ドス黒い黄金のセリフカルタ!『金環蝕』セリフカルタ
こんにちは、じょ〜い小川です。
「Discover us」に登録してまだ1ヶ月ですが、
すでに90を超える投稿と言った具合いで、諸先輩方・運営者様達からさぞヤベェ奴認定をされてることでしょうが、
実はここ最近、投稿のペースがガクンと落ちたんだけど、別に仕事が忙しいとか熱中症になったわけでもない。
実は、「やっぱりDISCAS」に山本薩夫監督作品『不毛地帯』を投稿した後、同じ山本薩夫監督作品『金環蝕』も見たくなってU-NEXTで見て、当然考察を書きたくなるんだけど、今ひとつまとまらなくて、何回も見たんですよ、2時間半超えの映画を。
すると、かなり名言が多い映画であることに気がついてね。元々、お題「映画名セリフ」については『仁義なき戦い』シリーズの名言集をカルタ形式でやろうかと考えてて、既に用意中だったんだけど滞っていてね。そもそも『仁義なき戦い』名セリフとか書籍やTシャツ、その他グッズなど既に商品化さえされている。つまり、今更取り上げるまでもなく、世間でも十分擦られている。
そこで、流石に『金環蝕』名言集を、それもカルタ形式でやった方はいないだろうと考え、やってみました。
■金環蝕
〈作品データ〉
昭和39年5月12日、第14回民政党大会で総裁選が行われた直後に、金融業を営む石原参吉の元に内閣官房の西尾貞一郎が訪れ、緊急で2億円の借り入れを申し出て、その際に内閣官房長官の星野康雄官房長官の名刺を差し出すが石原はその場では申し出を断る。その後、石原は部下や妾、懇意にしているマスコミに星野の身辺調査を依頼し、星野の周囲の情報を探る中で、電力開発株式会社の上層部が建設会社・竹田建設の専務と密会していることを知り、そこに星野官房長官の繫がりを睨むことに。金融王・石原参吉役を宇野重吉、星野官房長官役を仲代達矢が演じ、他三國連太郎、京マチ子、高橋悦史、西村晃、大滝秀治、神山繁、峰岸徹、前田武彦、中村玉緒らが出演。
・公開日:1975年9月6日
・上映時間:155分
・配給:東宝
『金環蝕』
ドス黒い金言集カルタ!
やってしまいましたよ(笑)。
おおよそは各セリフで触れていくけど、
要するに、電力会社・建設会社・政治家・官僚VS政財界のフィクサーで金融王の石原参吉&国会のお騒がせ名物議員&新進気鋭のマスコミによる熾烈な戦いなんだけど、
この映画は政治家と公社&民間による汚職の原理を映画を見ることで学ぶことが出来る。
何が凄いって、
ある決まりかけている物事を欲望のために強引に捻じ曲げようとする権力とそれに無理矢理応えようとする公社と民間会社ね。
それを暴こうとする者やそれをネタにゆする者がいるけど、さらにそれをその上を行く権力で捻じ伏せる。要は普通の映画ファンの感覚で言うと胸糞映画なんだろうけど、
だからこそ面白い。
もちろん、胸糞悪い面白さだけではない。パソコンどころか下手すれば電卓さえない時代で
情報を武器に汚職政治家や建設会社連合と戦っている。
そして、ほんの僅かな暴力シーンを除いて、基本的には談合だの賄賂、密談などのシーンだけでヤクザ映画なみの重さがある。ナレーションの入れ方とフォーンセクションを中心とした音楽もまた東映の実録路線作品っぽいが、明らかに東映実録路線の映画を参考に
昭和の政財界のかなり悪い話を描いている。
ということで、今回はレビューや考察ではないので、以下50音カルタ形式で『金環蝕』のドス黒い金言を見ていきます。
「あ」
・「あの通りの若さで、しかも色男と来たら、芸者どもが大騒ぎするのは無理もなかろうぜ。
長野県の名門中学から一高、帝大法科を首席で卒業、大蔵省に入る。当時大蔵大臣だった寺田に見込まれて秘書官となる。有名な外交官の娘を女房に。当選3回、内閣官房長官になる。
