民衆と権力の対決(ひとさじのスープのために)
戦艦ポチョムキン(1925年・ソビエト連邦、モノクロ、74分)
*サイレント映画
映画史上不滅の金字塔であり、偉大なる映画芸術の先駆的作品として、永遠に輝き続けることは疑いの余地がない。
この映画は1905年に起きた「ポチョムキン号事件」と呼ばれる、水兵たちの反乱と抑圧を題材にしており、全編に流れるピアノの旋律が胸を打つ。
全5章から成るストーリーを要約することで、多くの映画ファンの鑑賞のきっかけになればと思います。
特に、第4章「オデッサの階段」のシーンは、想像を絶する迫力に恐怖感を抱くほどです。
果たして、本作の主張性と思想性をどう感じられるでしょうか。
第1章 人間とウジ虫
1905年6月、革命の気運がロシア軍隊内部にまで高まっていた頃。戦艦ポチョムキン号は黒海のオデッサ沖を航行していた。水兵のワクリンチュク(グリゴリー・アントーノフ)は ‘全ロシアが立ち上がったのに、傍観していいのか!’ と叫んでいる。乗組員たちは、腐った肉を目の前に ‘ウジ虫だらけの腐った肉など、誰が食うものか!’ と不満を漏らす。一方、艦医は ‘ウジ虫ではない。ハエの幼虫だ。塩水で洗い流せば大丈夫だ’ と言う。結局、乗組員達は肉入りスープをボイコットする。
第2章 甲板上のドラマ
艦長である司令官ゴリコフ(ウラジミール・バルスキー)は乗組員達を甲板に集め、 ‘スープに満足出来なかった者は帆桁に吊るす’ と豪語した。更に、その場を去ろうとする数名の乗組員に対し、 ‘貴様らは皆銃殺だ’ と宣言、下士官に命じて、当該乗組員に帆布を被せた。神父らしき男が ‘神よ反逆者に慈悲を!’ と祈っている。そこでワクリンチュクがとった行動は...。
第3章 死者の呼びかけ
オデッサの防波堤でざわめきが起きている。一人の人間の死を知った市民が、列をなして次々とオデッサの港に集まってくる。やがて蜂起した市民たちが ‘専制政治打倒!’ と叫ぶ。ポチョムキン号の水兵たちの情熱と、オセッサの市民の怒りが一つになった瞬間だった。ポチョムキン号には、自由の赤旗が掲げられた。
第4章 オデッサの階段
オデッサの市民たちが次々とボートに乗り、ポチョムキン号に向かっている。街の巨大階段には、その壮大な光景を見ようと、多くの市民が陣取っている。ところが突然、大階段の後方から、コサック兵たちが市民に銃を向けて下りてくる。状況を察した市民たちが逃げ惑う。両足のない若者、無垢な少年少女、老人...そして辺りは瞬く間に修羅場と化した。
第5章 艦隊との遭遇
オデッサ沖のポチョムキン号では、激論が交わされていた。 ‘市民は解放者を待っている。上陸すべきだ’ ‘無理だ。海軍の分遺隊が我々を追尾中だ’
やがて水平線に分遺隊の軍艦「水雷艇267号」が姿を現す。果たして激論の結果はどうなったのか。
旧ソ連の名監督セルゲイ・エイゼンシュテイン(1898.01.10 ~ 1948.02.11)が、「ストライキ」(24年)に続いて監督した長編第2作。
彼の理論であるモンタージュの技法を見事に実証した「オデッサの階段」のシーンはあまりにも有名で、特に、撃たれた母親の手を離れた乳母車が階段を落ちていくシーンは、後年、ブライアン・デ・パルマの「アンタッチャブル」(87年)など、幾つかの作品に引用された。
だが実際には、史実とは異なる描写が多いと言われている。日本での公開は1967年である。
主要な役以外は、それぞれの役柄の特徴を帯びている人物を素人から選んで抜擢したと言われている。
最も注目すべき、第4章「オデッサの階段」の内容は、ネタバレを鑑み、詳細な記述を敢えて避けることとしました。