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2024/03/14 14:17

懐かしき1930年代の映画「アメリカ編」

今まで、1940年代、1950年代、1960年代、1970年代と、懐かしの名作を「アメリカ編」「ヨーロッパ編」「日本編」に分けて振り返ってきました。

今回は更に遡り、1930年代のアメリカ映画を懐古してみたいと思います。

 

「風と共に去りぬ」(1939年) : ヴィクター・フレミング監督(*注釈あり)

             *監督にはジョージ・キューカー、サム・ウッドも関わっています。 

言わずと知れたハリウッド映画の超大作で、芸術性よりもその大衆性から、現在でも絶大な人気を誇る。ベストセラー作家、マーガレット・ミッチェルの原作小説を映画化した4時間近い長編大作。

 

南北戦争直前、ジョージア州タラの大地主の娘スカーレット(ヴィヴィアン・リー)は、思いを寄せるアシュリー(レスリー・ハワード)が、彼の従妹メラニー(オリヴィア・デ・ハヴィランド)と結婚することを知って悲嘆にくれる。宴席の場で、スカーレットは素行の評判が悪いレッド・バトラー(クラーク・ゲーブル)に出会うが、何か気になるものを感じた。やがて戦争が勃発し、牧歌的な時代は終わった。スカーレットは運命に翻弄されていく...。

 

なかなか決まらなかったスカーレット役には、恋人ローレンス・オリヴィエに会いに偶然ハリウッドに来ていた英国女優のヴィヴィアン・リー(インド生まれ)が抜擢された。

 

特筆すべきは、黒人俳優として初のオスカー(アカデミー賞・助演女優賞)を手にしたハティ・マクダニエル。スカーレットに献身的に尽くすメイド、マミー役を好演、ラジオ番組で初めて歌った黒人歌手としても知られる彼女に光が当たった。

 

 

 

「キング・コング」(1933年) : メリアン・C・クーパー監督、及び、

                  アーネスト・B・シューザック監督

初めて世界に登場した「キング・コング」、つまり最も古い「キング・コング」の映画
1933年(昭和8年)、今から実に91年前の作品で、当時、この巨大生物を初めて見た観客は、かなりの衝撃と恐怖を覚えたに違いない。特撮映画の古典的名作だ。

 

映画監督のカール・デナム(ロバート・アームストロング)は、顔見知りの船長(フランク・ライヘル)や女優アン・ダロウ(フェイ・レイ)、撮影スタッフらと共に、地図に載っていない東インド諸島沖の髑髏島に着く。島に上陸した一行は、原住民たちが異様な雰囲気のなか、生贄の儀式を行っているのを目にする。やがて森の中から、巨大生物が姿を現すが...。

 

アン・ダロウを演じた女優フェイ・レイは、2004年8月8日、96歳で他界した。彼女が亡くなった日、エンパイア・ステート・ビル(本作でキング・コングが上ったビル)は15分間消灯して彼女を追悼した。

 

逸話も多数残されている。
アドルフ・ヒトラーは本作公開時に観て、大ファンとなったこと。
円谷英二が特撮監督の道を志すきっかけとなった作品であること。
淀川長治によれば、公開当時RKOにこの映画を観た観客達から、 ‘本当にあんな生物がいるのか’  との問い合わせの電話が殺到したこと。

 

 

 

「オズの魔法使い」(1939年) : ヴィクター・フレミング監督

この映画からは「本当に純粋な子どもの心」が感じられ、「夢の世界に触れて心が和む」といった心境にかられてしまう。

 

ある日、カンザスの農場に住む少女ドロシー(ジュディ・ガーランド)は、愛犬のトトが近所のミス・ガルチ(マーガレット・ハミルトン)にいじめられたと云って泣きながら帰ってくる。ドロシーが慕うエムおばさん(クララ・ブランディック)は、 ‘心配のいらない場所を探しなさい’ とドロシーに云う。ドロシーは暫く考えてからトトに聞く。 ‘そんな所あると思う? きっとあるわね。船や汽車でも行けないところ。ずっと遠くのお月様の向こう。雨の向こう...’
名曲「虹の彼方に」はそのあと自然の流れでドロシーが歌う。

 

ジュディ・ガーランドをスターにしたミュージカル・ファンタジーの傑作

オズの国で、ドロシーにお供する「案山子」、「ブリキ男の木こり」、「ライオン」のキャラクターも楽しい。

 

