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カッツ
2025/12/05 07:33

『イノセント』(1976年)

ルキノ・ヴィスコンティ監督によるイタリア・フランス合作映画で、ジャンカルロ・ジャンニーニとラウラ・アントネッリが主演を務めている。アントネッリは当時「イタリアのセックスシンボル」と呼ばれていたため、コメディー&エロティックな作品を想像していたが、実際にはきわめて真面目で重厚な映画であった。

物語前半は不倫のやや退屈な話が続くが、後半は子殺しという重いテーマとなる。愛と欲望、嫉妬と破滅といった人間の根源的な感情を描き出している。ヴィスコンティらしい耽美的な映像美と緻密な心理描写が融合し、観る者に重たい余韻を残す。華やかな表層の裏に潜む人間の弱さや悲劇性が強調され、単なる恋愛劇ではなく「人間存在の深い問い」を投げかける作品となっている。

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