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2024/03/15 17:21

インタビュー『秦俊子』前篇

例年より早い春一番に、大量の花粉が飛来した2月-。
電車に揺られてたどり着いたのは、鷺沼駅前にあるお洒落な「cafe&bistro SUBURB」。
今回はストップモーションの映像制作を手掛ける秦俊子監督にお話を伺いました。

【HOT NEWS】
大阪コミコン2024に『パカリアン』ブースが登場!詳しくは以下インタビューをご覧ください。

鷺沼駅の目の前のカフェ『cafe&bistro SUBURB』。2023年11月にできたカフェで期間限定でオープンしたとのこと。店内の半分はテーブル席ですが、もう半分は靴を脱いで座れる小上がりのあるようなレイアウト。敢えてアウトドア感を演出したテーブルや装飾に加え、緑豊かな植物を壁沿いやエアプラントなどで演出されています。男性一人、より女子グループや主婦友にもってこいのカフェ。

秦俊子監督のプロフィール
アニメーション監督。アングル合同会社代表。
ストップモーションアニメをメインとした作品を数多く手掛ける。TVアニメでは『NHKみんなのうた』や『おかあさんといっしょ』などの映像を制作。オリジナルアニメ『パカリアン』はカートゥーンネットワークに進出し、北米で放送された。短編アニメ作品『映画の妖精 フィルとムー』(2017)『さまよう心臓』(2011)なども監督している。

パカリアン』ストーリー
アルパカにそっくりな容姿をした宇宙人調査員のロメロスは、地球に着陸する際に宇宙船が故障して不時着し、故郷の星との通信が途絶えてしまう。不時着した山の中では、奇妙なマスクをした人間が待ち構えていた…。シュールなホラーギャグ人形アニメ。


影響を受けた巨匠 岡本太郎


 ――制作の仕事に携わられている秦さんに、とても興味がある質問です。影響を受けた人、会えるなら誰に会いたいですか?

今の自分を形成するためのバイブルとも繋がるのですが、東京芸大に入るための浪人中くらいから影響を受けてたのが岡本太郎さんです。岡本太郎さんの本をたくさん読み、思想的な面で結構影響を受けてしまいました。「結婚なんかする必要ない」というようなことが書かれていて、その影響で結婚も遅れたなと思います。「幸せって何だろう?」ということも考えるようになりました。人って幸せを求めるのが当たり前のようなところがあると思うのですが、岡本太郎さんは「幸せなんか必要ないんだ」と言っているので。その影響で「幸せって何なんだろう、自分ってどうなりたいんだろう?」と考えて苦しんでいる時もありました。

ですが、作品作りに苦しんでる状況って確かに必要だなと思ったりもしました。“幸せ”という満たされた状況だけだと、多分それ以上にならない。ある意味成長を止めてしまうものでもあるのかな、必ずしも常に幸せを追い求める必要はないのかなと考えてます。若い時にそう思ってやってきたので、現状で満足できなくなったところもありますね。作ったものでも反省点がたくさん見えて、次はもっとこうしなきゃとか逆にそういうのを考えすぎて何もできなくなってしまうみたいな時もありますし。

カフェで話すレベルではないぐらい熱く語り合っていた2人。哲学のような、答えのないような話を真面目に語りながら、どんどん深い話に入っていく。制作側の人だけあって、考え方や想いのこだわりなどがとても強いが、聞けば聞くほど沼る話だ。インタビューを始めて30分も経たない内に、そんな熱い話が聞けるのはとても貴重だ。

ただ...子供が生まれてから、特にプライベートの幸せって必要だなと思いました。それまでは仕事だけでいい!とプライベートは犠牲にしてきたのですが、それだけでは成り立たない気がして。心が不安定になってしまうので。話は戻りますが、「会えるなら誰に会いたい?」という問いに対してはやはり岡本太郎さんですね。もうお亡くなりになられていますが、過去の偉人や思想的な面で影響をもたらす人って、直接会って話したら自分の人生に大きく影響するような気がします。

――前回インタビューしたすたみなさんは、「北野武さん大好き!だから会いたいけど会いたくない」と話されていました。ジレンマですね。

自分の中で崇めている人と会うと、思いもよらないマイナス面とか見えたり、何か崩れたりすることもあると思うんです。自分の中での理想がものすごく高くなってて、「え?こんなやばい人だったの?」とか。歴史上の偉人も実生活ではめちゃくちゃだったり、人間的にクズだったりもあると言いますし。それを考えると、理想のままでいたい!みたいなのがある気がします。


意識していなかったことに、“期限”が来た


――ありがとうございます。では、質問を変えて。今の悩みはありますか?

ずっと悩みだらけなんですが、やはり一番は育児と仕事の両立です。まだ子供も1歳なので、今まではプライベートを気にせず、仕事も好きな時間に好きなだけやってきましたが、今はもう半分以下ぐらいまで仕事の時間が減ってしまって。「自分は一生子供産まないんだろうな」と思って生きてきたのですが、数年前に状況が変わりまして。子宮の手術をして、子供が産めるかどうか分からないと医師に言われて、「産めないかもしれないんだ」と思った時にすごく考えるようになったんです。手術した疾患は今後また再発する可能性もあり、出産する場合は術後1〜2年間が良いと言われていました。それでも「妊娠できる確証は持てない」と言う言葉を聞いて、そこで自分の中に“期限”のような認識が生まれました。子供を持つことを最初から諦めてしまったら、後から後悔するかもしれないと思ったのです。結果的に運良く、妊娠・出産もできたので、本当に良かったと思いました。

子供が生まれてみたら、自分の脳が全て赤ちゃんに支配されました。興味の対象が全部赤ちゃんになると言いますか、脳みそで考える以前に身体自体がそういう風に変わっていったというか...考え方や根源的な部分が。自分のやりたいことや仕事で、赤ちゃんを犠牲にするのはなるべく避けたいなと考えるようになりました。しっかりと子供と接する時間っていうのは本当に大事にして、限られた時間で仕事を高速で終わらせる。今まで丸一日かけてやってた仕事を、その半分以下で終わらせるために急いで働くようになりました。いかに効率的に早く動いて、パフォーマンスを下げることなく、しっかりと仕事を完成させるためにはどうすべきか考え、以前より集中力が高まりました。なので働きながら子供を育ててる人は本当にすごいなと思います。そういう方々を見ていると、仕事の上でも皆さんとても動きが速いです。


大変な時にこそ、上手くいく


――そんな子育てと仕事の両立でいっぱいかと思いますが、リフレッシュしたい時は何をしますか?

