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八月【夏】になれば思い出す~


角川映画第二弾「人間の証明」


公開は10月だったと思いますが、

この8月にガンガン、テレビスポットが放送されてました。

映画館の予告編でもガンガンと上映!^

©KADOKAWA

松田優作のナレーション「母さんのあの僕の帽子どうしたでしょうね~」

♫Mama Do you remember~と、このジョー山中の主題歌がこびりついてしまいました。

 

原作本には映画の割引券があり、映画のシナリオも文庫本で販売されてました。


秀逸な予告編


とにかくその予告編がよくできていました。

日本映画は助監督が予告編がつくるのが主でしたが、

CMディレクターに制作させて、コピーもたてて印象に残るものになってました。

テレビ、ラジオ、新聞、雑誌とあらゆるメディアのPRが凄くて、選挙運動のようでした~


本編はペラペラ・・・


ホテルニューオータニのエレベーター内で黒人男性が死亡します。

黒人はジョニー・ヘイワード、ニューヨーク在住。警察は犯人捜査に乗り出します。

その時、ホテルでは世界的ファッションデザイナー八杉恭子のファッションショーが開催されてました。この八杉恭子と殺された黒人に隠された過去が・・・

さらに殺人事件が起きるというミステリーです。

 

森村誠一の原作は戦後の日本を背景に、そこから這い上がって地位と名声を得た者が、消し難い過去と対面することとなり、殺人を犯す・・・そこにアメリカ社会の影も描写し、進駐軍に父を殺された過去を持つ刑事が捜査に乗り出す、そこに因縁の再会を絡ませ捜査を進めていくというお話で、犯人の自白でしか逮捕できない局面に挑み、人間の良心に賭けるという展開です。

©KADOKAWA

本編は残念ながら原作をダイジェストにしたような仕上りなってしまいました。

ミステリー色が雑で意外や「母もの」と、泣きのテイストになっております。

 

大量に投下された俳優陣ですが、ほんのチョイ出演で次々と登場し消えていきます。

范文雀 が夜道、ひき逃げ事故にあい死亡。その夫、長門裕之と愛人の夏八木勲のふたりが犯人捜しをするくだりがあり、本命の犯人にたどりつく重要な役割なのですが、この扱いが薄くて途中でフェイドアウトって感じに。

范文雀を撥ねたのが岩城滉一で、この母、岡田茉莉子が本作の★になるのです。

しかし岩城滉一、撮影中に麻薬所持で逮捕されます。主題歌を歌い、殺された黒人男性も演じているジョー山中も同罪で捕まってしまいました。

現在なら上映不可になるところですが、そんなの関係ない~

因みに岩城滉一は高倉健初の連続ドラマ「あにき」も出演するはずだったのですが、

タイトルから2回目以降、消えてました。出てたのかどうかわかりませんけど・・・

それで岩城滉一パートが撮れなくなったとか、声は吹き替えだったとか。

 

もうひとりの主人公、棟居刑事を演じるのは松田優作で、このひとも傷害事件明けで復帰したころです。復帰第一作が「暴力教室」って、こんなのでいいの?

棟居刑事役は渡哲也と言われていたのですが、松田優作なってびっくりでした。

棟居刑事は戦災孤児なので、年齢的には不適合なのですが、再起復帰にかけた意気込みがある演技がひかってました。ムショから出て来た男と、ムショへ行く男が出ている映画です。


見どころのニューヨークロケ


殺されたジョー山中演ずるジョニー・ヘイワードはニューヨークのハーレムあたりのヤバいとこに住んでいる設定で、東京より捜査の依頼を受けた刑事ケン・シュフタインをジョージ・ケネディが扮しています。角川はジェームズ・コバーンやロイ・シャイダーあたりにオファーしたところ、相手にされなかったようです。ジョージ・ケネディは熱心に取り組んでくれたようで、一番のギャラをもらっています。このニューヨーク・パートがなかなかの出来でした。

 

棟居刑事は戦後、進駐軍にレイプされかけた女性を助けに行ったお父さんが逆にリンチされて殺されて、アメリカ人を憎むという背景があります。その逃げた女性が八杉恭子・岡田茉莉子、その進駐軍のひとりがシュフタイン=ジョージ・ケネディだったとことをニューヨーク出張で知ります。原作では最後にこのことがわかります。

 

棟居刑事はシュフタインに銃口を向けるシーンがあるなど、その怒りを見せるシーンがあります。

棟居刑事が帰国するとき、シュフタインが空港で見送るシーン、ここの演出がイマイチで、実にサラッとしていたのが残念でした。

©KADOKAWA

ニューヨーク・パートは原作にはなく、棟居刑事がニューヨークへ行く設定もオリジナルです。棟居刑事の憎む対象と出会うというところミソです。脚本は公募によるもので、プロの松山善三の作品が採用されました。ここが大きな要素だと言われています。

