カッツ
2025/12/19 13:06
しとやかな獣
1962年/脚本:新藤兼人/主演:山岡久乃・伊藤雄之助
本作は、団地の一室を舞台に展開される密室劇であり、まるで舞台劇をそのまま映像化したかのような濃密さを持つ作品である。狭い空間に据えられたカメラの前で繰り広げられる人間模様は、観る者を強く引き込む。
検索すると若尾文子の名前が多く挙がるが、実際の出演シーンはそれほど多くない。しかし彼女の美しさと悪女ぶりは圧倒的で、主役級の存在感を放っている。まさに彼女の代表作のひとつといえるだろう。
元海軍中佐・前田時造(伊藤雄之助)は、戦後のどん底を経験した過去から「二度とその境遇に戻りたくない」という執念を抱き、子どもたちを操りながら他人の金を巻き上げ、狭い部屋で贅沢な暮らしを続けている。その空間に漂う緊張感と、登場人物たちの複雑な心理の交錯は、まさに“陣元劇”と呼ぶにふさわしい濃密さを備えている。
50年以上前、テレビの土曜映画劇場で初めて観たときの衝撃は今も忘れられない。改めてDVDで鑑賞しても、その力強さと静かな迫力は色褪せることなく、時代を越えて心に残る傑作であると感じた。
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