『恋におちたジョージ・ルーカス』的なことしてほしい話
『恋におちたジョージ・ルーカス』みたいな短編を量産してほしい
やる気を失ったレンタルショップの入口付近、ワゴンセールの中で輝きを失った『恋におちたジョージ・ルーカス』。わたしは2010年頃に本作DVDを救い出した。
2001年11月にポニーキャニオンから発売。わたしはこのリリース、少し早すぎたと思う。この頃まだVHSとDVDの両方が混在してショップの棚に並んでいた時代。ユーザーからすると見るのも買うのもこういったマニアックな商品よりも、優先順位の高いものがあったはずだ。後回しにされる。だからすぐ埋もれてしまった。1999年に『スター・ウォーズ ファントム・メナス』が公開されたので、その影響を見込んでリリースされたとわたしは推察している。これを「映画あやかり商法」と呼ぶ。
『映画あやかり商法』は古くから業界に伝わるメソッドで『華麗なる賭け』がヒットしたら『華麗なる』をつけまくるなどといった「ヒットマヨネーズをかけまくる系」、『電車男』が『バス男』になる「後で怒られる系」、『サスペリア』と『サスペリア2』、『荒野の用心棒』と『続荒野の用心棒』のような「話の筋関係ない系」、さらには『アルマゲドン2007』から始まり、『アルマゲドン2008』『2009』『2010』『2011』『2012』『2013』『2014』『2020』『2021』『2022』『2024』と本年度まで毎年のように隕石とぶつかりそうになる「フィッシング詐欺系」などの種別がある。
閑話休題・・・。
で、この『恋におちたジョージ・ルーカス』がまた実に映画ファンの気持ちをくすぐる良い作品なのだ。
これはフィクションだが、ルーカスも粋な計らいをして、本作を製作した新人のジョー・ナスバウムに絶賛の手紙を送っている。メイキングではナスバウム自身が額縁に入れたルーカスの手紙の前で自慢するところが見られる。ちなみに、ナスバウムはその後本格的に映画監督としてデビューを果たしたが、今のところライトタッチの青春映画を何本か手掛けているくらいで、映画ファンの心を再び揺さぶる作品を世に送るには、まだもう少し時間がかかりそう。もう一回原点に戻って、『レイダース 失われた聖櫃』の制作に至るまでのスピルバーグとルーカスのすったもんだを10分くらいにまとめてほしい。
わたしはこういう企画、若手の新人監督にたくさん作って欲しいと以前から思ってきた。というか、こういう作品から始めて欲しいのである。
大学時代の友人達がルーカスにインスピレーションを与えて『スターウォーズ』のキャラになるなんて構図は他でも可能である。キャラがたくさん出てくる映画や、2,3人でも際立つ個性を感じる登場人物が描かれた作品がモトネタに向いている。
後は誰を主人公にするか?
黒澤明だとシリアスで重たくなりそうだし、色々物言いがつく可能性が高い。史実と違うとか、コメディに合わないとか。だいたい、黒澤家からお褒めの手紙をもらえる可能性はゼロに等しい。
わたしなら、本多猪四郎の方が良い。
新作映画『ゴジラ』撮影前の若き日の本多を主人公にする。昭和30年代の街を歩いて様々な人にインスパイアされ、少しずつその後へと繋がるヒントを得ていく。
本多は商店街でキョロキョロよそ見して転んで怪我してしまう。戦争で目を失い、片目に眼帯をした薬局の店主が本多の手当てをしてくれるが・・・。
オキシフル(オキシドール希釈液、消毒液の商品名)で消毒してヨーチン(希ヨードチンキ)を塗ってくれるが、この店主の活舌が悪く、のれんの向こうの奥さんに、「オキシフル、ヨーチン!」と叫ぶのが「オキシー、ジェン!」に聞こえる。奥さんが良くわからず「はぁ?」と返すと、店主は「オキシージェンです!トロいなあ!」奥さんと本多にはこう聞こえる。
「オキシージェン・デストロイヤー」
土産屋の店先に並んだ東京タワーの置物に大きな蛾が止まっていたり。
他にも魚屋の店頭では、カニ、エビ、ゲソがザルで売られていたり。
こんな感じでコネタをちょこちょこ詰め合わせて10分くらいにまとめて欲しい。
『本多猪四郎の散歩』とか『街を歩いた本多猪四郎』とか題名はイマイチなのしか浮かばないけど。『猪四郎の夏』でいいかな。
それにしても『恋におちたジョージ・ルーカス』というのは非の打ちようがないほどタイトルもハマっている。
実にスマートだ。これに匹敵するのは『喧嘩に勝った井筒和幸』ぐらいしか思いつかない。