DISCASレビュー

カッツ
2025/11/17 07:23

冷たい熱帯魚

『冷たい熱帯魚』(2010年)は、園子温監督による衝撃的な日本映画である。1993年に実際に起こった埼玉愛犬家連続殺人事件をベースにしており、主演は吹越満とでんでん。

とりわけ印象的だったのは、でんでんの演技だ。彼が演じる熱帯魚店の店主は、一見どこにでもいそうな親父だが、物語が進むにつれてその常識が崩れていく。「こんな人、いそうだな……でも、まさかここまでやるか?」と、観る者に不安と驚きを与える。

日本映画としては珍しく、殺人や死体の解体があまりにもあっさりと描かれており、グロテスクな描写に耐性のない人にはおすすめできない。しかし、気持ち悪さを感じながらも、なぜかもう一度観たくなってしまう不思議な魅力がある。人間の狂気と日常の境界が曖昧になるような、強烈な余韻を残す作品だった。

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