それに比べて、この俺なんざぁ、静岡の貧乏漁師の小倅で、ろくすっぽ中学にも行かず、この歳になるまで女房。フフッ。腕一本で金貸しを始めてから、反吐が出るほど泥水を飲んできた。
前科4犯。
星野の野郎なんざぁ、臭い飯の匂いも嗅いだことないだろ」
( 石原参吉/宇野重吉)
まず、初っ端からめちゃくちゃ長いセリフたが、これをまたじっくりとした語り口で宇野重吉が話す。これは前半のシーンで、石原が部下二人の報告を一通り聞いて、部下二人に星野官房長官の経歴と人となりを自らの経歴と比較しながら語る、そういうシーンである。全部が全部ではないが、この映画、主要キャラはだいたい長セリフがあり、そこが見せ場ともなる。
これを超ベテランの宇野重吉が基本はひょうひょうとしながらも、どこかドスが効いたセリフを吐き、その昭和の妖怪然とした佇まいがある。
「 い」
・「 いや、お腹立ちはご尤もですがね、あのー、星野っていう人には、ちょっと嫌味な所がありましてねぇ。用心深いっていうか、初対面の人には絶対に自分の腹を見せないんですよ」
( 朝倉節三:竹田建設専務/西村晃)
これも前半のシーンで、その直前で朝倉が懇意にしている電力開発の若松副総裁との電話での会話。若松は星野官房長官に会って来たが、けんもほろろに無碍にされ、成果なしで帰られてしまい、朝倉に怒りの電話をし、その返答がコレ。この西村晃の妖怪っぷりもこの映画の見どころの一つ。
・「いやあー、大変ですは。作業班の連中は何にも知らんのですからね。こっちが各班を回って、もっぱら水増しの一本槍ですよ」
(正岡:電力開発理事/高城淳一)
これは中盤のシーンで、いよいよ入札を前に電力開発が竹田建設入札のために山奥の温泉旅館に極秘裏に社員を集めて、入札額の算出をし、その監督役として正岡が旅館に泊まり、社員らをアシストしていた。その現状報告を上司の若松に連絡した時のセリフがこれ。アシストの際に、算出した額を「少ない」とダメ出しして、その理由をもっともらしく話す姿はそれなりの説得力がある。ちなみに、この電話を正岡はブランデーを飲みながら、若松は竹田建設の朝倉と一緒に妾を侍らせながらしているという、妖怪同士の電話らしい様子だった。
「う」
・「ウチの方でも早急に作業班を編成して、工事予定額の算出をやらにゃいかんな」
(松尾芳之助:電力開発後継総裁/内藤武敏)
これは中盤のシーンで、このあと上記の山奥の温泉旅館での合宿になる。この松尾後継総裁、一見、前任の財部と比べると存在感が薄いように思えたが、セリフ拾いをしてみると意外と名言が多く、改めて再評価した登場人物の一人である。強烈なワードが無くともセリフの一つ一つに重みがあり、存在感が増してきた。
「え」
・「えー、何ともうしましょうか。」
(平川光正:寺田派幹部=大平正芳がモデル/山本武)
これ、名言?って誰もが思うだろうが、これはモデルが後に内閣総理大臣になる大平正芳だからこそ生きてくる。この大平元総理、「 あー」とか「 うー」ばかり言うアーウー宰相として名を残す人。映画では入札が決まった後に星野が朝倉に平川を紹介した時に発した挨拶だが、これが大平元総理大臣のモノマネとしか思えない一コマになっていて、そこを知っていると味わいがあるシーンになる。
「お」
・「汚職だよキミ、おしょく」
( 石原参吉/宇野重吉)
これは前半で石原が日本政治新聞社社長の古垣と食べながら話している時に星野の名刺を見せながら話した時のセリフ。宇野重吉によるこの一言で、この作品のドス黒さがより強まる、そんな一言である。
「か」
・「官房長官だがねぇ、ありゃ、一体どういう人なんだ!?キミとのパイプはちゃんと通じてるのか?」
(若松圭吉:電力開発副総裁/神山繁)
