タリバンからのアフガン脱出劇!ガイ・リッチー監督の新境地!『コヴェナント/約束の救出』
■コヴェナント/約束の救出
〈作品データ〉
『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』や『スナッチ』、『コードネームU.N.C.L.E.』など数々のスタイリッシュでハードボイルドを手掛けるガイ・リッチー監督最新作は実話ベースのアメリカ兵とアフガニスタン現地通訳による戦場スリラー&サバイバルアクション映画!アフガニスタンに駐留するアメリカ軍のキンリー曹長は新たな現地通訳としてアーメッドと出会う。ある任務でキンリーが瀕死の重症を負った際、アーメッドはキンリーを助けるために何日もかけて山道からアメリカ軍の基地へ向かうことに。主人公のキンリー曹長役をジェイク・ギレンホールが演じ、他ダール・サリム、アントニー・スター、アレクサンダー・ルドウィグ、ボビー・スコフィールド、エミリー・ビーチャム、ジョニー・リー・ミラーが出演。
・2月23日(金・祝)よりTOHOシネマズ日比谷他全国ロードショー
・上映時間:122分
・配給:キノフィルムズ
【スタッフ】
監督・脚本・製作:ガイ・リッチー/脚本・製作:アイヴァン・アトキンソン/脚本:マーン・デイヴィス
【キャスト】
ジェイク・ギレンホール、ダール・サリム、アントニー・スター、アレクサンダー・ルドウィグ、ボビー・スコフィールド、エミリー・ビーチャム、ジョニー・リー・ミラー
原題:Guy Ritchie's The Covenant/製作国:アメリカ、スペイン、イギリス/製作年:2022年
公式HP:https://www.grtc-movie.jp/
〈『コヴェナント/約束の救出』レビュー〉
20年以上前の傑作『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』や『スナッチ』だけでなく、近年も『ジェントルメン』や『キャッシュトラック』といった秀作や傑作を作りながら、前作『オペレーション・フォーチュン』が今ひとつだったガイ・リッチー監督作品『コヴェナント/約束の救出』。これまでのスタイリッシュでシニカルな笑いがあるハードボイルドとは打って変わって、アフガンの米軍基地とタリバンとの争いの中でのサバイバルで、『リダクテッド 真実の価値』や『ハート・ロッカー』、『ゼロ・ダーク・サーティ』、『アウトポスト』等の
現代の中東戦場社会派作品が好きならかなりオススメ!
主な構成はアフガニスタンでのアメリカ軍のキンリー曹長とアメリカ軍に雇われた現地通訳のアーメッドの出会いとアメリカ軍&アーメッドによるミッション、アーメッド主導でのキンリーとのタリバンだらけのアフガン脱出、その後のキンリーのアメリカでの生活、キンリー主導でのアーメッドとのタリバンだらけのアフガン脱出といった4部構成になっていて、この2度に渡るタリバンだらけのアフガン脱出劇が死と常に隣り合わせる緊迫感が凄まじい。自分等の敵は即殺害、焼き討ちをするタリバンがヤバいだけに、この二度の戦闘込みの決死の脱出劇が見ていてヒリヒリとする面白さがある。
また本作はガイ・リッチー監督作品でありながら、これまでの同監督の作品のテイストとは明らかに異なる。長編デビュー作にして代表作でもある『ロック、ストック&トゥー・スモーキング・バレルズ』しかり、『スナッチ』しかり、原作がある『コードネームU.N.C.L.E.』しかり、わりと新し目の『ジェントルメン』や『キャッシュトラック』もしかり。いままでのガイ・リッチー監督作品には男達のヤバい生態やミッションの中にニヒル且つシニカルな笑いがあった。が、『コヴェナント/約束の救出』にはこうしたニヒル且つシニカルな笑いさえ排除し、タリバンとの死闘、サバイバルや死地から生還したアメリカ兵のPTSDをガッツリと描いており、これまでのガイ・リッチー監督作品とは一線を画している。
本作はガイ・リッチー監督の過去作品とは別の、同種のアフガニスタンやイラク、IS国といった中東情勢を取り上げた社会派作品と並べると見えてくるものがある。それは例えば2021年に日本公開した『キル・チーム』や『アウトポスト』といったアフガニスタン紛争におけるアメリカ兵の映画の最新形態になり、2018年から約2年ぐらいの話で、2021年にアメリカ軍がアフガニスタンから完全撤退することを考えると終盤の局面の作品にあたる。
またもっと遡ると、湾岸戦争の様子を描いたサム・メンデス監督作品『ジャーヘッド』、イラク戦争の「マフムーディーヤ虐殺事件」を取り上げたブライアン・デ・パルマ監督作品『リダクテッド 真実の価値』、イラク戦争のアメリカ軍の危険物処理班を描いたキャスリン・ビグロー監督作品『ハート・ロッカー』の系譜の作品にも繋がり、こうした作品と並べても引けを取らない。偶然ながら『ジャーヘッド』の主演だったジェイク・ギレンホールが『コヴェナント/約束の救出』でも主演だったのは個人的に胸アツであり、感慨深い。