寝ることですね。夜泣きなどであまり寝れないので。リフレッシュできる時間があるなら、なるべくなら寝たいです。寝ないと頭も働かないですし、免疫も落ちて、子供が保育園から貰ってくる風邪などもひきやすくなってしまうので。

――身体が資本ですからね。ちなみに今、言える範囲で制作準備中の作品はありますか?

現在進行形ですが、4月からとあるグッズ販売なども予定しています。
『パカリアン』も作りたいと思っています。大阪コミコン2024に出展できるチャンスに恵まれたので、是非作っていきたいなと思ってます。斎藤工さんも協力してくださって、ProTribe(コミコン関係者)さんも一緒に動いてくれて。『パカリアン』は今後オンラインでグッズ販売していく予定です。「コミコンには来れなかったけど、グッズは欲しい!」という声もいただいたので、そういう方に是非買っていただけると嬉しいなと思ってます。

最も似合う言葉は”シュール”。アルパカが仁王立ちしていること、コートを着ていることも不思議ではあるが、何とも愛らしい表情を醸し出している。このデザインからはとてもポップでゆるキャラ感もあるのだが、『パカリアン』の内容自体は”ホラーギャグ人形アニメ”。そんなジャンルは今まで聞いたことがないが、そのギャップ感にとても気になる。

――会場で鑑賞しないと貰えない”限定シール”もありましたからね。映画の祭典コミコンが新しい枠を取り入れてくれることはとても嬉しいです。今まさに大変な時期かもしれませんが、頑張ってるからこそ結果がついてきているのが目に見えて分かりますね。

大変な状況の中でも頑張れるモチベーションや原動力は必要ですね。子供が生まれてから『NHKおかあさんといっしょ』の『むしむしフェスティバル』を作ってた時が一番大変でした。保育園に入りたてで早速風邪をもらってしまい、気管支炎になって一か月ぐらい保育園に行けなくなってしまって。でも『むしむしフェスティバル』は納品しなきゃいけない。放送日が決まってるから作らなきゃいけないという、かなり窮地に追い込まれて、日中は看病して夜中は仕事をしてました。夜中も息子が咳き込んで夜泣き対応でほとんど寝れない中で、コマ撮りの撮影もしなきゃいけないみたいな。夫も仕事が忙しい中、分担して手伝ってもらいましたが本当記憶がないぐらい大変でした。

その時に何のために自分は今作ってるんだろうとか、なんか色々考えてしまって。でもやりたいからやってるんだ!という気持ちで、自分の息子、他の子供たち、日本の全国の子供たちが喜んでくれるというのがモチベーションです。沢山の子供たちが作品を見て、楽しめるんだったらこれは作る価値があるんだと思って制作していました。


2024年大阪コミコンにも出展決定!!


東京コミコン2023でも出展したオリジナルアニメ『パカリアン』のブースが、大阪コミコン2024でも出展決定となりました。

U-nextでも配信中の『パカリアン』はこれまでショートショートフィルムフェスティバル&アジア2017では話題賞を受賞し、ロンドンのDiscover Film Awardsではベストアニメーション賞を受賞しています。2018年には、カートゥーンネットワークでAdult Swim枠のコマーシャルブレイク映像『PACALIEN』を制作し、アメリカとカナダで放送されています。どちらも主人公の声優を斎藤工さんが担当。


斎藤工さんが大阪コミコン2024のアンバサダーに就任!


3月14日(木)情報解禁ほやほや!
大阪コミコン2024のアンバサダーに、斎藤工さんが就任いたしました!大阪コミコン2024開催期間中に現地参加を予定しており、アンバサダーとしてセレブを迎え入れ、ステージへの登壇も予定しているとのこと。

詳細はコチラ

そして、大阪コミコン2024のアンバサダー就任を受けて斎藤工さんからメッセージ映像も!

大阪コミコン2024 <詳細>


名称:大阪コミックコンベンション2024 (略称:大阪コミコン2024)
会期:2024年5月3日(金・祝)11:00~20:00
2024年5月4日(土) 10:00~20:00
2024年5月5日(日) 10:00~18:00 ※開催時間は変更となる可能性があります。
会場:インテックス大阪(〒559-0034 大阪市住之江区南港北1-5-102)
主催:株式会社東京コミックコンベンション、大阪コミックコンベンション実行委員会
イベント内容:
・国内外映画、コミックなどの最新情報公開
・企業出展(限定・先行商品の販売、グッズの展示など)
・実際に映画で使用されたプロップ(小道具)や、レアグッズの展示
・最新技術を使った様々なコンテンツの体験
・海外セレブ俳優との交流
・ステージでのライブやパフォーマンス
・コスプレイヤーとの交流、コンテスト
・漫画家やイラストレーターの作品展示や販売、「アーティストアレイ」


秦俊子さん(アニメーション監督)

【会社】
アングル合同会社

【後篇】
作品の根幹から、今後の展望について

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