「風と共に去りぬ」を手掛けた同一人物の監督とは思えない演出の数々。

 

 

 

「駅馬車」(1939年) : ジョン・フォード監督

様々な人を乗せて走る駅馬車を舞台にした痛快西部劇で、スピーディかつダイナミックなアクションが展開される最高傑作。

 

1880年代、アリゾナからニューメキシコへと向かう1台の駅馬車に乗り合わせた人々。

臆病者の御者(アンディ・ディヴァイン)、軍隊にいる夫に会いに行く身重の妻(ルイーズ・プラット)、飲んだくれの医師(トーマス・ミッチェル)、行商人(ドナルド・ミーク)、賭博師(ジョン・キャラダイン)、酒場女(クレア・トレヴァー)、保安官(ジョージ・バンクロフト)らの描写に始まり、彼らの道中に途中から加わった、お尋ね者リンゴ・キッド(ジョン・ウェイン)の活躍を描く。

 

駅馬車が疾走するシーンのスタントマンは、後に「ベン・ハー」(59年)の戦車競争シーンでもスタントを務めることになる、ヤキマ・カヌートであり、その迫力は現在でも語り草になっている。

 

恋や憎悪、義理、人情が複雑に絡まり合う様々な人生模様の描き分けも実に見事で、西部劇のみならず、あらゆるタイプのアクション映画を語るうえで欠かせない作品である。

 

 

 

「モダン・タイムス」(1936年) : チャールズ・チャップリン監督

機械文明を痛烈に皮肉り、人間性を喪失した現代社会をも予見した作品。

天才映画作家のチャップリン自身が、主演、監督、製作、脚本、音楽を担っている。

 

エレクトロ鉄鋼会社で働くチャーリー(チャールズ・チャップリン)は、毎日の単調な機械相手の仕事を続けているうちに、遂に発狂し、病院へ送られる。退院したものの行くアテもなく、街を歩いているとデモ隊の群衆に巻き込まれ、首謀者と間違われて投獄されてしまう。だが、ひょんなことから脱獄囚を撃退するに至り、チャーリーは無罪放免となる。新たに造船所で働くことになるが、不慣れな仕事で解雇されたチャーリーは、刑務所が恋しくなる。そんなある日、チャーリーは不良少女(ポーレット・ゴダード)が食物を盗み、警官に捕まったのを目撃、自分もわざと無銭飲食をして捕まり、2人は護送車の中で知り合うのだが...。

 

映画史に残るラストシーンや、抱腹絶倒の数々は、観る者を飽きさせない。

工場でのネジ回しの場面、自動で食事をすることが出来る機械の場面、刑務所内の場面など。

 

笑ったあと泣けてくる...不思議な映画でもある。

 

 

 

「モロッコ」(1930年) : ジョセフ・フォン・スタンバーグ監督

モロッコを舞台に、外人部隊の名うてのプレイボーイと、酒場の歌姫が繰り広げる恋の物語。

ゲイリー・クーパーの伊達男ぶり、マレーネ・ディートリッヒの妖艶さと、2大スターの魅力が余すところなく表現されている。

 

北アフリカ・北西部に位置するモロッコ。ここの外人部隊に所属するトム(ゲイリー・クーパー)は、上官セザール(ウルリッヒ・ハウプト)の妻(イヴ・サザーン)と通じていたが、ある日、クラブで歌うエイミー(マレーネ・ディートリヒ)と知り合った。エイミーに言い寄る男は多く、なかでも金持ちの画家ベシェール(アドルフ・マンジュー)は彼女に求婚を迫るほどだった。トムもエイミーも特定の相手を持たない主義だったが、それが逆に互いに興味を惹くこととなる。

 

マレーネ・ディートリッヒの世紀末的な退廃美は彼女独特のものである。

妖艶なキャバレーの歌姫として登場する彼女は、山高帽に黒のドレス、煙草をくゆらせながらステージを歩く姿(その脚線美)に、観客はくぎ付けなのだ。

 

本作のラストシーンは、砂漠である。 音もなく、無言のシーン。
 

日本初の字幕スーパー作品としても知られている。
 

 

 

「或る夜の出来事」(1934年) : フランク・キャプラ監督

アカデミー賞・作品賞をはじめ、主要5部門を独占したラヴ・コメディの傑作

金持ちの一人娘と失業中の新聞記者が、反発しながらも惹かれ合う姿をユーモラスかつロマンティックに描いている。

 

