フランケンシュタイン恐怖の生体実験
フランケンシュタイン恐怖の生体実験
1969年 イギリス 劇場公開:1969年8月30日
スタッフ 監督:テレンス・フィッシャー 制作:アンソニー・ネルソン・キース 脚本:バート・
バット 撮影:アーサー・グラント メイク:エディ・ナイト 音楽:ジェームス・バー
ナード
キャスト ピーター・カッシング、ヴェロニカ・カールソン、フレディ・ジョーンズ、サイモン・ウォ
ード、ソーリー・ウォルターズ、マキシン・オードリー、ジョージ・プラヴダ、コレット
・オニール、ジム・コリアー、ジェフリー・ベイルドン ほか
脳移植手術の提唱をしたために医学界と祖国から追放され、逃亡生活を続けていたフランケンシュタイン男爵は、若き女性・アナの営む宿屋を仮の住まいとした。男爵はそこで、脳移植手術の共同研究者・ブラント博士の近況を知る。ブラントの研究は男爵よりも先んじていたが、発狂したためにアナのフィアンセ、カール医師の務めるサナトリウムに収容されていた。男爵は自らの手でブラントを治療し、その方法を聞き出す計画をたてた。カールは、アナの母親の病のために、高額な薬品を非合法にアナに横流しをしていた。その秘密を知った男爵は、カールとアナを計画に協力するよう脅迫した。三人は、ブラント博士をサナトリウムから連れだすが、拉致に手間取った上にブラントは心臓発作を起こし、瀕死の状態になってしまった。ブラントを生かすには、その脳を他の身体に移植するしかない。男爵は「脳の入れ物」として、サナトリウムのリクター博士をターゲットにした。

本作は1957年の『フランケンシュタインの逆襲』を第1作とする、戦後の名門ホラーメーカーとして知られるイギリスのハマー・フィルム・プロダクションが製作し、怪奇ホラーの分野のスター、ピーター・カッシングがフランケンシュタイン男爵役で主演するシリーズの第5作にあたる。カッシングが演じる男爵は第1作では冷酷な性格であったが、作を重ねるごとに冷酷さを薄め、助力者からも尊敬される人格的魅力を強めてきた。しかし、本作では目的の為には殺人も脅迫も躊躇なく行う、非道な冷血漢として登場した。薄幸のヒロイン、アンナはハマー・ホラー随一の美女とも称されるヴェロニカ・カールソンが起用された。苛烈に研究に邁進する男爵による恐怖と、それに巻き込まれる若いカップルの悲劇を、サスペンス感溢れるスピーディーな演出で描いている。シリーズ中、最も男爵が犯罪者的であるが、そういった悪人を演じても十分に説得力を持たせることのできるカッシングの演技が光る作品である。中盤にフランケンシュタイン男爵がアンナをレイプする場面がある。これは全体の撮影が大方終了した後、製作側からの要請でセクシーさを増す為に付け加えられたシーンである。監督のフィッシャーやカッシングは、このようなシーンは男爵のキャラクターに合わないと反対したが、受け入れられなかった。アンナを演じたカールソンは後に、このシーンが本作の魅力を損ねてしまったと述懐している。また、本作は日本で公開された最後のハマー・プロのフランケンシュタイン映画であります。