【第37回東京国際映画祭 黒澤明賞受賞者】フー・ティエンユー監督インタビュー
Summary
黒澤明監督の業績を長く後世に伝え、新たな才能を世に送り出していきたいとの願いから、世界の映画界に貢献した映画人、そして映画界の未来を託していきたい映画人に贈られる東京国際映画祭の黒澤明賞。
受賞者であるフー・ティエンユー監督に、受賞の思いや、台湾映画市場について、監督最新作の『本日公休』について聞いた。(取材・文:U子、IKA )
U子:フー監督、改めて黒澤明賞受賞おめでとうございます。受賞にあたり、率直な感想をお聞かせください。
フー監督:大変光栄です。今もまだ少し信じられないのですが、黒澤明賞というとても大きな賞をいただけるということは、私の映画に対して高い評価をいただけたということなので、この知らせを初めて聞いた時「まさか冗談でしょ?」と思いました。それくらい驚いたのですが、今回このような賞をいただけたということで映画監督としての人生の中でとても自信を持てるようなことであり、大変ありがたく思っています。
IKA:日本での『本日公休』上映にあたり、公開当時の心境をお聞かせください。
フー監督:海外で台湾映画が上映される機会があまりなく、台湾の映画が日本で公開されるということ自体とても嬉しく思っています。日本の観客の皆さんが私の映画を観てくれて、どのような感想を持っていただけるか、どれだけ台湾人の気持ちに沿って観ていただけるかと、とても期待していたのですが、私の期待以上のとても良い反応をたくさんいただくことができ、良かったです。舞台挨拶では、既に5回観てくれていた方もいて、私の描きたいものが通じたんだなと感じ、とても嬉しく思っています。
IKA:『本日公休』を鑑賞させていただき、時系列の描き方など脚本に大変魅力を感じました。作家でもある監督が脚本を書くうえで重視していることをお聞かせください。
フー監督:私は、最初作家として、小説を書くことから入り、そこから脚本を書くようになりました。そのためスタッフには、私の脚本を読むと、よく小説を読んでいるみたいだと言われていました。この小説と脚本における共通点は少なからずあると感じていて、作家の経験を活かせていると感じています。小説と脚本の相違点としては、小説では人物の心理描写を文字で表現できることに対して、映画の脚本では、心理描写を文字だけでは表現できず、どのように表現するかという点が大きく異なる点です。この心理描写を、映画言語を用いてどのように表現するかといった点を重視しています。
IKA:台湾映画市場では多くの女性監督が活躍しているとお聞きしましたが、監督から見る現在の台湾映画市場についてお聞かせください。
フー監督:台湾女性の映画界での活躍ですが、監督だけでなく、プロデューサーや、カメラマン、照明など映画業界で働く女性が増えており、既に台湾映画業界の半分ほどは女性が支えているような印象です。そのため私は、働いている中で女性だから難しいと感じることもないです。
台湾でも世界の映画市場と同様に、家で映画を観る人が増え、映画館に足を運んでくれる観客がますます少なくなっています。私はこの状況に対して、1人でも多くの観客が映画館に来てくれるように、頑張らないといけないと思っていますし、映画館という空間で、みんなが一緒に笑ったり泣いたりできることは、映画館の大きな魅力と感じているので、映画館に足を運んでもらえるような努力を続けていきたいと思っています。
IKA:海外映画祭での受賞を受け、今後海外へ向けた展望などがあれば、お聞かせください。
フー監督:特に海外を目指して作品を作っていくのではなく、今は自然な形で自分の作りたい作品に挑戦していきたいと考えています。常に自分が思い描いていたものよりも、もっといいものに出会いたいと思っていますし、もっといいものを作りたいと思っています。
IKA:全国で絶賛上映中の『本日公休』の魅力・観てほしいポイントを教えてください。
フー監督:『本日公休』は本当に台湾らしい映画だと思っています。台湾人の日常生活を映し出し、お互いに助け合って生活していくような、とても暖かく親しみを感じられる作品です。このような人間としての温かみや、親しさといったことは世界共通であり、誰が見ても感じていただけるような部分だと思いますので、是非ご覧ください。
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フー・ティエンユー監督最新作である『本日公休』全国にて絶賛上映中!(2024/11/5時点)
『本日公休』
監督・脚本:フー・ティエンユー
出演:ルー・シャオフェン、フー・モンボー、ファン・ジーヨウ、リン・ボーホン、
チェン・ボーリン
公式サイト:https://www.zaziefilms.com/dayoff/