「狼と踊る男」から学ぶ「異文化」交流方法

【2025-No.23】
~米国映画における先住民 Vol.1~
𝐍𝐚𝐭𝐢𝐯𝐞 𝐀𝐦𝐞𝐫𝐢𝐜𝐚𝐧𝐬 𝐢𝐧 𝐔.𝐒. 𝐅𝐢𝐥𝐦
(Cover photo: via IMDb)
ダンス・ウィズ・ウルブズ
アメリカ・イギリス 181分 1990年
かつて「ゴッドファーザー」でアカデミー主演男優賞にノミネートされたマーロン・ブランドはアメリカ先住民を不当に扱ってきたハリウッド映画産業に対する反発から授賞式へ出席しなかった。かねてよりアメリカ先住民の公民権運動などへ関わるマーロンの立場とすれば、白人に無理矢理土地を奪われた謂わば被害者の彼らが映画では野蛮で残忍な悪魔の如き存在で描かれることに我慢がならなかったのだろう。そんなマーロンがアメリカ先住民を大きく取り上げたこの「ダンス・ウィズ・ウルブズ」について自伝の結び部分で以下のように述べている(下部罫線内引用)
最近私はケビン・コスナー監督・主演の『ダンス・ウィズ・ウルブズ』を見たが、なぜか途中で泣き出してしまった。その答えは、スクリーンに映し出されたインディアンの若ものの姿にあった。そう、それは里帰りのような体験だった。というのも、ここ数年、私は自分のなかに子供のころから秘められていた、汚れなく純粋でまっすぐな部分を再発見していたからである。私は人生の振り出しに戻ったのだ。そしてあのとき、私は解き放たれた気分で泣いたのである。
"母が教えてくれた歌" マーロン・ブランド/ロバート・リンゼイ著 角川書店刊 1995年初版 483頁より抜粋
本作の特長は自ら望み西部開拓地に赴任した北軍中尉ジョン・ダンバーが先住民側の視点で物語っていく点にある。彼が敬意を持って先住民と交流し、言語の習得を始め積極的に異文化を吸収しようとする姿勢はこうしたコミュニケーションの模範例と云えよう。全てが映画みたいに上手く運ぶとは思わないが懐の深さを窺わすダンバーのアプローチは参考になる
自然の摂理に対して謙虚に、そして部族の誇りとファミリーを大切にする先住民の生き方はシンプルながらも重厚で、今やそれは文明の発達と共に多くの人間が過去に忘れ去ったものだけに尚更「尊さ」を感じさせる。フィルム全体を占めるこれら真摯でひたむきな雰囲気こそマーロンのみならず数多の観客たちに「ダンス・ウィズ・ウルブズ」が感動を与えた一番の理由なのではないか
原作者脚色兼任のため起承転結明確且つ挿話の挟み方も適切で尺の長さが全く気にならず。起伏に富むストーリーと広大な情景のロングショットにジョン・バリー担う勇壮なスコアが重なった誠に映画らしい映画。鑑賞後「良い作品を観た」と率直に思えるようなマスターピースだ
出番少ないものの強い印象を残す狼のツーソックス(脚の模様が靴下を履いているみたいに見える)は配役にも名を連ねていた。どうやら二匹の狼が彼or彼女を演じていたらしい。動物プロダクションに狼が在籍するとは些か驚いたがなかなかの俳優ぶりだった
★★★★★★★★★☆
1991年度アカデミー賞(作品賞、監督賞、脚色賞、撮影賞、編集賞、録音賞、作曲賞)受賞
原題 Dances with Wolves
監督 ケビン・コスナー
脚本 マイケル・ブレイク
撮影 ディーン・セムラー
編集 ニール・トラビス
音楽 ジョン・バリー
出演 ケビン・コスナー, メアリー・マクドネル
劇場公開日 1990.11.09 (米)/ 1991.05.18 (日本)

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"ラスト・オブ・モヒカン"(1992)

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投稿を表示ジョン・バリーが手掛けた音楽と映画が完璧に融合していますね。映画館のスクリーンで絶対に観たいです。