これは前半で若松が星野と初めて会った後に竹田建設の朝倉からの電話で開口一番に発した怒りのセリフ。もう、絵に描いたような激おこぷんぷん丸っぷりから、星野との初対面の屈辱っぷりが伺える。その返しが「い」の欄の「 いや、お腹立ちは〜」に繋がる。この映画における若松=神山繁は『仁義なき戦い』シリーズの成田三樹夫が演じた村岡組の若頭といった感じで、電力開発のNo.2のポジション。
「き」
・「キミも役人生活は長かったはずだよね?ま、とっくに分かっているだろうがね、政治というものにはキミ、色々と裏があるんだ。仮にも政治家である以上はだ。いかに聖人君子と言えどもキミ、時に手を汚さなくちゃならんのだよ」
(大川吉太郎:通産大臣/北村和夫)
これは前半から中盤にさしかかる辺りのシーンで通産大臣の大川が財部総裁を諭しているシーンでのセリフ。財部としてはそれまでの青山組に入札をさせたかったが、それに対する「竹田建設にしろ!」という大臣からの圧力としてのセリフである。凄いよね、大臣からの汚職のススメというのが。そこには「分かっているだろ?」的な忖度促しのオーラがビンビンである。
「く」
・「腐ったリンゴは隣のリンゴを腐らせる。この30年間、ボクの経験をもって言えることは、我が国の上層部は腐敗・堕落をしていることたね。それも一通りの堕落じゃねぇんだよ。かく言う私も、青山組から大分頂いてますがね。フハハハハハハハ!」
(財部賢三:電力開発総裁/永井智雄)
これは中盤の重要なシーンで、財部が電力開発での会議や通産大臣、さらには総理夫人からの手紙など、様々な圧力によって、行きつけの旅館に古垣を呼びつけて泥酔しながら放ったセリフ。なんと、「金八先生」の「腐ったミカンの方程式」よりも4年も早く、しかもリンゴで腐った果物の方程式を話してる!さらにはサラッとボクも汚職をしてるよというカミングアウト付きで。男がやけ酒をした時の本音をボロボロ出す凄まじさたるや。
・「喰うか喰われるかの戦いですよ。私と石原のね。いつかは始末をつけねばならない男だった、あの石原参吉は。たまたまその役が、私に回ってきたという話なだけさ」
(星野康雄:官房長官/仲代達矢)
これは後半のシーンでのタクシー内で朝倉に放ったセリフ。直前に電話で石原から宣戦布告をされてのアンサーのセリフだけど、仲代達矢が「やれやれ」という感じで語る様子から決戦を覚悟というのも感じられる。
「け」
・「検討中と答えときゃいいでしょ。例え告訴されたって、裁判は1年以上かかるんです。問題はどんな障害があろうと、この工事を軌道に乗せようという、熱意なんですよ」
(財部賢三:電力開発総裁/永井智雄)
これは中盤手前の財部のセリフで、この段階では会議や大臣からの圧力に耐えながらもまだまだ熱意があったことが伺える。けど、よく考えてみるとその熱意もお抱えの青山組からのリベートがあるからで、それほど白くはないんだよね、この人は。
「こ」
・「香水は私、舶来なのよ」
吉千代(星野官房長官の女)
これは前半のシーンで、石原の部下が星野が所有する葉山の別荘に住む星野の彼女・吉千代の元に化粧品のセールスマンに扮して入り込んだ時の吉千代のセリフ。一見、名言でも何でもないが、この時、吉千代はベッドでマンガを読んでるんだけど、その読んでるマンガが藤子不二雄の「オバケのQ太郎」というのが妙にエモい。美人だけど暇を持て余していたからって、ファッション雑誌や小説ならまだしも、マンガを、しかも「オバQ」というセンスが絶妙にダサくていい。
しかも、香水は舶来と言いながら偽化粧品セールスマンが持ってきた化粧品がタダだとしると次々とあれこれ頼むという、要するに中身がないキャラというのを僅かなシーンで描いている。しかもこれが、星野と竹田建設の朝倉との繫がりを決定づけた重要なシーンだったりする。
「さ」
・「さぁ、私はよく存じません。失礼致します」
