Discover us

私の好きな映画

じょ〜い小川
2025/02/17 12:20

ラディカルで狂気の62分のシン・北野武映画!『Broken Rage』

■Broken Rage

(c)2025 Amazon Content Services LLC or its Affiliates.

〈作品データ〉
巨匠・北野武監督兼脚本兼編集兼主演映画最新作は新感覚のアウトローバイオレンス&ブラックコメディ映画!初老の殺し屋“ねずみ”はアパートで一人暮らしをしながら行き付けの喫茶店に届く“M”からの仕事をこなしていたが、しばらくして“ねずみ”は警察に捕まる。“ねずみ”は刑事の井上と福田から厳しい取り調べを受けるが、そこで良条件を餌に暴力団組織に潜り込み、覆面捜査の依頼を受ける。主人公・ねずみ役をビートたけしが演じ、他浅野忠信、大森南朋、白竜、中村獅童が出演。

・2月14日(木)よりAmazon Prime Videoにて配信。
・配給/製作:Amazon MGMスタジオ
・上映時間:62分

【スタッフ】
監督・脚本・編集:北野武
【キャスト】
ビートたけし、浅野忠信、大森南朋、白竜、中村獅童、仁科貴、宇野祥平、國本鍾建、馬場園梓、長谷川雅紀(錦鯉)、矢野聖人、佳久創、前田志良(ビコーン!)、秋山準、鈴木もぐら(空気階段)、劇団ひとり、アマレス兄弟

公式HP:https://www.amazon.co.jp/gp/video/detail/B0DSGFRB25/ref=dvm_jp_pv_sl_ya_200_mkw_uFGISfFx-dm_pcrid_732000825260&mrntrk=pgrid__x__ptid_kwd-2394243956374?dplnkId=44e03681-01f7-4e41-90bf-a7b031fd53b6



《『Broken Rage』レビュー》

2023年11月に衝撃的な時代劇映画『首』で世界に存在を示した北野武監督の最新作は61分という中編の尺で作ったアウトローバイオレンスアクション&ブラックコメディ映画『Broken Rage』。大まかに二部制で、同じ流れなのにラディカルなアウトロー映画とラディカルなブラックコメディ映画と全く質が異なる作品を作りながら、北野武らしく、

北野武がやりたかったアウトロー映画が凝縮された62分だった!

(c)2025 Amazon Content Services LLC or its Affiliates.

二部制とは書いたが登場人物はだいたい共通してビートたけしと大森南朋、浅野忠信、白竜、中村獅童が出演し、流れも殺し屋の“ねずみ”が刑事二人から暴力団組織の潜入捜査を請け負うというもの。大きく違うのはビートたけしのアプローチで、第一部ではクールで凄腕のおじさん殺し屋。このおじさん殺し屋のアパート独居生活と仕事を淡々とこなすサマは役所広司主演、ヴィム・ヴェンダース監督作品『PERFECT DAYS』に通じるものが薄っすらとあるし、凡庸なおじさんが実は凄腕というプロットは『ジョン・ウィック』や『Mr.ノーバディ』に通じるものがある。

(c)2025 Amazon Content Services LLC or its Affiliates.

方や「Spin off」と題した第二部は“ねずみ”が完全にダメダメな殺し屋になっている。それこそ第一部で「こんなトラブルが起こりそうだな…」というのがほぼ全て起こる。それはまるでホアキン・フェニックス主演、アリ・アスター監督作品『ボーはおそれている』を見ているかのような作品である。

しかしながら、こうした物語の二部制は『TAKESHIS』のヤクザの男とコンビニバイトで働く中年の様子を見せたあの手法に通じるものがある。それも本作の二部目のコメディパートはおそらく北野武監督がやりたかったコメディで、やりたい放題のラディカルなギャグをぶっ放している。その黒い笑いは共演の大森南朋や浅野忠信をも思わず笑かすようなギャグであるが、シーンによってはやりすぎな部分もあり、若干しょっぱい。

(c)2025 Amazon Content Services LLC or its Affiliates.

しかしながら、『TAKESHIS』でのビートたけし主演一人二役も今回の二部目もいわば北野武流のマルチバースであり、『TAKESHIS』ではそれが早すぎた。時代がようやく追いつきながらも、マルチバースでありながら渾身のブラックコメディである。考えようによっては『監督・ばんざい!』の完成形のようなブラックコメディで、そのお披露目を『監督・ばんざい!』と同じヴェネチア国際映画祭にしたというのも演出の一つと考えられる。

(c)2025 Amazon Content Services LLC or its Affiliates.

それぞれの章の冒頭で東京の夜景の空撮を見せるが、そこにどことなくフリッツ・ラング監督作品『メトロポリス』のオマージュをも感じさせ、意味深な冒頭になっている。

細かい衣装にもしっかりとキタノブルーを見せ、62分でしっかりと狂気の北野武ワールドを見せつけた!これぞ、シン北野武映画である!

 

コメントする
1 件の返信 (新着順)
すた☆みな バッジ画像
2025/02/18 11:02

今作品は北野武監督のTAKESHIS’、監督ばんざい!、アキレスと亀の「※フラクタルシリーズ」とビートたけしのテレビ番組タケちゃんの思わず笑ってしまいました、ギミア・ぶれいくなどの融合作でかなり遊んだな~と思いました。
衣装は黒澤和子さんの息子黒澤秀之さんが担当されていたので、とても良かったです。

※フラクタルは「自己相似性」という特殊な性質を有する幾何学的構造のこと「同じような図形が繰り返し現れる図形」


じょ〜い小川
2025/02/18 13:43

なるほど、あの三部作「フラクタルシリーズ」って言うんですね。一般的にはフェデリコ・フェリーニの影響と言われてますけど、今回みたいにパッとやる手法はどちらかと言うとルイス・ブニュエル(『アンダルシアの犬』や『昼顔』が有名)や『マルホランド・ドライブ』以降のデヴィッド・リンチに近いですよね。

昨今、MCUにおけるマルチバースや『エヴリシング・エブリウェア・アット・オール・ワンス』における数々の演出があったおかげで、『Broken Rage』の演出はいくらか受け入れられたのかなと思いますが、
『ボーはおそれている』しかりですが、世界的にもちょっと難しい演出をしただけで反応がいまひとつになりますね。