70年代の韓国の香りたっぷりな海女たちのクライム・アクション!『密輸1970』
■密輸1970
〈作品データ〉
1970年代半ばに韓国の漁村で起こった金塊の密輸事件をベースにしたクライム・アクション映画。1970年代半ばに港町クンチョンで海女や漁師たちは漁をしても魚介類が化学工場の廃液て汚染されているため売り物にならず、経済的には逼迫した生活を送っていた。そこで海人で営む彼女らは海底から密輸品を引き上げる仕事を請負い、一時的にうるおうが、ある日、突如税関の摘発を受け、海人たちのリーダーのジンスクは刑務所に収監されることに。ジンスク役をヨム・ジョンアが、ジンスクの親友チュンジャ役をキム・ヘスが演じ、他チョ・インソン、パク・ジョンミン、キム・ジョンス、コ・ミンシが出演。
・7月12日(金)より新宿ピカデリー他全国ロードショー
・上映時間:129分
・配給:KADOKAWA、KADOKAWA Kプラス
【スタッフ】
監督・脚本:リュ・スンワン/脚本:キム・ジョンヨン、チェ・チャウォン
【キャスト】
ヨム・ジョンア、キム・ヘス、チョ・インソン、パク・ジョンミン、キム・ジョンス、コ・ミンシ
原題:Smugglers/製作国:韓国/製作年:2023年
〈『密輸1970』レビュー(レビュアー:じょ~い小川)〉
第44回青龍映画賞で4冠を受賞した実績よりも『モガディシュ 脱出までの14日間』を手掛けたリュ・スンワン監督の新作ということで気になっていた韓国映画『密輸1970』。男臭い、熱いアクション映画だった『モガディシュ 脱出までの14日間』から一転して、
女たちが活躍するちょっとコメディ色があるアクションになっていて、それはそれで楽しめる。
舞台は1970年代半ばから後半の韓国の港町・クンチョン。タイトルに1970とあるが、これは1970年ではなく、1970年代を意味する様子。原題が「Smugglers」だから邦題の「密輸」は間違いないが、いくらなんでも1970年と1970年代では違うし、ましてや1970年代半ばだから、やるなら70'sか1970'sとやるべき。これは邦題をつけた人のミスと言いたい。
ともかく、映画は化学工場の汚染で魚介類がおかしくなったために経済的に困窮しつつあった海女たちが密輸で儲けるが、そこの部分はサラッと描かれていて、その後起きるトラブルからのメインキャラのジンスクとチュンジャのそれぞれがストーリーの中心となる。中盤からさらに密輸絡みの一攫千金ミッションが舞い込み、アクション映画のような流れになる。
トラブルからのチュンジャの変貌と成り上がりぶりは目を見張るものがあり、その一方で分かれたジンスクや海女仲間たちとの断絶のドラマも見応えがある。キム・ヘスは日本で言えば篠原涼子や米倉涼子っぽい感じで、見映えも良い。
中盤からのアウトローや悪徳警官らがつるむ流れは若干海洋B級アクションっぽく、サメまで出てくるからB級臭が余計に強まる。圧巻なのは後半のバトルでジンスク&チュンジャ、海女たちが海女の特性を生かした水中バトルを繰り広げ、これが斬新。逆にアクアラングをつけた野郎連中が格好悪い、というかこの作品に出てくる男性陣は一様にダサかったり、いいポジションの人は早々にいなくなったり、ちょっとフェミな感じも感じられる。その代わり、女性らの明るさ、コミカルさがコメディ要素に繋がってはいるので悪くはない。
ただ、リュ・スンワン監督の前作『モガディシュ 脱出までの14日間』から比べるとこじんまりとしたと感じたのは否めない。が、海女仲間が営む喫茶店や全体的なちょっと不衛生な感じが1970年代の韓国らしさがあり、これに劇中流れる韓国の歌謡曲でより時代の空気が濃くなっている。