ニューヨークの大富豪の娘エリー(クローデット・コルベール)は、飛行士(ジェームソン・トーマス)との婚約騒ぎで父親(ウォルター・コノリー)に監禁されるが、こっそり逃げ出して長距離バスに乗り込む。たまたま隣り合わせた新聞記者のピーター(クラーク・ゲーブル)と不本意な旅を続けるうち、二人は心惹かれ合うようになるが...。

 

30年代は、恐慌のなかで庶民が明るさと善意を求めたこともあって、映画の主流としてのコメディがあったと推測される。当時、クローデット・コルベールは粋な都会的女性を演じさせたらこの人の右に出る者なしと云われた。彼女は本作でアカデミー賞・主演女優賞を獲得してからは順風満帆、知的なコメディエンヌとして売り出す一方、シリアスな作品にも出演している。

 

因みに、彼女は右サイドから写真を撮られるのを嫌がり(頬骨の出っ張り具合が左右均等でないことを気にしていた)、左サイドからの撮影に徹していたことは有名な話。

 

模倣の人生」(34年)、「君去りし後」(44年)の彼女も素晴らしかった。

 

 

 

「ゾラの生涯」(1937年) : ウィリアム・ディターレ監督

フランスの文豪エミール・ゾラの伝記映画で、ファシズムとの戦いにテーマを絞った作品。

ドレフュス事件」の詳細が描かれている。

 

19世紀のフランス。パリの屋根裏部屋で暮らす若き作家エミール・ゾラ(ポール・ムニ)は、画家のポール・セザンヌ(ウラジミール・ソコロフ)と同居し、貧乏ながら創作活動に専念していた。ある日、出版社主と対立して職を失ったゾラは、街中で警察に追われていた娼婦のナナ(エリン・オブライエン・ムーア)を助け、彼女の身の上話を題材にした小説「ナナ」を発表した。その小説はベストセラーとなり、ゾラは一躍有名な作家として富を手に入れ、世界的な名声も得た。そんな折、フランス陸軍参謀本部将校のアルフレッド・ドレフュス大尉(ジョセフ・シルドクラウト)がスパイ容疑で逮捕されるのだが...。

 

エミール・ゾラを演じたポール・ムニは、出演時42歳。
若き作家のゾラから、老人になったゾラまでを巧みなメイクと話術で演じきっている。

前年の「科学者の道」(36年)で既にアカデミー賞・主演男優賞を受賞しているが、「暗黒街の顔役」(32年)の用心棒役、「大地」(37年)の中国人農夫役など、芸域が広い俳優だ。

 

アカデミー賞・作品賞受賞の本作は、ナチス糾弾、ヒューマニズム謳歌の旗印のもと、参戦を目前にしたアメリカの世論喚起を促すものになったと言われている。

 

上記に挙げた作品以外では、「西部戦線異状なし」(30年)、「アンナ・クリスティ」(30年)、「街の灯」(31年)、「上海特急」(32年)、「痴人の愛」(34年)、「有頂天時代」(36年)、「椿姫」(36年)といった名作が並ぶ。

機会があれば、PARTⅡとしてまた振り返りたい。

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2 件の返信 (新着順)
Stella
2024/03/29 22:53

「ゾラの生涯」はドレフュス事件を知るにも素晴らしい作品です。(居酒屋以来、ゾラ者が好きです。)


趣味は洋画
2024/04/05 22:04

コメントを頂きありがとうございました。

飛べない魔女
2024/03/17 20:32

やはり来ましたね!風と共に去りぬ。
30年代を代表する名作ですよね。
ヴィヴィアン・リーはまさにスカーレットそのものでした。
そんな偶然で抜擢されたとは、運命としか思えません。


趣味は洋画
2024/03/17 21:46

魔女さん、いつも読んでいただき、コメントも含めて有難うございます。

8作品を挙げていますが、「風と共に去りぬ」は迷わず最初にもってきました。
でも、他の作品は甲乙つけ難く、「西部戦線異状なし」、「上海特急」、「街の灯」なども入れたかったです。
いつか折をみて、PARTⅡとして振り返ってみたいと思っています。

ヴィヴィアン・リーは正統派で申し分ないのですが、個人的にはどうしても共演者に目がいってしまいます。(昔から... / ご存じですよね)
2024.03.17