(西尾貞一郎:内閣秘書官/山本學)
これは中盤のシーンで西尾が総理夫人に呼び出されて個室で怒られている時に知らぬ・存ぜぬで通しきって最後に放ったセリフ。まぁ、そうするしかないよね。そこで「すみません!」とミスを認めたら認めたでさらに地獄だったりするからね。
「し」
・「実は今日総裁に、ゆっくり聞いてもらいたいんですよ。私の、苦衷ってやつをね」
( 朝倉節三:竹田建設専務/西村晃)
これは前半のシーンで、朝倉が財部に料亭で接待をした時の冒頭のセリフ。ここでは朝倉があの手この手でヨイショをするんだけど、財部は意地でも動かないというシーンで、朝倉の努力がめちゃくちゃ涙ぐましい。それこそ、『社長シリーズ』の三木のり平に通じる宴会部長っぷりで、ある意味、社会人・サラリーマンの教科書的なシーンかも。大人になればなるほどこのシーンの面白さが分かる。
「す」
・「水力発電の大合意と言えば、今度の福流川ダムが最後になりますからなぁ。竹田建設としてはどーしても、工事を頂いて、名誉回復をやりたいんだ。高尾ダムの漏水は新聞でさんざん書かれちまって。分かって下さいよ?ねっ!総裁、うんとさえ言ってくれれば、私の方も総裁へのお礼を十分考えております。出すべきものはちゃーんと出しますよ。ハハハハハハハハ!」
( 朝倉節三:竹田建設専務/西村晃)
これまた朝倉の名言、というか「し」の料亭接待の時の別セリフ。もう、朝倉専務がとにかく必死で口説き落とそうとするんだけど、このセリフを飲み食いしながら言うんだけど、その仕草が微妙に汚いんだよね。すんごいガツガツ食って飲んで、財部にも酒をすすめるんだけど、そのすすめ方が昭和の土建屋さんっぽい感じが滲み出ている。まぁ、2000年前後の営業マンの飲みもこれに近かったかも。
「せ」
・「政治家から金を取り上げたら、肝心の政治がギクシャクして上手くいかなくなる。こう言ってしまっては、汚職を肯定するみたいになるが、そういう意味じゃない。ま、やむを得ざる場合もあるが、その時は一つ多目に見てほしい、と。俺はこう言っているんだよ、キミィ」
(斎藤荘造:幹事長=田中角栄元総理大臣/中谷一郎)
これ、映画の終盤になって飛び出した名言中の名言。終盤になってある急展開になり、斎藤幹事長が神谷に放ったセリフ。この斎藤こそ、時の内閣総理大臣の田中角栄で、このセリフを扇子をパタパタさせながら言う。汚職政治家のラスボスの言葉だけあって重さが違い過ぎるし、これ、後のロッキード事件にも繋がるよね。今回改めて見てサブキャラなのに重要な役であることを再認識させられた。このセリフはそこらのバイオレンスよりもドス黒い。
「そ」
・「そっちの方が大勢さんで賑やかでしたは。でもねぇ、朝倉さんのお座敷って言うと、みんな、嫌がるんです。うふっ、だって土建屋さん丸出しの」
(萩乃:石原の妾/中村玉緒)
これは前半のシーンで芸者の萩乃が石原に料亭の様子を伝えるシーン。この土建屋さん丸出しの飲み食いが上記の朝倉の財部への接待シーンで見られるという伏線のセリフだったりする。これを若き日の中村玉緒が演じているけど、ボクが知ってる中村玉緒はかなりおばちゃんになってたけど、この映画の頃は確かに芸者としても通用しそうなぐらい綺麗だったりする。
「た」
「財部様、竹田建設のこと、あたくしからもよろしくお願いします」
(寺田峰子:寺田総理大臣夫人/京マチ子)
これは中盤のシーンの超重要セリフ。そうそう、「財部」って「ざいべ」じゃなくて「たからべ」って読むんだよ。ボクも「財」=「たから」という読み方をこの映画で知ったよ。ともかく、これは名刺と一緒に添えてあった財部への手紙で、財部にとってはトドメの一撃となり、一時的に精神崩壊をし、古垣を料亭に呼びつけるという流れを生む。
あれかな、某昭恵さんもこんな感じだったのかな?
