2024年に観た映画(28) 「トノバン 音楽家 加藤和彦とその時代」
“トノバン”こと加藤和彦さんについて、かつて彼と公私を共にした人達が語るエピソードを紡ぎながら、その人物像と音楽歴を改めて明らかにするドキュメンタリー。
関係者へのインタビューが大半を占める構成で、ろくにテロップもされないので「この人は誰だったっけ?」と思いながら、知らないおじさん連中(失礼、実はすごい人達)が延々加藤和彦さんについて語り続けるのを眺める事になる。拓郎さんとか松任谷正隆さんとか教授とか高橋幸宏さんとか、ビッグネームもちょいちょい登場する。
「帰って来たヨッパライ」がそこいら中で流れていた頃、私はまだ小学校の低学年。ミュージシャンというよりも作曲家としての印象の方が強いのだけれど、本作の予告を観て、昭和という時代を飄々と駆け抜ける彼のカッコよさに惹かれました。
ザ・フォーク・クルセダーズ → サディスティック・ミカ・バンド → ソロという歩みの中で、音楽に限らず時代のムーヴメントの半歩先を行っていたような彼の、その人となりはとても興味深い。彼に関する映像があまり残っていないのか、延々とインタビュー映像が続く事となりますが、それでも飽きはしなかった。
それもこれも、私自身が昭和世代だからだと思います。相原裕美監督もほぼ同年代。本作は監督が幸宏さんから「トノバンって、もう少し評価されても良いのじゃないかな?今だったら、僕も話すことが出来るけど」と言われたのが制作のきっかけだったと、パンフレットに記されていました。その幸宏さんも、作中に登場する教授も既に鬼籍に入ってしまった。昭和はいよいよ遠くなりにけり、です。彼にスポットを当てるタイミングとしても、もはや後がない時期だったのだと思います。
加藤和彦という“逸材”が残した昭和の名曲「あの素晴しい愛をもう一度」の再現で締め括られる本作。音楽関係者の誰もに一目置かれ、そして愛された人だからこその、「昭和のイカした大人評伝」的ドキュメンタリーでした。
№28
日付:2024/7/9
タイトル:トノバン 音楽家 加藤和彦とその時代
監督:相原裕美
劇場名:小田原コロナシネマワールド SCREEN6
パンフレット:あり(¥1,000)
評価:5.5
再評価とか次世代に伝えたいとかいうのであれば、もうちょっとトノバンの軌跡やフィルモグラフィーといった情報をしっかり載せて充実させて欲しかった。
<CONTENTS>
・トノバン伝説を象徴するキーワード
・プロフィール
・キャスト
・インタビュー 坂崎幸之助
・監督メッセージ
・監督プロフィール
・座談会(高中正義 クリス・トーマス 新田和長)
・クレジット