DISCASレビュー

カッツ
2026/01/05 07:34

雪之丞変化

1963年公開の『雪之丞変化』は、長谷川一夫、山本富士子、若尾文子、市川雷蔵、勝新太郎、船越英二と、大映を代表する豪華キャストが勢ぞろいした作品である。本作は長谷川一夫の映画出演300本目にあたり、当時すでに50歳を超えていた彼が女形を演じている。ややふくよかになった体つきや二重顎が目立ち、女形としては無理があるようにも見えるが、それでも長谷川一夫の存在感は圧倒的だった。

近年、映画『国宝』で歌舞伎の美が再評価されているが、『雪之丞変化』はまさに“全編が歌舞伎”といえるほど、舞台的な美しさに満ちている。歌舞伎の花形女形・中村雪之丞の仇討ちを描く復讐劇であり、物語の運びも華やかで、映像全体に大映ならではの美意識が貫かれている。

舞台をそのまま映像化したかのような照明や構図は、通常の映画とは異なる独特の芸術性を生み出している。特に山本富士子と若尾文子の撮られ方は見事で、二人の美しさが最大限に引き出されていた。また、当時の大映における俳優の序列も垣間見え、長谷川一夫に続く新時代のスターとして市川雷蔵を位置づける意図が感じられる。

物語自体もよくできており、歌舞伎的な美と映画的な娯楽性が見事に融合した一本だと改めて感じた。もっと評価されてよい作品である。

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