大怪獣ヨンガリ
大怪獣ヨンガリ
1967年 韓国
スタッフ 監督:キム・ギドク 脚本:キム・ギドク、ソ・ユンソン 製作:チャ・テジン
音楽:チョン・チョングン 撮影:ピョン・インジ
キャスト オ・イェンイル、ナン・ジョウン、イ・クァンホ、イ・スンジェ、ムーン・カン ほか
韓国では宇宙飛行士ユ・ヨンの結婚式を祝うために家族が集まっていたが、当のユ・ヨンは中東某国の核実験を監視する任務のために呼び出されてしまう。この核実験が原因となり地震が発生するが、その震源地が韓国に向かって移動してくる。韓国政府は移動型地震の情報を秘匿するが、地震が黄海道で発生したことを受けて戒厳令を布告する。続いて板門店でも地震が発生するが、現地に居合わせた写真家が地面が割れる瞬間を撮影したところ、地中に巨大生物がいることが判明する。写真家は巨大生物から逃げ出すことに成功するが、直後に地震で車が押しつぶされてしまう。写真家は重傷を負いながらも当局者に写真を届け、直後に怪我が原因で死んでしまう。韓国政府は古い寓話に登場する地震に関わる怪物になぞらえて、巨大生物を「ヨンガリ」と命名した。

本作の特撮部分は東映の特撮技術者6人を招待して撮った。映画の中に登場するメカたちも全部61式戦車とF-104で自衛隊の装備だ(マーキングを韓国軍と交換)。スーツアクターはチョ・キョンミンが演じていて、スーツは『ガメラシリーズ』の八木正夫が監修し、韓国側が手掛けたキャラクターデザインを基に日本で製作された。海外配給は東映が担当したが、各国の宣伝ポスターに東映の社名が掲載されたことで「日本製作の怪獣映画」と誤解される事態が生じた。ドイツでは『ゴジラシリーズ』とは無関係にもかかわらず『GodzillasTodespranke』(ゴジラ 死の爪)というタイトルで上映されている。北米市場ではインターナショナル・ピクチャーズが権利を獲得し、1969年に『Yongary, Monster from the Deep』(ヨンガリ:地底からの怪獣)のタイトルで公開された。海外配給する際、韓国側のプロデューサーが経験不足から誤ってオリジナルのネガやサウンドを全て東映に送ってしまい、そのため東映が海外配給を手掛けることになったという。その結果、韓国のオリジナル版は消失したとみなされ、英語版が現存する唯一のバージョンとなった。映画史家スティーヴ・ライフルによると、公開当時の評価は「極めて高い評価」だったという。「都市や戦車、戦闘機などのミニチュアセットは精巧でリアルだった」として製作価値を高く評価し、映画を「韓国映画の救世主」とみなしている。日本怪獣映画ファンは必見の、日本初公開の大怪獣映画の隠れた傑作である。