「ち」
・「長官!私は承知しているつもりです。この間の総裁選挙、長官がその後始末のため、竹田建設がご自分から献金を希望されたと」
(若松圭吉:電力開発副総裁/神山繁)
これは前半の若松が星野と初対面をするシーンの最後の方のセリフ。知らぬ、存ぜぬで星野にけんもほろろにされる若松が最後に振り絞ったけど焼け石に水というね。意地でも星野に食らいつこうとする星野だけど、ツーカーな竹田建設と親密な若松とは言え星野なりに警戒して、タヌキっぷりを演じた名シーン。この後、「か」の欄にあった朝倉への激おこぷんぷん丸電話に繋がる。
「つ」
・「つまり、我々はだな、一切何も知らんで、パーセンテージを決めるという段取りになったんだよ。分かるやろ、キミも」
(松尾芳之助:電力開発後継総裁/内藤武敏)
これは中盤の電力開発の山奥の温泉旅館合宿への電話でのセリフ。もちろん、何もかも知っていてロワリミットのパーセンテージを決めてます。セリフそのものは大したことがなくても、内藤武敏が言うと重みがある。
「て」
・「手続きの方はきちっと念入りにやってみせるんだ。こういう裏がある場合は、尚更念入りにな」
(松尾芳之助:電力開発後継総裁/内藤武敏)
「つ」とは別の時に若松に言ったセリフがこれ。とにかく、松尾後継総裁は竹田建設入札にノリノリなので、悪い感じだからか名言が多い。悪代官にピッタリだ。
「 と」
・「どういう話でございますか?私は電力関係は一向に不案内で、私、10分ほどしか時間がないんですけど?
(星野康雄:官房長官/仲代達矢)
これが若松との初対面で放った第一声のセリフ。初対面の知らない相手に対してはあくまでもクリーンな政治家のイメージでいるから、電力開発の若松を全く相手にしない。かと言って、本来は何もかも知っている関係ではあるので、お金を貰う立場だけど、俺は偉いんだぞ、という意図も感じられる。
・「どうもこうもありゃしねぇ!!今日みたいな不愉快な思いをしたのは初めてだよ!」
(若松圭吉:電力開発副総裁/神山繁)
そして、星野にけちょんけちょんにされた後に朝倉からの電話への第一声がコチラ。もう、激おこぷんぷん丸大全開!だからこそ面白い。
・「とかなんとかおっしゃって総裁の腹はちゃーんと決まってるんじゃありませんか?」
( 朝倉節三:竹田建設専務/西村晃)
これは朝倉の財部への接待シーンでの別セリフ。ただ接待をするだけでなく、財部の本音を確認しておくサーベイの接待だったりもするので、朝倉は朝倉でただヨイショをしまくって飲んで食ってをしているだけではなく、ちゃんと仕事をしている。本当に接待のカガミの様なシーンである。
「な」
・「なんとか45億前後の数字を出してくれるんでしょうなぁ?若松サン」
( 朝倉節三:竹田建設専務/西村晃)
これは中盤での電力開発の山奥の温泉旅館合宿の時の若松の陣中見舞電話の時に、若松の横にいた朝倉が放ったセリフ。あまり仲が良くない財部にはひたすらヨイショをしながらも、ツーカーの仲の若松にはちょっと横柄なセリフも言える。なんだかんだ言って若松と朝倉はズブズブの仲であるということだ。
「に」
・「入札のやり直しの作業をやらなきゃならないとなると、大変だよ」
(若松圭吉:電力開発副総裁/神山繁)
これは入札が決定した後に若松が言ったセリフだけど、総裁を変えて、何度も会議をやって、山奥の温泉旅館で合宿をして、なんとか決まったロワリミットを元にしてという経緯があるから、そりゃまた入札とかはあり得ないだろうね。
「 ぬ」はありませんでした。
「ね」
・「念の為に言っておくが、ワシはアンタを信用しているわけじゃねぇよ。ただ何と言うか、最後のチャンスになりそうな気がする」
( 石原参吉/宇野重吉)
