警察署長ジェッシイ・ストーン 暗夜を渉る
【原作小説とは順番が違うみたい】
(2006年・米・89分)
監督:ロバート・ハーモン
原題:Jesse Stone: Night Passage
原作:ロバート・B・パーカー『ジェッシイ・ストーン・シリーズ』の第1作目
映画第1作目は『ストーン・コールド 影に潜む』だったが、小説のシリーズとしては4作目で、原作第1作目の本作が映画では第2作目となっている。
ジェッシイ・ストーンが、パラダイスの町で警察署長となった経緯が本作で分かった。
ここに来る前、ジェッシイ・ストーン(トム・セレック)はロサンゼルス市警の殺人課の刑事だった。妻の浮気が原因で離婚し、酒に溺れた彼はロス市警を追われたらしい。冒頭では、傷心の彼がマサチューセッツ州の町パラダイスで警察署長に応募するまでの道中が描かれていたが、やはり酒を手放すことが出来ず、面接の時もアルコールの匂いをプンプンさせていた。
彼は警察署長として採用されたが、前署長のルー(マイク・スター)は署員たちから愛される存在だったようだ。婦人警官のモリ―(ヴィオラ・デイヴィス)も若い警官のルーサー・シンプソン(コール・サダス)も最初はジェッシイに好意的ではなかった。
そして、ルーは退職の翌日、崖から車ごと落ちて死亡するのである。
パラダイスの町は小さな町なので、些細なことでもあっという間に町中に知れ渡ってしまう。新しい警察署長が二日酔いのまま面接を受けたことも、この町での最初の仕事で元夫婦の喧嘩の仲裁に入り、妻に暴力を振るう夫ジョー・ジェネスト(スティーヴン・ボールドウィン)の股間を蹴り上げたことも直ぐに広まった。この署長の行き過ぎた行動を聞きつけて、町の顧問弁護士アビー・タイラー(ポリー・シャノン)がジェッシイに釘を刺しに来る。
前作「陰に潜む」では、ジェッシイとアビーはかなり親しくなっていたのを見ているので、なるほど、二人の出会いはこんな感じだったのか…と思った。
先程の暴力夫のジョーは、町の行政委員長のヘイステイ(ソウル・ルビネック)と組んで悪事を働いていた。このことが前警察署長ルーの事故死と関連していたことが次第に明らかになっていく。
そのヘイステイの妻シシー(ステファニー・マーチ)がジェッシイの新しい家を斡旋したのであるが、この町の中ではすべてが暗黙の了解となっているのか、シシーと関係を持った中にジョーがいて、驚いたことに警官のシンプソンもそうだったのである。
さて、物語の核心は前署長ルーの事故が殺人であるということと、その殺害の理由にあった。最初からルーの事故の原因に疑問を持っていたジェッシイは、刑事としての勘を働かせ、シンプソンを相棒にヘイステイとジョーを追い詰めて行くのだった。
最初はジェッシイに対して冷たかったモリ―も、何故か「スーツ」と渾名を付けられたシンプソンも次第に態度を軟化させていった。誰のご機嫌も取ろうとしない代わりに決して嘘は言わないジェッシイを信頼できる人間と認めたのだろう。
因みに、ジェッシイがシンプソンに付けた渾名は「スーツケース」で、野球選手のシンプソンが移籍が多かったことに由来するらしい。
ジェッシイがロスから一緒に連れて来た犬のブーマーは癌に罹っており、医者から安楽死を提案される。この件に関しても辛いエピソードがあったが、ジェッシイの優しさが垣間見えた瞬間だったかもしれない。