堺雅人の魂を削る演技が凄すぎる「その夜の侍」オールタイム堺#2
コラムの力を発揮する時が来た、
というのもオールタイムベストならぬ
オールタイム堺を探るにあたり、
星の数がやけに低いこの
「その夜の侍」監督:赤堀 雅秋(あかほり まさあき)
という作品がとてもネックになる。
実に良いメッセージを持っているし
オススメと言いたいところだけど安易なオススメを許さない
壮絶な役柄を演じている。
ミーハーな気持ちではオススメしない。
役作りがすごすぎて決してカッコよくない悲痛な堺さんが見られる。
でもメッセージが壮絶なので絶対にそこは伝えたい。
というわけでだいぶネタバレもある。
まず堺さん演じる「健ちゃん」こと中村健一は妻を
轢き逃げで亡くす。その轢き逃げした犯人を
山田孝之さんが演じているのだけれど
こいつ(木島)があまりに悪いヤツで気分が悪くなるくらい怪演する。
さすがウシジマくん、さすが全裸監督。
イカれた野郎のセリフばかり吐いて、
人を撥ねた現場で無責任な態度を取り続ける。
さらに通りすがりの女性の財布を奪い、乱暴を働く。
それを見ている仲間も許せないし、
妻を失った健ちゃんが、亡き妻の留守電メッセージを延々再生し、妻の衣服の匂いを嗅ぎ続けるのも痛々しい。そこから5年の月日が流れてもまだ
健ちゃんの時が止まったままなのだ。
妻のブラジャーをポケットに入れたまま、
お見合いに行く健ちゃん。
いきなり安藤サクラさん演じるホテトル嬢(ホテルで成人男性向けサービスをする)。
情けなさの極みを演じる堺雅人さんの鬼気迫る演技。
物語の最初から包丁を持ち、復讐劇が少しずつ進むのが辛い。
「侍」とはこの復讐劇で仇を討つことで終わるのだ、と予感させる。
自分の野球グローブを「これ、あげるよ」と渡された同僚が
泣き咽ぶ、などもう耐えられないくらいしんどい。
さあ、ついに土砂降りの中、
悪を討つシーンが訪れる。
しかし、そこで健ちゃんは
木島に向かい
「他愛のない話がしたい・・・」と包丁を投げ捨てる。
これはお見合い相手が健ちゃんに言った言葉だ。
しかし、木島は
隠していた包丁を取り出し、
「お前が死ね」と刺そうとする。
もう頼むからあの男に一番酷い天罰を与えてくれ、と
願ってしまうのだけれど、
ここがこの作品のすごいところ。
この登場人物に対し、一番ダメージを与えるシナリオとはなんだ?
その答えがある。
雨の中の殴り合い、揉み合いの末、
一冊の手帳を取り出す健ちゃん。
(この土砂降りもみあいのシーン二日がかりで撮り記憶が無くなるくらい体力を使い果たした、と二人はインタビューに答えている)
彼はストーキング行為で木島の生活の全てをメモしていた。
朝、昼、夜、何を食べたか。
それを読み上げた後にいうセリフがすごい
「君は本当になんとなく生きている」
「君は、本当になんとなく、生きている」
「はじめからこの物語に君は関係がないんだ」
木島は掛かってきた電話に出てカラオケに行く、という。
健ちゃんは、ついに妻のメッセージを消去し、
毎日食べていた三連プリンを頭に乗せ、叩き潰す。
いかにも演劇の脚本だったものらしく、突然
役のフレームを超えて聞こえてくる
「なんとなく生きている」というセリフ。
では
「なんとなく」ではない生き方とはなにか?
それは堺雅人さんが演じた健ちゃんのように
失ったものと向き合い、苦悩し続けた意味のないような日々、
それが「なんとなくではない」生き方なのだろう。
と私は考えた。
あの悲痛な役柄を完全に演じ切った堺雅人さんの鬼気迫るものが
画面から伝わる。
堺さん曰く「トランス状態」に入っていたので自分の顔を映像で見たときに、予想のしていない表情になっていた、という。
逆に言うと演技を常に支配仕切っている、ということになるのがすごい。
綾野剛さんが木島の友人として演じているが
殴るシーンで強くやりすぎて一瞬「落ちている(気を失っている)」らしい。
サカイスト度 判定不可(映像をたくさん見返していくとサカイストを計る指標として堺さんに対してキュンとしてしまう度合いなのではないか、と憶測される)
メッセージ性★★★★★
狂気 ★★★★★
(あまりにとっつきにくい。早く警察に突き出せよ、とイライラするほど敵役が憎い)
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ダメ沢直樹でした(*'▽')
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