第6回 アカデミー賞・作品賞受賞「カヴァルケード(大帝国行進曲)」
イギリス上流階級の歴史を描いた「カヴァルケード」が、第6回アカデミー賞・作品賞を受賞。
ノエル・カワードの戯曲からの映画化で、ヴィクトリア時代から第一次大戦までの、ある一家の年代記である。初めて ‘オスカー’ という呼び名が誕生したのもこの年だった。
「カヴァルケード(大帝国行進曲)」
(1933年・米国、モノクロ、110分)
監督:フランク・ロイド



英国上流階級の1900年からの30年間に渡る波乱万丈の歴史を描いている。ボーア戦争、タイタニック号の沈没、第一次世界大戦、大不況時代へと続く、まさに ‘大帝国行進曲’ である。
1900年、南阿戦争が勃発。イギリスの名門マリヨット家の当主ロバート(クライヴ・ブルック)は、妻ジェーン(ダイアナ・ウィンヤード)とエドワード(ジョン・ウォーバートン)、ジョー(フランク・ロートン)の2人の息子を残し、出征する。マリヨット家の侍僕ブリジェス(ハーバート・マンディン)も妻エレン(ウナ・オコナー)と別れて、ロバートに同行する。ロバートは輝かしい戦績を残し、凱旋帰国して貴族となる。10数年後、エドワードはエディス・ハリス(マーガレット・リンゼイ)という女性と婚約、ジョーは陸軍中尉となっていた。一方、ブリジェスはロンドンで酒場を営んでいたが、自動車事故で急死する。そして、ブリジェスの一人娘ファニー(ウルスラ・ジーンズ)は英国の天才的舞踏家として名を馳せており、ジョー・マリヨットとは相愛の仲となっていた。そして世界大戦、ジョーは父ロバートと共に参戦、エドワードはエディスと結婚するが、ハネムーンの途上、タイタニック号沈没の不幸に遭って亡くなる。そして終戦。ファニーとジョーの関係を知ったエレン・ブリジェスは、マリヨット家を訪れ、2人の結婚について相談する。ジェーンは理解を示すが、その折、一通の電報はジョーの名誉の戦死を伝える。時は流れて1932年の大晦日。ジョーを失ったファニーは、ナイトクラブで「20世紀の憂鬱」という悲歌を歌っている。満場、声もなく、涙を浮かべる聴衆。二人の愛児に先立たれたマリヨット老夫婦は、越年の乾杯を静かに挙げている...
主演のダイアナ・ウィンヤードはイギリスの舞台俳優で、映画監督のキャロル・リードの元妻。
「マイヤー・リング」(57年)ではエリザベス皇后役を演じていた。
本作の演技で、アカデミー賞・女優賞(当時は主演・助演の区別なし)にノミネートされているが、受賞は「勝利の朝」のキャサリン・ヘプバーンであった。

もう一人の主演クライヴ・ブルックもイギリス出身で、「上海特急」(32年)における、マレーネ・ディートリッヒとの共演が印象的。
監督のフランク・ロイドもスコットランド生まれであり、なるほど英国色が強い。

因みにアカデミー賞・作品賞を争った他の作品は次のとおり。
「一日だけの淑女」、「四十二番街」、「あめりか祭」、「戦場よさらば」、「若草物語」、
「ヘンリー八世の私生活」、「わたしは別よ」、「永遠に微笑む」、「仮面の米国」。