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2025/05/23 15:10

懐古 アメリカ映画の「1974年」

昔の時代を慕い、アメリカ映画の名作を年度別に振り返っている。

「1960年」を初回に、前回「1973年」まで14回にわたって当時の名作に触れてきた。 

 

今回は、フランシス・フォード・コッポラ監督が手掛けた2作品に沸いた「1974年」(昭和49年)の話題作をご紹介したい。

 

 

「ゴッドファーザーPARTⅡ」 

          監督:フランシス・フォード・コッポラ

 

言うまでもなく72年の大ヒット作「ゴッドファーザー」の続編。

父を継いで新たなドンとなったマイケル(アル・パチーノ)の、ファミリー運営の苦悩と、父の若き日の姿(ロバート・デ・ニーロ)が複層的且つ詩情豊かに描かれている。

亡き父の後を継ぎ、コルレオーネ・ファミリーのボスとなったマイケル(アル・パチーノ)は、何者かに寝室を襲撃され、その背後にユダヤ人の大ボス、ハイマン・ロス(リー・ストラスバーグ)がいることを知る。大企業化した組織の運営、肉親の離反、抗争事件の激化など、時代の流れと情勢の変化での中で、マイケルは父の若き日に思いを馳せるのだが...。

 

豪華共演陣は、マイケルの妻役でダイアン・キートン、マイケルの兄役でジョン・カザール、妹役でタリア・シャイア、マイケルの相談役でロバート・デュヴァルといった面々。

その他にもハリー・ディーン・スタントントロイ・ドナヒューダニー・アイエロマリアンナ・ヒルジョー・スピネルといった名優が顔を揃えている。

 

ドンとなったマイケルと、父の若き日の物語がカットバックで進行、生きた時代の違いを浮き彫りにしながら、上院の公聴会やキューバ革命なども織り込み、アメリカの歴史の暗部にメスを入れることにも成功している。

 


 

「カンバセーション...盗聴...」 

          監督:フランシス・フォード・コッポラ

 

盗聴のプロが逆に盗聴される恐怖をサスペンスフルに描いた名作。

2年前に起きたウォーターゲート事件との関係が取り沙汰されたことでも話題性があった。

西海岸一の評判をとるプロの盗聴屋ハリー・コール(ジーン・ハックマン)は、ある依頼で録音した盗聴テープの中に、 ‘殺されるかもしれない’ という女のかすかな声を聞いた。その後、ライバル業者から紹介された女とベッドを共にしたハリーは、そのテープを女に持ち逃げされてしまう。ところが依頼人からテープを受取ったという連絡があり、ハリーはテープの声の主が依頼人の妻であることを知るのだが....

 

面白いのは、ハリーのアパートで、誰も番号を知らないはずの電話が鳴ること。その電話の声から、彼は自分が盗聴されていることを知るのだが、盗聴のプロである彼がどんなに探しても盗聴器を発見できないのだ。

 

‘好奇心を捨てること’ を鉄則にして生きているハリーを好演したジーン・ハックマンがいい。

共演は、ハリーの助手役でジョン・カザール、ハリーの同業者役でアレン・ガーフィールド、ハリーの恋人役でテリー・ガー、依頼主役でロバート・デュバルなど。

又、若き日のハリソン・フォードや、フレデリック・フォーレストシンディ・ウィリアムスらも出演している。

 

カンヌ国際映画祭作品賞受賞。

 


 

「タワーリング・インフェルノ」 監督:ジョン・ギラーミン

 

超高層ビルで発生した大火災の消火にあたる消防士たちの活躍、そして、そこから脱出しようとする人々の姿を描いたパニック・スペクタクル

豪華オールスター・キャストの競演でも話題に上がった傑作。

138階建ての超高層ビル「グラス・タワー」で、完成披露パーティが行われている頃、81階の倉庫から出火したボヤが原因で、ビルはあっという間に激しい炎に包まれる。135階のパーティ会場には、逃げ遅れた人々が取り残され、外からの救出を待っている。消防隊長のオハラハン(スティーヴ・マックィーン)は、ビル設計者のダグ(ポール・ニューマン)と協力して、消火と救出活動にあたるのだが...。

 

映画の前半はビル火災に至る流れや、ビルのオーナーであるジム(ウィリアム・ホールデン)と設計者のダグ、広報部長ダン・ビグロー(ロバート・ワグナー)、配線工事担当のロジャー(リチャード・チェンバレン)らの人間関係を中心に描かれる。

そしてパーティに招待されている市長(ジャック・コリンズ)や上院議員(ロバート・ヴォーン)、詐欺師(フレッド・アステア)、富豪未亡人(ジェニファー・ジョーンズ)等、様々な人々の思惑や力関係が、人間の内面をえぐるように描かれる。

