透明人間(1954)
透明人間(1954)
1954年 東宝 劇場公開:1954年12月29日
スタッフ 監督:小田基義 製作:北猛夫 原案:別府啓 脚本:日高繁明 特技監督: 円谷英二
キャスト 河津清三郎、高田稔、土屋嘉男、植村謙二郎、三條美紀、近藤圭子、大友伸、恩田清二郎
沢村宗之助、藤原釜足、村上冬樹 ほか
銀座で透明人間が自動車に轢かれた。死体の持っていた手紙で、あと一名の透明人間が都内にいることが分った。新聞記者の小松は、目撃者として透明人間の取材に当った。ナイトクラブ黒船のボーイ長健は、歌手の美千代に野心を持っていたが、ピエロの南条に美千代は救われた。包帯で顔をかくした透明人間が現われ、競馬場、銀行等が次々と襲われた。警視庁は透明人間の捜査に全力をあげたが、手掛りはなかった。南条の住むアパートには盲目の少女まりが、お爺さんと住んでおり、南条はまりを可愛がっていた。芝浦の倉庫番をしていたお爺さんがある日透明人間に殺された。南条は、その夜小松に彼自身が特攻隊員として造られた透明人間であることを発見された。彼の潔白を信じる小松と南条は、黒船の支配人矢島と健が犯人であることを突きとめた。健に脅迫され麻薬の密売を強いられた美千代は、透明体の南条に救われた。ピエロ姿になった南条と美千代が公園にいる時、矢島と健が現われ、南条に手先きになることを要求したが拒まれ、南条を透明体にし、自動車の氾濫する中に投げ出した。

後の変身人間シリーズの原型となった特撮スリラー。
円谷は大映で「透明人間現わる」の特撮を手掛けている。その経験を活かし、本来の職場でつくりたかったのだろうか。オマージュと見られるシーンがいくつかあるし、透明人間の演出は今でも色褪せぬほどに高いクォリティーだと思う。透明にされた体は、死ぬまで元に戻らない。特攻兵器にされた南條の悲しみや苦しみは如何ばかりだったであろう。病気がちの母親に会おうにも、自分の姿を相手には見せられない。戦争のために文字通り己を抹消されてしまったのだ。戦争の非人道的な面を象徴しているようで、戦後間も無い1954年に製作されたからこその説得力と重みがある。もう二度と、南條のように苦しむ人間を生み出してはならない。反戦の強いメッセージに胸が締めつけられた。