【ボストン1947】カン・ジェギュ監督インタビュー後篇 / 「マラソン映画への想い」
Summary
1947年、ボストンマラソン。ベルリンで止まった時間を動かすために、命がけのレースに挑む選手たちをゴールで待つものとは?
『シュリ』『ブラザーフッド』の韓国の名匠カン・ジェギュ監督に、本作での思い入れのあるシーンや、今後の展望を聞いた。(取材・文:IKA )
IKA:俳優さんが「走る」演技がリアルで印象的だったのですが、本作で最もこだわった、また思い入れのあるシーンを教えていただけますでしょうか。
カン:本作の最後に出てくるボストンマラソン大会での約20分近くのマラソンシーンはやはり、自分自身が1番力を入れて撮影したシーンです。マラソンの映画ですから、この作品をスタートする段階からこの映画はマラソンのシーンがちゃんと成功するか否かによって、作品自体の成功も左右されるであろうという風に思っていました。そのため、役者さんにも本当のマラソンランナーに見えるよう演技指導は行っていました。そして、役者さんたちも、「走る」シーンの重要性に関して、しっかりと理解してくれ、演技をしてくれました。
IKA:ソン・ギジョンさんは、韓国のなかで、どのような人物として記憶されている人なのでしょうか。また、本作において、ソン・ギジョン役のハ・ジョンウさんとソ・ユンボク役のイム・シワンさんのダブル主人公のように感じたのですが、マラソンシーン以外に監督が描きたかったことはどのようなことでしょうか。
カン:ソン・ギジョンさんという人物について、劇中でも語られていたように、韓国の三大英雄のうちの1人として知られています。しかし、現在の10代、20代の人はあまり知らない人も多くいます。そのため、本作を通して歴史上にこういう大切な人物がいたということを、若い人たちにもぜひ知ってほしいという想いがありました。
私は主人公を1人にするのではなく、それぞれ魅力的な人物3人を表現したいと思っていました。1人は実際に1位になった人、そしてもう1人はヒーローになりたい人、もう1人は、いつもヒーローの陰に隠れている人。この三人の登場人物に焦点をあてようと思っていました。ナム・スンニョン役が重要な役であると感じ、この人のストーリーをしっかりと描くことで、映画を見る人に、ソン・ギジョンだけの映画ではないと感じてほしいと願っていました。これによって、映画を観る人がそれぞれの登場人物に感情移入してほしいと思っていました。
IKA:本作における事実と創作の割合はどのくらいでしょうか。
カン:事実に基づくものを映画化する時は、いつもどこまで事実を描いて、どこまで創作部分にするかということは、本当にセンシティブな部分でもあり、いつも悩ましい部分であります。どうしても作品を作るにあたっては、創作の部分を入れずにはいられないので、もちろん創作の部分も入っています。例えば、人物のキャラクターを際立たせるための表現や、ソ・ユンボクのお母さんが亡くなった時期などです。細かい部分もあり、何%が事実であると言い切るのは難しいですが、おおよそ80%は事実に基づき製作しました。
IKA:今後監督が撮ってみたい作品や、ジャンルを教えてください。
カン:今まで、私は1940年代から1950年代ぐらいの作品を何本か撮ってきたので、「なぜ君は昔の話ばっかり作るのか」という風に言われることもあります。だからというわけでは決してないのですが、私もそろそろ少し方向転換が必要なのかなということを考えたりもしています。かといって、今まで私が作ってきた作品と全く別のジャンルということにはならないと思うのですが、ストーリーや、映画的な文法というものを少し変えてみてもいいのかなという思いはあります。そのため、現在どのような新しいジャンル、ストーリー、アプローチ方法があるのか模索しながら次回作について考えています。
2024年8月30日(金)より、新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国ロードショー!
『ボストン1947』
監督・脚本:カン・ジェギュ
出演:ハ・ジョンウ、イム・シワン、ペ・ソンウ、キム・サンホ、パク・ウンビン
公式サイト:https://1947boston.jp/
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