カッツ
2025/12/05 08:57
追想
『追想』は、第二次世界大戦下のフランスを舞台に、ロベール・アンリコ監督が手がけ、フィリップ・ノワレとロミー・シュナイダーが主演した作品である。
追想というタイトルは、他の映画にもあるので、フランス語タイトルの「古い銃」でよかったのではないかと思う。
前半では、戦時下にもかかわらず、フィリップ・ノワレ演じる外科医と、美しい妻ロミー・シュナイダーとの穏やかで幸せな家庭が描かれる。ロミー・シュナイダーの美しさには目を奪われ、「この夫にこの美人?」と思わず嫉妬してしまうほどだ。
やがて、ロミー・シュナイダーと子どもは田舎へ疎開するが、そこでドイツ軍に捕らえられ、子どもとともに惨殺されてしまう。この場面はあまりにも衝撃的で、胸が締めつけられる。夫であるフィリップ・ノワレは後にその事実を知り、深い悲しみの中で復讐を誓う。そして物語の終盤、彼がドイツ軍の将校を殺す場面は、静かな怒りと悲しみが凝縮された強烈な印象を残す。
前半の華麗で幸福に満ちたロミー・シュナイダーと、後半で悲劇に見舞われる彼女の姿との対比が、物語に深い哀しみと余韻を与えている。戦争がもたらす理不尽さと喪失の痛みを、静かに、しかし力強く描いた作品である。
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