中盤から後半にかけては、まさにビル火災からの脱出劇、救出劇に集約される。
ここでは人間の醜さが遠慮なく描かれる
女、子どもが優先されて救出されるところ、我先にと、人を押しのけて逃げようとするのは、自分勝手で傲慢な一握りの男どもだ。

ラスト・シーンは、なるほど、そんなテがあったか!!と驚嘆せずにはいられない。

 


 

「チャイナタウン」 監督:ロマン・ポランスキー

 

1930年代後半に、ロサンゼルスで実際に起きた事件をもとにした、ミステリー調ハードボイルドの傑作。

ロサンゼルスに事務所を構える私立探偵ジェイク・ギテス(ジャック・ニコルスン)のもとに、ミセス・モーレイと名乗る女がやって来て、夫の浮気調査を依頼した。しかし、それは町を牛耳る大物ノア・クロス(ジョン・ヒューストン)と対立しているモーレイ氏に対して仕掛けられた罠だった。本物のモーレイ夫人(フェイ・ダナウェイ)がギテスの事務所を訪れた直後、モーレイの溺死体が貯水池で発見される。調査を始めたギテスは、事件の背後に潜むノアが、ダム建設に絡む汚職の中心人物であることを突き止めるのだが...。

 

主演のジャック・ニコルスンが37歳のときの作品だが、既にトップスターのニコルスンは貫禄たっぷり。大御所ジョン・ヒューストンとがっぷり四つに組んでいる。
そして、 ‘恋多き女’ フェイ・ダナウェイの魅力は特筆もので、特に本作における「異様に輝く瞳をもった謎の女」は素晴らしかった。「俺たちに明日はない」(67年)、「華麗なる賭け」(68年)とはまた異なった迫力を感じさせる。「ネットワーク」(76年)における敏腕プロデューサー役のアカデミー主演女優賞受賞は遅すぎたくらいだ。
 

特筆すべきは、ニコルスンをナイフで傷つける男の役で、ポランスキー監督自身が出演していること。

 

ジェリー・ゴールドスミスのテーマ曲も効果的で、なかでもノスタルジーなトランペットの音色が雰囲気を盛り上げている。

 


 

「こわれゆく女」」 監督:ジョン・カサヴェテス

 

自分の感情をうまくコントロールできない主婦と、それに対処しようとする夫や子供たちの苦悩を描いたジョン・カサヴェテス監督渾身の力作。

土木工事の現場を任されているニック(ピーター・フォーク)は、妻のメイベル(ジーナ・ローランズ)と二男一女の3人の子供と暮らしている。ある晩、メイベルは子供たちを自分の母親(レディ・ローランズ)に預け、ニックと2人きりの夜を愉しむ約束をしていた。ところが、水道管破裂の修復工事に急遽駆り出されたニックは、今夜は帰れない旨の連絡を妻に入れた。メイベルは冷静に電話応対したが、その後、一人で夜の酒場へ出かけ、ガーソン(ジョージ・ダン)という見知らぬ男に声を掛けると、隣席に座ってやけ酒を煽った。泥酔したメイベルはガーソンを自宅に連れ帰り、関係をもってしまう。翌朝、精神に異常をきたしたメイベルは、ガーソンを夫と思い込んだり、預けたはずの子供たちを探し回る始末。やがて、ニックが大勢の仕事仲間を連れて帰宅した。メイベルは別人のように温かく出迎え、食事を振舞う。会話や歌で自然とその場が盛り上がるが、ニックは突然  ‘はしゃぎすぎだ! 座ってろ!’  とメイベルを怒鳴りつけた。瞬時にして場は静まり返り、やがてニックの同僚たちは帰ってしまうが...。

 

鬼気迫る緊張感と夫婦愛...兎にも角にもジーナ・ローランズとピーター・フォークの熱演、それに尽きる。

ジーナ・ローランズは「内面のバランスをくずした女」を好演、一方のピーター・フォークは「短気で気難しい中年男」を好演、両者の息はピッタリだ。特に、ピーター・フォークがジーナの頬を張り倒すシーンは真に迫っている。

 

監督のジョン・カサヴェテスはジーナ・ローランズの夫であり、ピーター・フォークとの仕事の関わりも深い。

 


 

「エアポート’75」 監督:ジャック・スマイト

 

