

同じニュー・ジャーマン・シネマの旗手でもあるライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督の『ペトラ・フォン・カントの苦い涙』(1972年)は、昨年フランソワ・オゾン監督のリメイク『苦い涙』が公開されましたね。


『都会のアリス』 

1973年 西ドイツ 111分

即効撮影を用いたヌーヴェルバーグ風かつ小津安二郎から影響を受けた作品とのこと。即効とは『すぐに効き目があること』なので、見た瞬間、そのロケーションの風景などと組み合わせて撮影する感じでしょうか。

 

ヌーヴェルバーグとは?(ウィキペディアより引用)

『ヌーヴェルヴァーグ(Nouvelle Vague)は、1950年代末に始まったフランスにおける映画運動。ヌーベルバーグ、ヌーヴェル・ヴァーグとも表記され、「新しい波」(ニュー・ウェーブ)を意味する』


場所はニューヨーク、ドイツ人ジャーナリストのフィリップが、意図せず偶然出会った母娘。突然、母親が行方を眩ますという突拍子もない展開がやや強引な感じはしますが、フィリップは仕方なく残された少女アリスをヨーロッパにある祖母の家へ送り届けるハメに。それもアリスの朧げな記憶のみが頼りというかなりアバウトな旅に出発するわけです。

最初は渋々アリスを連れていくことになったフィリップですが、アメリカ→オランダ→西ドイツの旅の道中で2人の仲は切っても切れない親子のような関係に昇華します。2人が並んで写真を撮るシーンは、もしかしてヴィンセント・ギャロが影響を受けて『バッファロー‘66』(1998年)のビリーとレイラの証明写真のシーンを作ったのでは?と感じたりもしました。

本作は、同時期に作られた『ペーパー・ムーン』(1973年)にも似ており、試写を観たヴィム監督は本作の製作を一時断念したようです。

西ドイツのブッパータール空中鉄道(吊り下げ型モノレール)なるものが出てきますが、1970年代初頭の近未来風な乗り物にオッと驚きました。⁡


 

『まわり道』 

1974  西ドイツ 100分

3部作唯一のカラー作品です。

主人公は、ヴィルヘルムという小説家志望の青年。小説家なので書けないと仕事になりませんが、母親に勧められて旅に出ます。旅の途中でいつの間にか出会って仲間になる人たち。元ナチスの旅芸人と美しい少女、女優、詩人の男、そして金持ちの紳士。

突拍子もない出会いの数々に少々戸惑いましたが、観終わってからジワジワくる独特な感覚のロードムービーでした。

西ドイツ出身の女優ナスターシャ・キンスキーのデビュー作としても有名です。特に有名な出演作品がヴィム監督の『パリ、テキサス』ですね。トラヴィスと息子が捜索する妻ジェーンを演じましたが、その圧倒的な存在感は格別でしたね。生まれが1961年で本作の製作が1974年ということは、当時は13歳〜14歳でしょうか。しかもその歳でしっかり脱いでることにも驚きました。⁡


『さすらい』 

1975  西ドイツ 176分

映画の主人公2人とともに監督や撮影スタッフが一緒に旅を重ねるなかでストーリーを組み立てていく即興演出で完成させた作品。3部作の中で1番好きでした。

映画館を巡回して映写機を修理してまわる主人公ブルーノとカミカゼのように突然ブルーノの前に現れた謎の男ローベルトとの二人三脚の珍道中。

3時間の長尺ですが、印象的なシーンの連続で不思議と観入ってしまう。途中に小学校の上映会で、子供たちを前に映画上映の準備をする過程での2人のパントマイムがとんでもなく素晴らしい。⁡あと、映画の中で2人の主人公が外で排泄をするシーンがあるんですが、ボカシが入っているもののモノが分かるシーンが、ある意味笑撃でした。

ブルーノとローベルトが友情を育みながらもラストに別々の道を歩んでいくシーンは、ジム・ジャームッシュ監督の『ダウン・バイ・ロー』のラストシーンを思い出しました。あちらは、3人の別れでしたけどね。

3作通しての主役を演じた俳優は、リュディガー・フォーグラーさん。今は御年81歳になられてます。この3本の映画では優しい眼差しと独特の存在感で見る側を魅了し、監督には欠かせないヴィム組の俳優だったのかなと思います。


『パリ、テキサス』

1984 西ドイツ、フランス 146分

広大なテキサス州にあるパリという場所を目指し、ひたすら歩き続ける中年男トラヴィス。

 彼の目的は?
 なぜそんなことをしているのか?
 家族はいるのか?
 逃亡者か?

