DISCASレビュー

カッツ
2025/11/10 07:25

ニューシネマパラダイス

 1988年公開のイタリア映画、ジュゼッペ・トルナトーレ監督による、映画と人生をめぐる珠玉のドラマである。物語は、中年を迎えた映画監督サルヴァトーレ(愛称トト)が、故郷シチリアの訃報を受けて帰郷し、少年時代の記憶を回想するところから始まる。

終戦後のシチリア島の僻村。唯一の娯楽施設である映画館「パラダイス座」で、少年トトは映写技師アルフレードと出会う。彼はトトに映画の魅力と人生の知恵を教え、父親のような存在となっていく。やがて青年となったトトは、恋と別れを経験し、アルフレードの助言に従って村を離れ、映画監督として成功を収める。

映画館を中心に描かれる人々の営み、笑いと涙、そして時代の移り変わりが、ノスタルジックな映像美とともに胸に迫る。特に、アルフレードとの絆は、映画を通じて育まれた“人生の師弟関係”として、観る者の心に深く残る。

エンニオ・モリコーネによるテーマ音楽は、切なくも美しい旋律で物語を包み込み、記憶と感情を優しく呼び起こす。ラストシーンで流れる“検閲で切り取られたキスシーンのモンタージュ”は、映画への愛とアルフレードの想いが凝縮された名場面であり、涙なしには観られない。

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