 

本作は戦後の闇と傷跡をもった人間が現代で再会し、その憎しみ、悲しみを浄化するのが肝だと思います。本星である八杉恭子の過去、米軍兵士と、その間に生まれたこどもと別れなければならない悲しい過去が今では忌まわしい過去とであり、それを封印させるために罪を犯す・・・「砂の器」に通ずる内容です。原作はタイトルの「人間の証明」はジョニーが自分の子であることを認めない八杉恭子の良心に訴え、モチーフになった西條八十の詩集で訴える棟居刑事の取調べがクライマックスです。映画篇は八杉恭子の日本ファッション大賞受賞式で、棟居刑事より岩城滉一演ずる息子、恭平の死を知らされます。受賞スピーチで自分の罪を告白するー「人間の証明」を行います。

©KADOKAWA

ジョニーと恭子の再会シーンがカットバックされます。ニューオオタニ近くの公園でママとの再会に喜び勇んで抱き着くも、恭子の手にはナイフが。ジョニーは刺されたナイフを自身でさらに深く刺します。ママに裏切られたものの、そのママとの思い出である「麦わら帽子」を彷彿させるニューオオタニのネオンに導かれるのでした。

©KADOKAWA

ここで「砂の器」同様の回想シーンで観客を泣かそうとするのですが、どうでしょ?


姫田真佐久と大野雄二


佐藤純彌の演出はシャープながら、ストーリーをなぞっているだけでタメがない、人物描写が雑になってました。2時間少々に収めるため多様な登場人物、事件の処理に手間取ってしまったようです。

ここで抜群の働きをしたのが、姫田真佐久です。スポットCMで再三現れる麦わら帽子、南アルプスを背景にジョニーヘイワードにこども時代の映像。これが魅力的なのですが、このこども時代の映像は本編ではちょびっと、ポスターなどのメインビジュアルはこの子なのに・・・

姫田撮影監督のカメラワークはニューヨークでも遺憾なく発揮されていまして、そのクオリティの高さには感服いたします。そして映像を支える大野雄二のスコア。クライマックス、夜明けの太陽を背に霧積の渓谷で棟居刑事たちの前で犯行を自白する八杉恭子、ここにジョー山中の主題歌がかぶさります。ここがまた見事な仕上がりになっています。映画としては欠陥にあふれた出来なんですが、パート、パートでの映像と音楽が素晴らしい。もっと言うと予告編が一番よくできていたのでした。

 

制作費と宣伝費がイーブンという(合わせて約12億円以上)、これまでにない日本映画の作り方でした。

 


角川春樹の存在


角川春樹の映画界進出は自社の書籍の販売促進でした。映画化された原作は売れる、その音楽も売れる。当時の業界関係者はこぞって角川映画を批判しました。特に大島渚などは強烈に批判していました。一方、映画会社は逆に歓迎でどん底時代にあった邦画各社は角川に頼っていました。

角川映画はトライアンドエラーを繰り返し、アイドル映画、アニメへ路線変更しながら邦画界の風雲児として君臨してきました。しかし海外進出だけは失敗でした。

 

角川映画の足跡として

1邦画会社の水平連携化(日活のスタジオで撮影して東映配給で東宝の劇場で公開など)

2劇場公開作品の宣伝のため公開直前に、前作をテレビで放映(興行界との規定でテレビ放映は邦画は公開後2年後のところ、一年未満で放送した) 

3製作実行委員会形式の先駆けとなるJV

4劇場公開前にビデオ販売

5試写会をラジオ番組で中継

6映画宣伝のため雑誌の創刊やテレビ、ラジオ番組の提供

などが挙げられます。

特に2,3は今日の映画製作のデフォルトともいえます。

 

角川映画がなければ日本の映画産業はとっくに衰退していたかもしてません。

その後、映画ビジネスを支えているのはテレビ局だったり、商社など異業種の参入です。

 

 

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2 件の返信 (新着順)
lion
2025/11/23 01:26

スト~ハー ・・・ でしたよね。
当時、CMが大量過ぎて、母さんのあの僕の帽子・・・は、何度耳にしたでしょうね。
よく、ドリフでもパロディやってましたし。
人間の証明と、野生の証明の、証明2作品は 印象深いです。

カニさん バッジ画像
2025/08/12 09:50

すごいPRでしたねー
あんまりすごいんで僕も電車の中吊り広告をぺちりました(i hope もう時効)