冒頭から様々な憶測が脳裏をよぎりますが、家族の絆、夫婦の愛情を描いたロードムービーかつ切ないラブストーリーでもあります。

男女の愛のバランスを保つのは本当に難しいこと。『夜空はいつでも最高密度の青色だ』という邦画で『愛は今まで散々人を殺してきた』というセリフがありました。愛は幸せな生活に必要なことですが、愛しすぎて相手にのめり込むほど苦しくなる、人をダメにしてしまうこともある。

映画雑誌の表紙をも飾る赤いセーターを着たジェーン。前述の『まわり道』にも出演したナスターシャ・キンスキーさんが演じてますが、絶世の美女という言葉がピッタリです。背中も眩しすぎる。

この作品は、スタッフも凄いです。

音楽はライ・クーダー。彼のギターの音色が心に染み入ります。

原作・脚本は、サム・シェパード。名作『ライトスタッフ』の主演でも有名な俳優ですね。

撮影は、ロビー・ミューラー。ヴィム作品だけでなくジム・ジャームッシュ監督作品、ラース・フォン・トリアー監督の『ダンサー・イン・ザ・ダーク』なども手掛けてます。

主演トラヴィスを演じたハリー・ディーン・スタントン。渋くてカッコいい。『エイリアン』『ワイルド・アット・ハート』『ストレイト・ストーリー』などの名バイプレーヤーでしたね。遺作は2017年の『ラッキー』、これもいい映画でした。⁡


ヴィム・ヴェンダース監督の4本紹介しましたが、ロードムービー好きにはきっと忘れられない作品になるかと思います。

 

インスタアカウントもありますので、よろしければ覗いてみてみてください。→ 🐶

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5 件の返信 (新着順)
Stella
2024/09/19 23:07

最近、「まわり道」を見て観ました。テスの前のデビュー作なのですね。大胆ヌードもびっくりでした。★ハンナ・シグラもよかったですね。”列車で見つめられて・・・、出会う”とは、詩情あるシーンでした。


かずし
2024/09/22 17:23

コメントありがとうございます😊観られましたか。ナスターシャさんが初々しくも妖麗でしたね!列車の中での出会いも良かったですね。ハンナ・シグラさんも列車でしたね🚃

看護師おしず
2024/03/03 14:21

パリ、テキサスは作風がアメリカ風じゃないなと思ったらドイツの映画だったのですね!
2人の絶妙な関係や距離感、構築したきたものが徐々に明らかになり切なくもなり。。。
後からじっくりと考察し、じんわりくる映画でした☺️💛


かずし
2024/03/04 22:47

おしずさんありがとうございます😊そうそうアメリカっぽいけど西ドイツの作品ですね。夫婦、親子、家族の在り方を問う作品でもありましたね。

はじめ バッジ画像
2024/03/01 16:44

これは僕も観ないといかないなと思った作品群です。(むしろ観てなかったんかい)
優先的にこの4作品は観ます!!


かずし
2024/03/01 18:07

ありがとうございます🙏パーフェクトデイズ繋がりで、ヴェンダース監督の若き日の作品を観るのもいいですね!是非😊

Stella
2024/02/29 23:25

ニュー・ジャーマン・シネマなんですね。ドイツ映画を観る機会は少ないですが、ナスキンの”まわり道”観てみたいです。


かずし
2024/03/01 18:05

フランス映画が特に好きですが、ドイツ映画もちょくちょく観ています😊国によって作風が違いますよねー。まわり道、ぜひ😊

桃田享造
2024/02/29 18:33

『さすらい』のジャケットの人、ずーっとジャック・ニコルソンだと思っていた桃田と申します。初めまして、よろしくお願いします!


かずし
2024/02/29 22:22

はじめまして😊よろしくお願いします。確かにジャック・ニコルソンに似てますよね!