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じょ〜い小川
2025/05/14 03:26

今のケイト・ウィンスレットを存分に味わえる女性戦場カメラマンの自伝映画

■リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界

(c)BROUHAHA LEE LIMITED 2023

「VOGUE」誌のトップモデルから報道写真家へと転身したリー・ミラーの半生を描いたケイト・ウィンスレット主演・製作の自伝映画。1938年にリー・ミラーは仲間との南フランスでのバカンスで芸術家ローランド・ペンローズと出会い恋に落ちる。程なくして写真家の仕事を得たリーは「LIFE」誌のフォトジャーナリスト兼編集者デイヴィッド・シャーマンとチームを組み、従軍記者兼写真家として戦場の様子を写真におさめることに。リー・ミラー役をケイト・ウィンスレットが演じ、他にアンディ・サムバーグ、アレクサンダー・スカルスガルド、マリオン・コティヤール、ジョシュ・オコナー、アンドレア・ライズボロー、ノエミ・メルランが出演。


『タイタニック』や『エターナル・サンシャイン』、『レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで』などで主演をしたケイト・ウィンスレットが主演で、ナチス関連作品という珍しい組み合わせのケイト・ウインスレット主演映画『リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界』。これまでのケイト・ウィンスレット主演・出演作品ではなかったタイプの作品というだけでなく、

ナチス・ドイツを扱った作品としても女性戦場写真家視点という新しい視点のナチス・ドイツ関連兼女性戦場カメラマンのリー・ミラーの自伝映画で、非常に見応えたっぷり!

(c)BROUHAHA LEE LIMITED 2023

映画はジョシュ・オコナーが演じるジャーナリストが写真家リー・ミラーを取材し、その時のリーの回想がストーリーのメインとなる。1938年のモデルのリーと芸術家ローランド・ペンローズの出会いから、写真家になるきっかけ、第二次世界大戦に染まる世間の様子といった具合いで非常に丁寧な導入から、戦時中の女性戦場カメラマンとしてのリーが見た戦場を描く。

(c)BROUHAHA LEE LIMITED 2023

この戦場カメラマンのシーンは同じ女性戦場カメラマンを主人公にした2024年に公開したアレックス・ガーランド監督作品『シビル・ウォー アメリカ最後の日』の主人公らのシーンとも違う。本作はそれを1940年代のナチス・ドイツ関連作品でやっている。加えて、多様性がまかり通る現代とは違う1940年代で、戦場という男メインの世界での女性カメラマンのぞんざいな扱いもその時代らしく、戦時中の女性らの描写も同様の感覚が見られる。

(c)BROUHAHA LEE LIMITED 2023

こうした比較的真面目なナチス・ドイツ関連作品の中にあって、ケイト・ウィンスレットとアレクサンダー・スカルスガルド の大人のラブロマンスのシーンは一服の清涼。この辺りは近年のケイト・ウィンスレット主演映画『女と男の観覧車』にも通じながらも、アラフィフらしく無理のない形で収まっている。「VOGUE」誌でモデルをやった過去がありながら戦場カメラマンに染まるリー・ミラーと、『タイタニック』や『エターナル・サンシャイン』で頂点に立ちながらも現在もトップ女優でありながら「製作」という次のステップも見えてきたケイト・ウィンスレットが女性としてダブらせているようにも感じられる。また、ケイト・ウィンスレットと同世代のオスカー女優のマリオン・コティヤールの久しぶりの活躍や、彼女らより一世代後輩の『To Leslie トゥ・レスリー』のアンドレア・ライズボローやさらに一世代後輩の『燃ゆる女の肖像』のノエミ・メルランらとのアンサンブルも見逃せない。

(c)BROUHAHA LEE LIMITED 2023

本作の監督はミシェル・ゴンドリー監督作品やジム・ジャームッシュ監督作品の撮影監督のエレン・クラス。彼女としては初監督作品であり、且つ彼女にとって初めてのタイプの作品を手掛ける形である。

なので、

撮影監督は『戦場のピアニスト』他ロマン・ポランスキー監督作品やアンジェイ・ワイダ監督作品『カティンの森』のパベウ・エデルマン

とあって、

作品の大半を占める1930〜1940年代のシーンが引き締まって、その時代らしく感じられる。

エレン・クラス監督は『エターナル・サンシャイン』で、パベウ・エデルマンは『おとなのけんか』でケイト・ウィンスレットと関わりがあり、他にもロマン・ポランスキー組の音楽担当のアレクサンドル・デスプラは『おとなのけんか』、美術のジェマ・ジャクソンが『ネバーランド』、衣装のマイケル・オコナーが『アンモナイトの目覚め』、ヘアメイクのイヴァナ・プリモラックが『愛を読むひと』や『アンモナイトの目覚め』、『ブラックバード 家族が家族であるうちに』、といった具合いでスタッフの大半がケイト・ウィンスレットと過去に何かしら仕事を経験していて、この辺りは

本作の製作のNo.2がケイト・ウィンスレットであることから考えられるスタッフ人選である。

ジャーナリストの取材による現在進行のシーンで見られる晩年のリーの老けメイクを含め、アラフィフのケイト・ウィンスレットをナチュラルに堪能しながら、女性戦場カメラマン視点の新感覚のナチス・ドイツ関連ドラマを楽しむ映画で、作り手・女優の新機軸と見る側の新感覚が上手くシンクロしている不思議な感覚も感じられる。

リー・ミラーの半生をたっぷり味わいながら、今のケイト・ウィンスレットも楽しめる。

(c)BROUHAHA LEE LIMITED 2023

『リー・ミラー 彼女の瞳が映す世界』
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2025年5⽉9⽇(⾦) TOHOシネマズシャンテほかROADSHOW 
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© BROUHAHA LEE LIMITED 2023
配給:カルチュア・パブリッシャーズ
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作品名:「リー・ミラー 彼⼥の瞳が映す世界」 
監督:エレン・クラス

製作:ケイト・ウィンスレット、ケイト・ソロモン
出演:ケイト・ウィンスレット、アンディ・サムバーグ、アレクサンダー・スカルスガルド、マリオン・コティヤー ル、ジョシュ・オコナー、アンドレア・ライズボロー、ノエミ・メルラン
配給:カルチュア・パブリッシャーズ
原題:LEE イギリス| 2023 | 116 分 |英語、フランス語
翻訳:松浦美奈
© BROUHAHA LEE LIMITED 2023

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