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取材・イベント

U子
2025/02/10 15:37

『MEMORY あの歌を憶えている』ミシェル・フランコ監督 オンライン取材✍️

こんにちは。映画大好き熟女のU子です💃🏻

今回は、ミシェル・フランコ監督最新作『あの歌を憶えている』を一足先にオンライン試写で鑑賞させていただきました。ありがとうございます!

ミシェル・フランコ監督と言えば、あの伝説的*ディストピアスリラー『ニューオーダー』の監督さんではないですか!!

『ニューオーダー』は、ベネチア国際映画祭銀獅子賞を獲った作品で、そのストーリー性と驚愕のラストシーンが大変話題になりました。

その他にも『或る終焉』『母という名の女』など、人間の内面を真正面から、時に観る者を不安に陥れるほどの強烈な描写で表現した作品を多く手がけられています。

そんなミシェル監督が描く愛のヒューマンドラマとはどんなものでしょうか?

まずは、映画『あの歌を覚えている』の基本情報とネタバレなしの感想を少しだけ…。

その後、なんとミシェル監督にオンライン取材させていただく機会をいただきましたので、その内容も合わせてご紹介させていただきます。

*ディストピアスリラーとは…ごく普通の人間の人生がふとしたきっかけで極限状態に追い込まれる様を描いたもの


監督・脚本【Michel Franco】

1979年メキシコシティ生まれ。2012年『父の秘密』でカンヌ国際映画祭「ある視点」部門でグランプリを獲得後、2015年には『或る終焉』で同映画祭のコンペティション部門の最優秀脚本賞を受賞、さらに2017年『母という名の女』では「ある視点」部門で審査員賞を受賞したほか、数多くの映画賞を獲得。そして2020年『ニューオーダー』でヴェネツィア国際映画祭銀獅子賞を受賞。ほとんどの作品で監督・脚本・製作を務めるなど、その強烈な作家精神で常にメキシコ映画界をけん引し世界の注目を集めてきた。2015年のベルリン国際映画祭パノラマ部門で最優秀新人監督作品賞を受賞したガブリエル・リプスタイン監督の『600マイルズ』、同年ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞したロレンソ・ビガス監督の『彼方から』などの製作も手掛けている。(公式サイトより引用)


忘れたい記憶を抱える女性が出会ったのは、忘れたくない記憶を失っていく男だったー

ふたりが新たな 人生と希望を見つけるまでを描く心に沁みわたる愛のヒューマンドラマ

©DONDE QUEMAEL SOLS.A.P.I.DE C.V. 2023

【あの歌を憶えている】

原題:MEMORY

2023年/103分/アメリカ・メキシコ・チリ/英語/シネマスコープ/5.1ch

監督・脚本:ミシェル・フランコ『ニューオーダー』『或る終焉』

出演:ジェシカ・チャステイン『女神の見えざる手』、ピーター・サースガード『17歳の肖像』、メリット・ウェヴァー、ブルック・ティンバー、エルシー・フィッシャー『エイス・グレード世界でいちばんクールな私へ』、ジェシカ・ハーパー『サスペリア』ほか

日本語字幕:大西公子

配給・宣伝:セテラ・インターナショナル

〜STORY〜

ソーシャルワーカーとして働き、13歳の娘とNYで暮らすシルヴィア。若年性認知症による記憶障害を抱えるソール。それまで接点もなかったそんなふたりが、高校の同窓会で出会う。家族に頼まれ、ソールの面倒を見るようになるシルヴィアだったが、穏やかで優しい人柄と、抗えない運命を与えられた哀しみに触れる中で、彼に惹かれていく。だが、彼女もまた過去の傷を秘めていた─。

〜受賞記録〜

第80回 ヴェネチア国際映画祭コンペティション部門 男優賞受賞(ピーター・サースガード)

第80回 ヴェネチア国際映画祭 最優秀作品賞ノミネート

第7回ブリュッセル国際映画祭最優秀作品賞ノミネート

第41回 ミュンヘン映画祭 外国語映画賞ノミネート

第40回インディペンデント・スピリット賞ベストリードパフォーマンス賞(ジェシカ・チャステイン)ノミネート


「変化を望めば、この先どうなるかわからない。それでも最後まで自分の生きたい人生を諦めたくない!」

この作品を見終わった後に、私の心がそう訴えかけてきました。

たとえ身の安全や衣食住が保証されていたとしても、自分らしく生きられないのなら意味がない…。人は未来への希望を失うと、生きる気力がなくなるのです。

この物語に出てくる主人公シルヴィアは、アルコール依存症克服者であり、障害者施設でSWとして働くシングルマザーでした。

彼女は一人娘に対して過干渉すぎる傾向があり、少し情緒が不安定な様子にも見えました。

©DONDE QUEMAEL SOLS.A.P.I.DE C.V. 2023

そんな彼女が、あるきっかけから記憶障害を抱える男性ソールの面倒を見るようになります。

優しく包容力のあるソールの弱さを垣間見ることで、その深い哀しみに触れ、少しずつ彼に惹かれていきます。

二人はお互いに愛しあい、癒され、支えあう関係に…。

けれど、現実には多くの障害が立ちはだかり、何も解決していません。

それでも最後まで人間らしく生きたいと願うソールと、彼に寄り添おうとするシルヴィア。はたして二人の選択は間違っているのでしょうか?

