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spy master
2025/10/08 18:12

映画『ゼロ・ダーク・サーティ』~10年に及ぶ決死の追跡劇を描く衝撃の実話~

概要

2011年5月1日にアメリカ軍によって実行されたオサマ・ビンラディン殺害作戦の知られざる全貌を明かした緊迫のポリティカルドラマ。アメリカ中央情報局(CIA)の女性情報分析官による10年間に及ぶ決死の追跡とビンラディン殺害作戦がドキュメンタリータッチで描かれて言葉を失うほどの衝撃を与えていく。2010年公開の映画『ハート・ロッカー』でアカデミー監督賞を受賞したキャスリン・ビグローがメガホンを握り、映画『ツリー・オブ・ライフ』で知られるジェシカ・チャステインがCIAの情報分析官を演じた。

             

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あらすじ

2001年9月11日に発生したアメリカ同時多発テロ事件の首謀者オサマ・ビンラディンは事件から数ヶ月後に忽然と姿を消した。アメリカ中央情報局(CIA)は莫大な予算を注ぎこむもののビンラディンの消息をつかむことができないでいた。

2003年、マヤという名の情報分析官がCIAパキスタン支局にあるビンラディン追跡チームに送り込まれた。若くて華奢な彼女はイスラマバードにあるCIA秘密基地に到着早々、追跡チームリーダーのダニエルが行う捕虜の尋問に立ち会う。

資金の運び屋であるアンマルにビンラディン関係者の名前を吐かせようとしていたダニエルがアンマルを水責めにする光景を目を背けてしまう。

映画評

映画冒頭の画面は黒いままで何も映し出されることなく、2001年9月11日に発生した同時多発テロ事件で世界貿易センターに取り残された人々の最期の通話だけが観る者の耳に入ってくる。アメリカのみならず世界中に衝撃を与えた航空機が世界貿易センターのツインタワーに激突する映像はなく、黒い画面だけが目に飛び込むのである。救助が来ることはなく、刻一刻と命が終りに近付いていることを観る者に否応なく突きつけてくる。観る者の想像力を激しく刺激するオープニングから一転、今度は目を背けたくなるような尋問のシーンが目に飛び込んでくる。

こうしてジェシカ・チャステイン演じるCIA情報分析官マヤの視点と映画を観る者は一体となり、10年に及ぶオサマ・ビンラディン追跡から殺害までを体験していくことになるのだ。

地道に証拠を収集して分析し、容疑者を尋問して推論を立てていく様は犯罪捜査ドラマを想わせるが、FBIが最重要指名手配犯としたほどの人物オサマ・ビンラディンを追跡していくことは情報分析官自らの命を危険にさらすことを意味し、映画は常に緊張と不安な空気に覆われている。

徹底したリアリズへのこだわりを貫くキャスリン・ビグロー監督が手掛ける映画『ゼロ・ダーク・サーティ』は観る者に言葉を失わせるほどの衝撃に満ちていると言える。

 

豆知識

映画のタイトル『ゼロ・ダーク・サーティ』とは「午前0時30分」を意味する軍事用語で、オサマ・ビンラディンの潜伏先にアメリカ海軍特殊部隊シールズチーム6が踏み込んだ時刻である。

製作と監督を務めたキャスリン・ビグローは映画『タイタニック』で知られるジェームズ・キャメロン監督の元妻である。

CIA情報分析官マヤを演じたジェシカ・チャステインは映画『タミー・フェイの瞳』でアカデミー主演女優賞を受賞した。

オサマ・ビンラディンに「ジェロニモ」という暗号名が付けられたことに対してアメリカ先住民が当時のバラク・オバマ大統領に謝罪を要求した。

ビンラディン殺害作戦にステルス仕様のブラックホーク・ヘリコプター2機が投入されたが、1機が墜落した。墜落したヘリコプターはアメリカ海軍特殊部隊員によって爆破されたものの、ステルス仕様のヘリコプターの存在が世界に知られてしまった。

ビンラディン殺害に際し、「ネプチューン・スピア作戦」という作戦名が付けられた。「ネプチューン・スピア」とは、ローマ神話の海神ネプチューン(ギリシア神話ではポセイドン)が持つ三又の銛「トライデント」の別名である。アメリカ海軍特殊部隊シールズの記章にネプチューン・スピアが描かれており、シールズによる作戦であることを暗示する意図があったという。

2014年、アメリカ海軍特殊部隊シールズの元隊員ロバート・オニールが「ビンラディンを殺害したのは自分である」、と明らかにした。

映画『ゼロ・ダーク・サーティ』は第85回アカデミー賞で作品賞、脚本賞、音響編集賞、編集賞、主演女優賞の合計5部門でノミネートされ、音響編集賞を受賞した。

 

映画『ゼロ・ダーク・サーティ』予告

 

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