DISCASレビュー

カッツ
2025/11/17 07:27

時計仕掛けのオレンジ

1971年公開、スタンリー・キューブリック監督による『時計じかけのオレンジ』は、暴力やセックスといった欲望の奔放さと、国家による管理・矯正の冷酷さを対比させながら、人間の自由意志と道徳の本質を問いかける問題作である。

学生時代に初めてこの映画を観たとき、あの名匠キューブリックが、こんなにも過激でやりたい放題の性暴力描写を手がけたのかと愕然とした。前半は、主人公アレックスが仲間とともに繰り広げる“超暴力”の数々が、スタイリッシュな映像とクラシック音楽に乗せて描かれ、不快感と美的衝撃が同時に押し寄せてくる

しかし、後半になると物語は一転し、国家による“更生プログラム”によってアレックスの人格が強制的に矯正されていく。暴力を否定するために人間性を奪うという矛盾が、息苦しいほどの抑圧として描かれ、観る者に倫理的な葛藤を突きつける

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