カッツ
2025/10/26 08:20
雁の寺
水上勉原作の『雁の寺』は、映画『白蛇抄』と通じる世界観を持つ作品である。タイトルの「雁の寺」とは、雁の襖絵が飾られた寺を指し、物語の舞台となる。
物語は、欲望に溺れる和尚と、その妾である若尾文子演じる女性、そして住み込みの若い修行僧との奇妙な三角関係を描く。冒頭、汲み取り作業の場面から始まるが、臭気まで感じられるような生々しさがあり、物語の土俗的なリアリティを象徴している。
若尾文子の妖艶な存在感は圧倒的で、彼女の色気が物語全体に不穏な熱を帯びさせている。欲望、信仰、嫉妬が交錯する中で、人間の業が静かに、しかし濃密に描かれていく。
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