これは後半のシーンで石原が神谷代議士からキャバレーで接待を受けて最後に言ったセリフ。というか大事な話をキャバレーでするという発想は『 仁義なき戦い』シリーズの極道と一緒だけど、神谷の場合、大事な話をしながら女の子にイタズラ仕放題だは酒をガブガブ飲むはで極道よりも遥かに酷い有様。そんな神谷を信用するというのはある意味難しいよね(笑)。
「の」
・「飲むことも自粛していただきたい」
(正岡:電力開発理事/高城淳一)
これは山奥の温泉旅館合宿での初日の開会飲み会(?)での長セリフの中の一言。ぶっちゃけ、「 の」を無理矢理捻り出したけど、よく考えてみると飲み会の挨拶で「飲むことも自粛していただきたい」とあってなんだか不思議な気分たが、この直後に「今日はまぁいいとして」というフォローの言葉があるから微笑ましい。つまり、会社ではなく温泉旅館での作業だからうっかりすると飲みながら作業するやつも昭和ならいそうだから一言言ったかな。
と思いきや、当の本人は上司の若松からの陣中見舞の電話ではブランデーを飲みながら話すというしたたかな一面を見せる。
「は」
・「払うか払わんか、話の後で決めよう」
( 石原参吉/宇野重吉)
これは中盤のシーンで、財部と古垣の会食シーンの後で古垣は早速石原の元へ訪れ、いよいよ戦闘開始となる時の石原の開口一番のせり。ちなみに、古垣は弟と女の取り合いをしていて手切れ金をせびられ、その為にお金が欲しい状況ではあった。ただ、フィクサー石原も情報収集の鬼だけあって、簡単にはお金を出さない。そこが昭和の妖怪たる所以である。
「ひ」
・「一つ、ダムの件は、よろしく頼むよ」
(大川吉太郎:通産大臣/北村和夫)
これは前半での大川通産大臣による財部への圧力セリフ。この時はまだこのぐらいのジャブだったので財部もかわせはしていた。しかもこの時は大川宛への電話が多く、財部にゆっくり圧力をかけられなかったので、なんとか苦し紛れのジャブを放った、そんな感じのセリフでもある。圧力セリフにも色々ある。
「ふ」
・「福流(川)ダムの工事は、青山組にやらせるんでしょ?」
( 朝倉節三:竹田建設専務/西村晃)
これは「と」の「とかなんとかおっしゃって総裁の腹はちゃーんと決まってるんじゃありませんか?」の後に間をおいて言ったセリフになる。ちなみに、福流川ダムは九頭竜川ダムのことで、実際に汚職事件があった。
このセリフは接待で財部にヨイショをしまくる朝倉からの軽い圧力で、財部も直後に帰ろうとする素振りを見せるからちょっとは効いている。
「へ」
・「別に大したことじゃない。ちょいと私に会う時間を作ってもらえばいい。それだけのことでいいんですよ。いやぁ、お断りにならん方がお互いに好都合でしょうなぁ。それじゃ」
( 石原参吉/宇野重吉)
これは中盤から後半に入る時の石原からの星野への電話でのセリフで、このセリフの後に後半戦にさしかかり、本格的な石原VS星野になる。この宣戦布告には「お断りにならん方がお互い好都合でしょうなぁ」という強烈なフックがあり、星野はこれに応じて料亭「春友」での会合になる。しかも、電話での取次は「竹田建設の社長」と偽って星野に繋がせるダーティーな小技も見せる。
「ほ」
・「ほぉ、誰に献金なさるということですか?」
(星野康雄:官房長官/仲代達矢)
これは「へ」の石原からの電話で設定した会合でのシーンのセリフ。星野の基本姿勢は知らぬ、存ぜぬの防御でのらりくらりとかわす。かわしながらも、酒はお猪口で一定のペースで飲みながら、食べ物には一切箸をつけないという徹底ぶり。前半の朝倉の接待シーンの汚い食べ方から考えると非常にスマート。尚、食べなかった食べ物は星野が帰った後、石原がお店に包んでもらって、自宅に西野を呼びつけて、西野に振る舞うという抜け目のなさを披露。しかも西野に出す時に「これ、星野の残したやつだけど、手を付けてないから」と言ってすすめて、西野もわりとガツガツ食べる。いやぁ、エモいなぁ(笑)。
「ま」
・「まぁ、なんと世の中には一から十まで俺と正反対の人間がいることか」
