オペラの怪人
【物足りない】
(1943年・米・93分・カラー)
監督:アーサー・ルービン
原題:THE PHANTOM OF THE OPERA
原作:ガストン・ルルー『オペラ座の怪人』
私としては怪奇ものの一つとして捉えているガストン・ルルー作の『オペラ座の怪人』だけれど、本作からは不気味な印象は感じられなかった。一応1925年版(ロン・チェイニー主演)のリメイクという位置付けらしいが、原作のあらすじとは違う展開になっている。オペラ座に神出鬼没する怪人は不気味でミステリアスというのが定着しているイメージだと思うが、本作では最初から正体が分かっているのでドキドキ感がない。
たとえば、オペラ座のバイオリン奏者のエリック・クロウデン(クロード・レインズ)が、どうして醜い容姿になってしまったのか…どうして怪人の仮面をつけなければならなくなったのか…その経緯が描かれるのだ。
そして、オペラ座の若いソプラノ歌手のクリスティーヌ(スザンヌ・フォスター)に対する思いも語られる。
しかも、思わせぶりな展開(裏のストーリー?)があって、怪人がクリスティーヌをさらってオペラ座の地下に身を潜めた際に、彼女に向かって「my child」と呼びかけるのだ。クリスティーヌがよく口遊んでいた故郷の子守歌があったが、それをベースにした協奏曲を怪人が彼女のために作曲した理由が解った瞬間でもあった。
物語の展開上、怪人のクリスティーヌに対する行為がストーカー的であり、父娘という設定は匂わせ程度にしたようだ。
また、警官のラウル(エドガー・バリア)とオペラ座のバリトン歌手アナトール(ネルソン・エディ)を恋敵同士に仕立ててあったが、彼らのシーンは息抜きというかコミカルに感じられた。
いずれにしても原作とはかけ離れたあらすじなので、原作未読の方はご注意を。
観終わった後で知ったことだけれど、バリトン歌手アナトールを演じたネルソン・エディは、元々は声楽家だそうだ。そのため、オペラの舞台や歌唱シーンが多く、ミュージカルの要素が強い。怪奇ものとして観たなら物足りないけれど、豪華なセットや華やかな衣装は舞台の楽しさを教えてくれる。
『オペラ座の怪人』といえば劇場の巨大なシャンデリアの落下シーンがあるが、本作でも丁寧に描かれていた。
なお、アカデミー賞4部門にノミネートされ、2部門(美術賞、撮影賞)で受賞している。