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spy master
2025/11/01 00:05

映画『ハウス・オブ・ダイナマイト』~発射された1発のミサイルがもたらす混乱と恐怖~

概要

2009年公開の映画『ハート・ロッカー』でアカデミー監督賞を受賞したキャスリン・ビグローが2017年公開の映画『デトロイト』以来8年ぶりに放つ緊迫のポリティカルスリラー。

アメリカに向けて発射され、壊滅的な打撃を与える可能性がある1発のミサイルの対応に追われる政府と軍関係者の姿が描き出されていく。

映画『マンデラ 自由への長い道』で知られるイドリス・エルバ、『ミッション:インポッシブル/ローグ・ネイション』でヒロインに抜擢されたレベッカ・ファーガソン、『シルクロード.com-史上最大の闇サイト-』で知られるジェイソン・クラーク、『マリアンヌ』で知られるジャレッド・ハリスが出演。

2025年10月10日金曜日に一部劇場で公開され、10月24日金曜日にNetflixにて配信が開始された。

https://www.cinemalineup2025.jp/ahouseofdynamitefilm/

あらすじ

ごくありふれた1日になるはずだったある日、アメリカに向けて1発のミサイルが発射された。どこから発射されたのかわからないそのミサイルはアメリカに壊滅的な打撃を与える可能性を秘めていた。

誰が仕組み、どこからミサイルを発射したのか?

混乱に陥ったアメリカ政府は迫りくる時間との闘いを強いられていくが、ミサイルは刻一刻と目標に向かっていくのだった。

 

映画評

イラクで爆弾処理に従事するアメリカ兵士の姿を描いた2009年公開の映画『ハート・ロッカー』で史上初めて女性監督としてアカデミー監督賞を受賞し、2012公開の映画『ゼロ・ダーク・サーティ』ではアメリカ海軍特殊部隊によるオサマ・ビンラディン殺害作戦に隠された衝撃の真実を描いたキャスリン・ビグローが放つ緊迫感あふれるポリティカルスリラーだ。

2017年公開の映画『デトロイト』以来8年間の沈黙を破って放たれた『ハウス・オブ・ダイナマイト』はアメリカに向けて発射された1発のミサイルに対応する政府関係者と軍関係者の混乱が描かれていく。誤報と思われたミサイル発射が現実の脅威であり、アメリカ本土に刻一刻と迫る中でどのように対応するべきか? 迫り来る時間との闘いを強いられる人間の姿を容赦なく突きつける。

この映画の特徴は三幕構成であることだ。第一幕はミサイル発射への対応をホワイトハウス危機管理室、第二幕は軍高官によるウェブ会議、第三幕は未曽有の事態に直面した大統領の視点である。

物語は一瞬たりとも息をつかせず、まばたきさえも許さないほど秒刻みで進んでいき、字幕を追うことさえ困難となってしまうほどだ。

軍事基地、衛星映像、司令室と限定された空間を映し出すことでドキュメンタリーを観ているような感覚だ。

迫り来るミサイルにどうのように対処するべきなのか? 刻一刻と迫り来る時間と重低音の音楽が映画全体を異様な空気で包み込み、息苦しさを覚えてしまう。ミサイルへの報復の是非が論じられることがないまま指令、確認、迎撃と冷たく進められていく。

印象的なのは白い制服に身を包む海軍少佐が持つ黒いカバンだ。この黒いカバンは「大統領緊急カバン」、通称「核のフットボール」である。報復措置を記した黒い手帳、認証コードが記されたカードなどが入っているという。世界を一瞬にして壊滅させる力を持つ人間が存在することを改めて感じさせる。

核兵器が存在が戦争を抑止する力となっているが、それは我々が「爆薬で作られた家」、映画のタイトルである「ハウス・オブ・ダイナマイト」に住んでいることを意味する。つまり、発射ボタンひとつで世界を壊滅させる破壊力を持つ核兵器の存在が世界の平和を保っているのである。

映画に登場する黒人の大統領は理性があり苦悩する人間として描かれているが、映画を離れて現実に目を向けた時、我々は核兵器の発射ボタンを握っているのが誰であるのかを知らされる。そして、この事実を知った時にさらなる衝撃を受けて言葉を失ってしまう。

 

映画『ハウス・オブ・ダイナマイト』予告編

 

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