( 石原参吉/宇野重吉)
これは序盤の石原が部下からの調査の報告を聞いて呟いたセリフで、この後に「あ」の「あの通りの若さで〜」の長セリフに繋がる。だからこそあのセリフは星野と石原を対比する長セリフになっている。そのプレリュードがコレである。文からも分かるし、宇野重吉の声のトーンからも「やれやれ」感がめちゃくちゃ滲み出ている。
・「 まぁまぁまぁ、そう堅いこと言わずに、総裁も長い間、お役所におられたんだし、まぁ、よくある話ですからね!」
( 朝倉節三:竹田建設専務/西村晃)
これは前半の朝倉の財部への接待シーンで、わりと早くから財部から嫌がられていてのセリフがこれ。とにかく、何とか自分の手駒である竹田建設の方に少しでも向けたいから、必死にヨイショをしまくる。まるで「水戸黄門」に出てくる悪い越後屋のような朝倉を演じた西村晃が、まさか後に水戸黄門を演じるというのは皮肉以外ないね(笑)。
「み」
・「見返りはキミ、政治献金だね」
(財部賢三:電力開発総裁/永井智雄)
これまた朝倉接待でのセリフで、財部としてはただかわすだけでなく、ズバリそのものを言う事で財部なりに防御をしている。立場も権限も上だから、突っぱねることは可能だけど、それならなぜ料亭にわざわざ出向いたかという不思議さもある。まぁ、単にその辺の廊下で断るよりも、相手にちょっと期待を持たせてきっぱりと断る方がより効果的かな。
「む」
・「無理な話をキミに頼んでいるんだよ」
(大川吉太郎:通産大臣/北村和夫)
これも「ひ」の「一つ〜」の後の長セリフからの一言。この前半の段階では大臣からの圧力にも屈しなかった辺りはを財部の堅さを評価したい。ま、単に図太いだけなのかも、と書いていてつくづく思ってきた。
「め」はありませんでした。
「も」
・「もう一度ご忠告を致します。年寄りの冷や水はおやめになることでしょうなぁ」
(星野康雄:官房長官/仲代達矢)
これは後半の石原VS星野の料亭会合での去り際のセリフ。石原に決定的な証拠が物としてありながらも、まだ怯まずに捨てセリフを吐く星野だけど、直後にある行動を起こすあたりはやはり焦りはあったかな。それにしても宇野重吉VS仲代達矢というのはかなり豪華でヘヴィだ。
「や」
・「やけに弱気じゃねぇか。歳のせいか?ええ?石原サン」
(神谷直吉:代議士/三國連太郎)
これは「ね」の「念の為に〜」の直後に神谷が言ったセリフ。これから国会で答弁をするのに相方の石原の弱気な発言にちょっぴり不安になる神谷。この後、石原はやや大人しくなる、というか星野らの動きが本格的になるから、「念の為に〜」はわりと当たっていたりする。
「ゆ」
・「夕べな、赤坂の春友で、星野と法務大臣の神原とが会っていたらしい。幹事長の斎藤も後からやって来たらしい」
(石原参吉/宇野重吉)
これも神谷とのキャバレー会合でのセリフで、「ね」や「や」よりも前に神谷に言ったセリフ。そう考えると、このセリフを告げたにも関わらず、女の子にイタズラしまくり、酒飲みまくり、マイクアピールをしたりのどんちゃん騒ぎで、そこからの「念の為に〜」を考えると石原の呆れた様子もより濃く感じられる。
「よ」
・「要するに、金は天下の回りものでね。つまり、政治をスムーズに動かすための潤滑油だよ、キミ」
(斎藤荘造:幹事長=田中角栄元総理大臣/中谷一郎)
これは「せ」の「政治家から〜」のシーンでのセリフで、「政治家から〜」よりも前に言ったセリフ。田中角栄元総理大臣が言うと何ともズッシリと来るし、リアルさが半端ない。
「ら」
・「ラブレターを書いたってわけじゃないんでしょ?」
(神谷直吉:代議士/三國連太郎)
これは国会での財部を呼んでの証人喚問での質問の一節から。ラブレター=「た」にある寺田総理夫人からの手紙の一文をさし、追求している。かなりはっきりとした証拠にも関わらず、これを財部はどうにか切り抜けてしまう。やっぱり図太いんだよね、この人は。