©DONDE QUEMAEL SOLS.A.P.I.DE C.V. 2023

ソールは毎晩ベッドで一人、亡き妻との思い出の曲を繰り返し大切に聴き続けていました。

そして、少しだけ残っている遠い記憶を慈しみ、忘れないようにリピートしているようにも見えました。

プロコル・ハルムの「青い影」の懐かしくもエモーショナルな旋律が傷ついた二人の心情を際立たせます。

 

映画『あの歌を憶えている』は2025年2月21日(金)より新宿ピカデリー、Bunkamuraル・シネマ渋谷宮下ほか全国順次公開です!

▼映画『あの歌を憶えている』公式サイト

https://memory-movie-jp.com/


【ミシェル・フランコ監督 オンライン取材】

ここからは、ミシェル・フランコ監督へのインタビューの内容をお届けいたします。(取材・文/はじめ、U子)

 

はじめ:本作のタイトルは“Memory(メモリー)”ですが、妄想やお酒の依存、認知症がフォーカスされています。本作を撮ろうと思ったキッカケは。

ミシェル監督:まず、観ていただきありがとうございます。私は映画を考えたり、脚本を書き始めている時にはそのような“テーマ”を考えません。テーマは決めずに、直感で書き始めます。本作の場合は“男性と女性が同窓会で出会い、なぜか彼は彼女のあとをついていき、一晩彼女の家の外で過ごした”ということを想像してしまったことが始まりです。「なぜ、彼女を追いかけたのだろう」、「なぜ、男性は外で待っていたのか」ということを自問することによって、書き終わった際に「やはり、これは“メモリー(記憶)”にしよう」とタイトルにたどり着くわけです。
 

はじめ:直感が先にきて、その後に物語が膨れ上がっていくイメージですね。

ミシェル監督:私は映画に対するアプローチが自分の内面にあることを表現している、云わばとても“個人的なもの”です。そのため、非常に複雑さを伴うが故に、映画を作る際にとてもお金がかかり、人もたくさん必要になってきます。しかし、できる限り一年に一本、または二年に一本は映画を作りたいと思っています。その背景としては、“自分の中で何が起こっているのかを見たい”という理由もあります。また、その事象を観客にどうやって伝えたいか、という部分も見たいと思っています。私の作品は観客に語りかける、あるいは伝えたいことのテーマがあるわけではなく、伝え方があるわけでもありません。もっとパーソナルなレベルでアプローチをしたい、映画的にオリジナルに表現したいと思っています。本作ではミステリーな部分がありますが、私が物語を書くプロセスの中で「ミステリーを追求して出てくる発見」があればあるほど、観客にも映画を通して良い経験ができると考えています。


U子:本作は監督の“内面から出てきたもの”ということですが、現実社会で起きている問題としてインスピレーションを受けたものではないということでしょうか?日本では独り身同士の恋愛や生き方などにフォーカスした作品もあります。

ミシェル監督:私のアプローチというものは非常にパーソナルなものですが、描かれているものは“社会に対する私の反応”とも言えます。この映画に出てくる人々は、社会からリスクをとってはいけない、家に居てじっとしていなさいと言われている人なわけです。何かを求めるのは間違いです、と言われている人々です。たとえ認知症を患っていても、同じ「人」であることに変わりはなく、社会から引退しなさいと言われるのは間違いです。彼は恋をしたっていい。しかし彼の弟は、あのような態度でも彼を守ろうとしているわけです。本作に登場するキャラクターたちは、病を患っている人に対して悪いことをしようと思っているわけではない。自分なりに良いと思って取り組んでいるわけです。この映画では、成熟した大人達がティーンエージャーのように“もう一度チャンスをつかもう”としています。人生の段階としては「もういいんじゃない?」「もう人生終わりの方で、落ち着けば?」と言われる年齢ではありますが、もう一度挑戦しようとしている人の話です。


 U子:“望みを捨てないことが一番大切だ”といふうに考えられているってことですね。

ミシェル監督:“希望”ということについてお話したいと思います。本作で、最初に男性が女性を追うアイディアが浮かんだ際、前作と同じ様にリベンジストーリーにしようと考えていました。ですが、私は自分の人生において非常に幸せな時期でした。心の中が平和的な時期だったわけです。前作を撮影した時に落ち込んでいたというわけではありませんが、やはりその時のパーソナルな心情も影響してくることは確かです。自分の人生に希望を感じていたこともあって、映画の中にも希望を感じるようになりました。このインタビューを通じて、改めて本作もパーソナルなアプローチだったと言えます。

 

はじめ:最後に、伝えたいメッセージをお願いします。

ミシェル監督:この映画を見て「何を感じるか」は自由だと思います。本作の冒頭シーンは病を患ったグループから始まっています。そのグループのメンバーは正気の状態を保とうとしている、あるいはより良い生活をしようと戦っている人たちです。主人公も障害がある人の介護をしていたり、認知症を患っているなど、「お互いになるべく親切にしましょう」という共通意識があると思います。ニューヨークでも、地下鉄に乗っている人でも、“何かしら”抱えているかもしれないわけです。従って、「なるべく小さな親切をしてあげよう」という心をこの映画を観て感じていただければ嬉しいです。


いかがでしたか?

今回、実際にお話を伺ってみて、ミシェル監督は自分の感覚に従って映画のシナリオを作っている印象でした。そして、それが監督自身の生き方にも反映している気がしました。

格差や差別を嫌い、社会的弱者の現実を真正面から、一切のメタファーやほのめかしもなく、直接的に、暴力的に、しかし繊細に表現する作品作りには感動を覚えます。

鬼才ミシェル・フランコ監督が創り上げる映画は、彼の魂の表現であり、アートであると感じました。

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