「大空港」(70年)に始まるエアポート・シリーズの第2作

飛行中のジャンボ機が小型飛行機と衝突し、操縦不能となる中、乗客の恐怖と地上の救援活動を描いたパニック映画の傑作。

ワシントン・ダレス国際空港から、多くの乗客を乗せたコロンビア航空ボーイング747型機が、ロサンゼルスに向けて飛び立った。ところが予定の飛行コースに濃霧が発生、機はやむなくソルトレイクシティに緊急着陸を試みる。ところが付近を航行していた自家用小型機がコントロールを失い、ジャンボ機と衝突した。コックピットに開いた大穴から副操縦士(ロイ・シネス)が外に吸い出され、

航空機関士(エリック・エストラダ)は即死、機長(エフレム・ジンバリスト・Jr)は両目を負傷してしまう。残された客室乗務員のチーフ、ナンシー(カレン・ブラック)は、管制塔の指示で必死に操縦桿を握るのだが...。

 

本作も豪華キャストに酔いしれてしまう。(以下、俳優と役柄をご紹介)

ジョージ・ケネディ(コロンビア航空の副社長)、チャールトン・ヘストン(ジャンボ機の教官)、マーナ・ロイ(ジャンボ機の乗客、アル中気味の中年婦人)、スーザン・クラーク(コロンビア航空副社長夫人)、リンダ・ブレア(乗客、腎臓移植手術を控えている少女)、ナンシー・オルソン(少女の母親)、そしてグロリア・スワンソン(乗客、映画女優本人役)である。


管制塔の指示と、息も絶え絶えの機長が発する言葉により、必死で操縦桿を握る客室乗務員ナンシーの姿は、否が応でも緊迫感を生み出している。カレン・ブラックの必死の形相が、演技とはいえ真に迫っているのだ。
 


 

「アリスの恋」 監督:マーティン・スコセッシ

 

夫の死をきっかけに一人息子を連れて旅立ち、新たな幸せを掴むまでの女性版ロード・ムービー。
マーティン・スコセッシ監督は、この女性像を演じきれる女優を「優しさと強さを確実に表現できる演技力」においた。
指名されたエレン・バースティンも期待に応え、パワフルさと繊細さが同居しているような演技を見せている。

 

ニューメキシコ州ソコーロに住むアリス(エレン・バースティン)は35歳。夫ドナルド(ビリー・グリーン・ブッシュ)と12歳になる息子トム(アルフレッド・ルッター・Ⅲ)と3人暮らし。反抗期のトムに手を焼いているが、注意するのはいつもアリスだった。ある日、夫がトラック事故で死亡した。悲しみも癒えぬまま、アリスは息子との生活を守るため家財道具を売り払い、息子と共に生まれ故郷のモントレーへ旅立つ。途中の町で、アリスはバーの専属歌手に採用される。そしてベン(ハーベイ・カイテル)という男が現れ、アリスに好意を示す。最初は相手にしなかったが、ベンの純粋な好意に翻意、関係をもってしまう。ところがこの男、とんだ食わせ者で、既婚者であるばかりか、妻にナイフを突きつけたりと狂暴な男だった。危険を感じたアリスは、息子を連れて即刻町を脱出し、モントレーへ向かう途中のツーソンで、ダイナーのウェイトレスとして働くことにするのだが...。

 

共演のクリス・クリストファーソンがいつ出てくるのかと気にかけていると、ツーソンのダイナーの常連客として登場。トレードマークの髭が彼らしく、どことなく大らかで安心感がある。

 

そのダイナーのウェイトレス役で、フロー役のダイアン・ラッドと、ヴェラ役のヴァレリー・カーティンが出ている。フローは陽気で勝ち気なうえ、いちいち口汚く罵る。逆に内気なヴェラは接客の要領が悪く、ミスばかり。しかし、アリスは徐々にこの2人と心が通い合う。その流れがとても上手く演出されている。

 

アリスが友人に言うセリフが面白い。
‘男の顔を二度と見なくたって平気! ロバート・レッドフォードなら別だけど’

 


 

上記7作品以外では、「華麗なるギャツビー」、「レニー・ブルース」、「大地震」、「ロンゲスト・ヤード」、「ヤング・フランケンシュタイン」、「ブレージングサドル」といった作品が思い浮かぶ。

次回は「1975年」のアメリカ映画を振り返りたい。

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1 件の返信 (新着順)
spy master
2025/06/12 23:37

映画『チャイナタウン』は再上映で観賞しました。ジャック・ニコルソンとフェイ・ダナウェイが見せる卓越した演技に驚かされました。強烈な光に包まれたような感覚になりました。


趣味は洋画
2025/06/14 19:41

spy master さん

コメントありがとうございます。
この映画は70年代を代表するハードボイルドの傑作ですね。
仰っているように、名優2人の演技にボクも引き込まれました。

俳優の名演はに加え、ジョン・A・アロンゾのカメラ、ジェリー・ゴールドスミスの音楽も効果的で作品を下支えしていましたね。