私の好きな映画

カッツ
2025/12/12 14:13

コレクター

本作は、孤独な男の歪んだ愛情と執着を描いた心理サスペンスである。主人公フレディは、内気で人付き合いが苦手な青年。職場では疎まれながらも、サッカーくじで大金を手にし、人里離れた屋敷を購入する。

彼は以前から憧れていた美術大学の女子学生ミランダをクロロホルムで昏倒させ、屋敷の地下室に監禁する。彼女を“蝶の標本”のように手元に置きたいという欲望は、愛ではなく所有の感情であり、フレディの孤独と歪んだ心理が静かに浮かび上がる。

物語は派手な演出を避け、二人の心理的な駆け引きと閉ざされた空間の緊張感で進行する。ミランダは自由を求めて抵抗し、フレディは彼女の心を得ようとするが、二人の間には埋めがたい断絶がある。この閉鎖的な関係性は、後の日本映画『完全なる飼育』にも通じるテーマであり、“監禁と愛”という危うい構造が共通している。

1965年にこの映画が製作されていたこと自体が驚きである。今では同様のテーマを扱う作品は数多く存在するが、当時にここまで倒錯した男を描いた点は特筆すべきだ。サスペンスでありながら、人間の孤独、欲望、そして愛の不在を描いた文学的な作品であり、観る者はフレディの異常性に恐怖を覚えつつも、その孤独にどこか共感してしまう。その複雑な感情こそが、この作品の深みであり、今なお語り継がれる理由である。

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