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DISCASレビュー

飛べない魔女
2024/12/09 20:45

懸命に生きるろうあ者夫婦の物語 =名もなく貧しく美しく=

🎬名もなく貧しく美しく🎬

(1961年 日本 129分)

監督:松山善三

出演:高峰秀子小林桂樹加山雄三草笛光子沼田曜一荒木道子根岸明美

あらすじ(DISCASより)

耳が不自由な男女の出会い、結婚、子育てを描いた感動ドラマ。聾学校の同窓会で出会った秋子と道夫は、順調な交際を経て結婚。やがて元気な赤ん坊を授かることになるが…。『人間の條件』など多くの脚本を手掛けた松山善三の監督デビュー作。

60年以上前の作品ですが、これは一度は見て頂きたいです。

太平洋戦争の末期から戦後の時代に、ろうあ者の夫婦が懸命に生きる姿を描いた秀作です。
3才のときに高熱で耳が聴こえなくなってしまった秋子(高峰秀子)。

枝豆を食べ過ぎて高熱を出したということですが、そんなことあるのでしょうか?

お寺に嫁ぐも女中扱い、間もなく夫は戦死。空襲で迷子になっていた幼子アキラを拾って家に帰ると、そんな汚い子を拾ってきてどういうつもりだ、と姑たちに叱られる。お寺の坊主なのに、慈悲の心もないんかい!まあ、生きていくのが精一杯の時代だから、心に余裕なんて無いのは仕方がないのかもしれません。秋子が買い出しに出ている間に、アキラを警察に連れていってしまう儀父母たち。そして、耳が聴こえないことを理由に邪険にされ、実家に帰された秋子。でもあのままあの家にいても、厄介者扱いだったから、優しい実母の元で暮らした方がいいに決まっています。
秋子の母親(原泉)がこれまた凄くいいのです。自分の娘だから当然かもしれないけれど、まるごと秋子を受け入れ何かと勇気付けてくれて、愛情がとても深い人です。
やがて秋子はやはり耳が聴こえない片山道夫(小林桂樹)と出会い二人は結婚。子供も出来ます。不肖の息子弘一(秋子の弟・沼田曜一)の借金のために家を失った母は秋子たちと暮らすことになります。母の支えもあって、秋子たちの息子の一郎はすくすくと育しますが、かなりやんちゃ坊主です。でもそれには訳があったのです。両親が聾唖者であることを回りから何かとからかわれ、いじめられていたので、一郎はいじめっこに立ち向かっていくためにやんちゃをしていたのです。
とにかく懸命に生きる夫婦。自分たちは普通の人とは違うのだから、何十倍も努力しなければならないといって、道夫は朝から晩まで休むことなく働き、秋子はミシンの仕事を請負い、母は母で近所の洗濯の仕事を手伝います。働いても働いても暮らし向きは豊にはなりませんが、それでも自分たちはこうして一緒にいられてご飯を食べている、貧しくてもとても幸せだと言う秋子です。
日曜日には家族皆で動物園に行こうと約束します。そんなささやかな事がこの上なく幸福な事だと秋子は言うのです。それはそれは、穏やかな表情で語る秋子は天使のようだと思いました。

===ここから少しネタバレ==
それなのに、ああ、何て事でしょう!
大人になったアキラが秋子を訪ねてきたばっかりに、運命の歯車が狂ってしまうとは!
意地悪な脚本には正直腹が立ちました。絶対にハッピーエンドにして欲しかったのに。。。美しく清楚な高峰秀子がとても良かったです。
秋子の姉の役で高峰秀子より9歳年下(当時28歳)の草笛光子が出ていましたが、十分姉に見える貫禄でした。草笛さんは90歳を過ぎた今も現役でご活躍されていて、素晴らしい俳優さんですよね。

本作も配信サイトでは配信されておりません(たぶん)ので、DISCASでレンタルして観て下さいませ(#^^#)


そしてなんと本作には続編があるのです。

続・名もなく貧しく美しく 父と子』道夫と一郎のその後の物語のようなのですが、残念ながらDISCASでは見つけられませんでした。(道夫は小林桂樹が続投し、成長した一郎の役を北大路欣也が演じています)

 

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1 件の返信 (新着順)
趣味は洋画
2024/12/10 22:12

今年6月にDISCASにご投稿された魔女さんのレビュー、拝読しております。
既にリストインしていますが、調整して早めに観てみようと思いました。

太字・大文字、色(黄色)付き、の
>60年以上前の作品ですが、これは一度は見て頂きたいです。
このお言葉が決め手になりました。


飛べない魔女
2024/12/11 12:17

コメントありがとうございます♪
はい、ぜひぜひ!これは見ておいて損のない名作です。