「り」
・「旅費だよ、キミの。2000万円ある。」
(斎藤荘造:幹事長=田中角栄元総理大臣/中谷一郎)
これも終盤の斎藤と神谷の話し合いのシーンのセリフから。たしか、「よ」の「要するに〜」の後にズバリ出たのがコレ。お金で黙らせたり、攻撃をしたり、斎藤らしさをモロに出したシーン。石原もお金を出してたけど桁が違う。これが権力の力か。
「る」はありませんでした。
「れ」
・「練達の士を失うのは通産省としても損失だからね。私としてはもう1期、キミにやって欲しい気持ちがあったんだけれども、どうも色々と事情がね」
(大川吉太郎:通産大臣/北村和夫)
これは中盤の大川通産大臣と財部の話し合いで、この話で大川は財部に肩を叩く。ただ、電力開発の他の幹部や大川からの圧力というよりかは「た」にある寺田総理夫人からの手紙が強烈な一撃となって、あれでこのセリフに繋がったものである。
「ろ」
・「ロワリミットか」
(松尾芳之助:電力開発後継総裁/内藤武敏)
ロワリミット=最低入札制限価格制度のことを言うようだけど、この『金環蝕』でロワリミットという言葉を覚えたけど、今にして思うと『黒部の太陽』でも入札のシーンでこのロワリミットの攻防があった気がしてならない。
「わ」
・「我々にはとっては、特に有り難くない制度ですがなぁ。今回は特に有り難くない。上手く落とした所から、例の5億円、工事費から出すことが出来るかどうか。お宅の予算額から、まぁ、7%前後が、常識的ですがね。あまりロワリミットのパーセンテージを上げられると、青山組あたりに持ってかれるかもしれませんよ。ねぇ、若松サン」
( 朝倉節三:竹田建設専務/西村晃)
「ろ」のロワリミットを受けて竹田建設の朝倉専務の見解だけど、まぁ、建設会社の本音でダーティーな朝倉が言うから似合っている。この辺りから朝倉の方が若松よりもやや上からな発言が目に付くけど、こうした心境の変化も見どころの一つだね。
・「私も戦後のドサクサに紛れてここまでのして来た人間だ。面白かったなぁ、あの頃は。けど、今は違うぞ。政界と財界、官僚が手を付けられない程、ガッチリと結びついとる」
(石原参吉/宇野重吉)
このセリフも神谷と石原のキャバレー会合での石原へのセリフなんだけど、実際に石原のモデル元の森脇 将光と神谷のモデル元の田中彰治が1950年代に森脇メモで色々賑わせて、「あの頃」とはそれを指す。それが『金環蝕』の1960年代半ばはそうは行かず、その顛末を描いたのがこの作品になる。
ようやく、やり切りました(笑)。
映画を何回も見直して、セリフレベルで見つめるのは新鮮でしたね。
そして、最後に冒頭のこの言葉で締めくくります。
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投稿を表示台詞かるた凄いですね!
感動しました!
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投稿を表示自分の好きを投稿する場所だから
誰もヤバい奴なんて思わないですよ😄
以前どこかで、タイトルに数字が入る映画を観るチャレンジしてる人がいたけど、1から順番に😅
小川さんのコレも凄いです🔥
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投稿を表示うっひゃ〜🤯🤯🤯
凄すぎ!!
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投稿を表示名言かるた。
力作ですね!生憎当作品は未見ですがこれらのセリフで大体内容とドス黒さはわかりました😆。
お疲れ様でした👏
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