アポカリプト
【新しい始まりを探す物語(R-15)】
(2006年・米・138分・カラー)
監督:メル・ギブソン
原題:APOCALYPTO
全編「マヤ語」を使った作品で、16世紀のユカタン半島が舞台。
冒頭のシーンは、森で暮らすある部族の集団の狩りのシーンで、獲物はバクだった。罠に掛かったバクをその場で解体し、仲間に分け与えているのは、部族の長フリント・スカイの息子ジャガー・パウ。
獲物の分配でジャガーがブランテッドという若者に嫌がらせをしているシーンが見ていて不快だった。
この時、他の部族がやって来て、自分たちは「新しい始まり」を探しに行く途中なので、ここを通過させてくれるようにと頼むのだった。
長のフリントは彼らに「怯え」の感情を見て、それが自分の村に伝染することを嫌い、彼らがさっさと行ってしまうことを望んだ。
彼らの怯えの理由は、翌日の早朝に分かることになる。
それは、侵略者たちの集団がやって来て、村に火をつけ、女たちに乱暴を働き、男たちは捕虜として捕らえられたのだ。
これらのシーンだけでも十分に残酷だったけれど、R-15に指定される程の残酷シーンは「マヤ帝国」の都に入ってからだった。
カスティーヨと呼ばれるピラミッドが建設中で、奴隷たちが石を削った粉にまみれて体中が真っ白になっているかと思えば、ジャガーたちはいきなり青い塗料で塗られて、祭壇のある神殿に連れて行かれる。(恐らく写真で見たことのある「戦死の神殿」だと思う。)
ジャガーたちは、生贄にされるようだ。ここは、画面を観るのも描写をするのも憚られるくらい残虐なので鑑賞の際には覚悟が必要かも。
マヤに来る前に、焼け落ちた村を通過したが、それは疫病が蔓延して焼かれたものらしい。そこには生き残った少女がいて、急に何かに憑かれたように予言めいた言葉を発した。
「暗黒の昼が来る。ジャガーを連れた男が泥沼から生き返る。男は愛する者のために傭兵たちを殺す。そして世界を終わらせる。その男は、今ここにいる。」
この少女の言葉は、その後次々に本当に起こるのだが、暗黒の昼というのは皆既日食のことだった。
目の前で仲間が生贄にされたが、ジャガーは皆既日食のお陰で命拾いした。しかし、次に彼ら(捕虜)を待っていたのは、彼らを野に放って狩るという残忍なゲームだった。
マヤ語あるいはユカテコ語にあまり違和感はなかったけれど、「マヤ文明」に対して自分が如何に無知であったかを思い知った。鑑賞後にWikipediaを調べてみたら、神殿での生贄の儀式の描写は真実で、生贄にされる者が青い塗料を塗られるのも本当のようだった。
ラストのシーンで海に現れた外国船はスペインのもので、あの後スペインの植民地になったようだ。
メル・ギブソン監督作品に『パッション(2004)』があるけれど、あれも本作と負けず劣らずの残酷シーンがあったことを思い出した。あの作品でもセリフに「アラム語」と「ラテン語」が使われ、吹替は一切制作されなかったらしい。メル・ギブソンの拘りなのだろう。
残酷描写は過激だったけれど、逃走&闘争劇におけるスピード感は見事だった。因みにこれは鑑賞後に知ったことだけれど、出演俳優は殆どが無名の役者だったようだ。
前述の少女の予言だが、その言葉が順番に実行されて行く。主人公の名前自体がジャガーだったり、「泥沼から生き返る」の部分では、泥まみれになった彼の眼だけが白くてジャガーに見えなくもなかった。
ジャガーは、彼の身重の妻と幼い息子を枯れた井戸のような場所に隠していたが、彼女たちの奮闘も見せ場の一つかもしれない。
※ご覧になる時は体調の良い時を選ぶこと。