
【ネタバレ】配信・パッケージ化なしの込められた意味とは?『大きな家』
配信なし、パッケージ化なしの映画『大きな家』が12月6日(金)先行公開、12月20日(金)から全国公開となったこの作品は斎藤工が公式ホームページで「私は、この作品を作るためにずっと映画に関わってきたのかもしれない。そんな、自分の理由になるくらいの作品ができました。」と明言するほどだ。出演者が向き合った「家族」について、タイトルを「大きな家」とした意味など踏まえて書き綴る。
【目次】
手渡しで配られた”フライヤー”に込められた意味
「家族」に対して向き合うキッカケ
1対1でスクリーンを観ながら、感じ取ること
■作品概要
齊藤工による企画・プロデュースのもと、「14歳の栞」「MONDAYS このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない」の竹林亮監督がメガホンをとり、児童養護施設で暮らす子どもたちの日常に密着した作品。
■あらすじ
東京のとある児童養護施設。ここでは死別・病気・虐待・経済的問題などさまざまな事情で親と離れて暮らす子どもたちが、血のつながりのない他の子どもや職員と日々を過ごしている。家族とも他人とも言い切れない繋がりのなかで暮らす彼らは、両親への思いや、生活を身近で支える職員との関係性、学校の友だちとの距離感、施設を出たあとの暮らしなど、さまざまな葛藤を抱えながら成長していく。
以下、ネタバレの内容を含みます。
手渡しで配られた”フライヤー”に込められた意味

映画館の入口で手渡しで配られたフライヤー。書かれている文字は「映画『大きな家』をご鑑賞いただくすべてのみなさまにお伝えしたいこと」と記されており、内容には”出演者個人に対するプライバシーの侵害やネガティブな意見、各家庭の詮索や勝手な憶測、誹謗中傷を発言することはご遠慮ください。”などと記載されている。事実、今も児童養護施設で暮らしている本人が出演者として登場し、自身の体験や経験をカメラに向かって正直に答えているため、非常にセンシティブなことは理解できる。

作中の出演者の言葉でも「これって個人情報?」という言葉も出てくるぐらい、パーソナルで取り扱いの難しい部分だ。それに挑戦し、映画化に踏み切った斎藤工の想いがどれだけのものか直接聞きたいとさえ思う。普段の生活にカメラが入るだけでなく、”過去の経験”や”今の思い”、”将来のこと”についてそれぞれの出演者は赤裸々に語っている。この映画を観て、「受け取るだけ」ではやはり違う、と個人的にも思うため、「いろんな人に見てもらいたい」という想いの部分を言語化したい。が、前述のような配慮をしなければいけない難しさも兼ね備えていることは確かだ。
「家族」に対して向き合うキッカケ

フライヤーには「”ふつう”が少しだけ広がるかもしれない」「観た人の意識が変わることに直結する」と書いてあるように、”知らないことを知る”キッカケをくれる作品でもある。ここまでパーソナルな内容をそのまま映画に組み込んでいる作品もそう多くないのは、今のネット社会で様々な問題が起きかねないリスクもあるからだと分かる。それだけ”手渡し”のように興味を持って劇場に足を運んだ1人1人が感じ取ってこそ、意味のあるものになったと言える。
また”大きな家”にそれぞれ違った事情を抱える子どもたちが過ごしている中、「家族」について質問している。環境や事情が異なる「家族」への想いは、出演者(子どもたち)にとって答えられる人もいれば、答えにくい人もいるだろう。ただ、今の気持ちを言葉にしてくれた出演者(子どもたち)は、”伝えたい”という想いもどこかにあるのかもしれない。ここまで踏み込んだ質問をしているからこそ、人の想いの詰まった作品に仕上がっていると私は思う。
そして、後半には海外の児童養護施設にボランティアに行くシーンがある。そこではボランティアしながらも、日本の子どもたちと海外の子どもたちでどういう意識の違いがあるのかも見えてくる。同じ日本人同士で生活しているときの意識と、海外の子どもたちが日々どんな気持ちで生活してくるのか鑑賞者以上に、当事者(出演者)が意識の違いを認識できているように思えた。
1対1でスクリーンを観ながら、感じ取ること

前述で「配信なし、パッケージなし」とフライヤーには書かれていたが、スクリーンを通して1対1で向き合って観ることが最も重要だ。自身の経験や胸中の思いを作品に提供してくれた敬意を持って、作品に向き合って欲しいのではないか、と私は感じた。劇場に足を運んでくれた方へ、さらにフライヤーで”お願い”についても手渡しで伝えるまでの親身さ・丁寧さのようなものを製作者側から感じられた。
この記事を書くことは個人的にもセンシティブで上手く言葉にできるか不安な部分も多かったが、”伝えたい・観て欲しい”気持ちがそれを上回ったため、記事に綴った。鑑賞した上で誹謗中傷の一文字たりとも頭にはよぎらず、製作者・出演者・支える人々の想いの強さを上手く表現できたなら嬉しい限りだ。


■出演
監督 竹林亮
企画 齊藤工
プロデュース 齊藤工
プロデューサー 福田文香 山本妙 永井千晴 竹林亮
撮影 幸前達之
録音 大高真吾
音響効果 西川良
編集 竹林亮 小林譲 佐川正弘 毛利陽平
音楽 大木嵩雄
主題歌 ハンバート ハンバート
予告編
12月6日(金)東京・大阪・名古屋で先行公開、12月20日(金)全国順次公開
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投稿を表示先週自分も鑑賞しました。竹林監督作品大好きなので、公開心待ちにしてました。
子供達、職員さん達の言葉が
心に響いたり、自分を省みたり
色んな気付きを与えてくれました。
映像の編集も素敵で、感情に訴えてくる印象。
やっぱり、観に行けて良かったなと思える体験になりました。