イラン映画はいかがでしょうか?
イランといえば、先日大統領が墜落事故死して事故か?事件か?で物議をかもしておりましたね。イランという国は、人権と自由が制限されている国として有名ですが
実は良い映画が沢山あるのをご存じでしょうか?
イランの映画って、子役を使うのが上手なんですよね。それもほとんど素人さんのような子役なんですけど、それがまた自然な演技で瑞々しくて、感動を引き出すのです。
ハリウッドやボリウッドとも違う独特のタッチの作品が、現代の私たちが忘れてしまっている何かを引き出してくれるような作品が多いのです。
では、私の好きなイラン映画をいくつか紹介したいと思います。
1.🎦トラベラー🎦
1974年 72分
監督:アッバス・キアロスタミ
あらすじ(DISCASより)
「友だちのうちはどこ?」で始まる“ジグザグ三部作”でも知られる、キアロスタミ監督が、誰もが幼き頃に持つ良心の呵責を、サッカー好きの10歳の少年がテヘランで開かれるサッカーの試合観たさに、両親や友人などに嘘をつき旅立つ姿を通し牧歌的に描いたヒューマン・ドラマ。
イランの巨匠アッパス・キアロスタミ監督による作品です。やんちゃな10歳の少年ガッセム(顔は少年とは思えないオッサン顔!)が、サッカーの試合を観るために、親のお金を盗み友達に嘘をつき、自分の目的を果たそうと他人を振り回し猛進します。少年はサッカーを観ることが出来たのか?嘘をついて自分の望みを叶えようとしても必ず代償が伴うのだということ。このオッサン顔の少年に演じさせることで、この国の当時の情勢を密かに批判していたのかな?なんて深読みをしたりしております。
2.🎦運動靴と赤い金魚🎦
1997年 88分
監督:マジッド・マジディ
あらすじ (DISCASより)
少年アリは修理してもらったばかりの、妹ザーラの靴を買い物の途中でうっかり失くしてしまう。親にも言えず、兄の靴一足しかない兄妹は、それを共有することに。妹がまずアリの運動靴を履いて登校。下校途中で待ちあわせて、今度はアリが履いて登校するという具合。そんなある日、小学生のマラソン大会が行われることに。3等の賞品はなんと運動靴。アリは妹のために3等になろうと必死に走るのだった……。健気で一生懸命な兄妹の姿を描きアカデミー外国語映画賞にノミネートされた感動ドラマ。
30年近く前のイランという国の暮らしぶりが判る作品。失業中の父親に靴を失くしたことを言えな兄妹。当時のイランは子供の靴を買うこともままならないほど貧しい人が多かったのでしょう。その反面、父親が職探しに行く金持ちの家は豪邸で、格差の大きさが窺われます。それでも男たちは一日中水タバコをふかしているし、女性たちは一日中働きづめなのです。妹のために3等を取ろうとする健気な少年に心を打たれる名作です。果たして少年は3等を取れるのか?最後はあなたの心が温かくなること間違いないですよ。
3.🎦柳と風🎦
1999年 85分
監督:モハマド・アリ・タレビ 脚本:アッパス・キアロスタミ
あらすじ(DISCASより)
学校のガラスを割ってしまった少年がお金もないのに弁償を迫られ、新しいガラスを取付けるために奮闘する姿を緊張感あふれるタッチで描いたイラン映画。脚本は「友だちのうちはどこ?」のアッバス・キアロスタミ。イラン北部の村。少年クーチェキは誤って学校の窓ガラスを割ってしまう。学校の先生からは窓ガラスを元に戻すまで授業を受けさせないと言われるが、父親にそんなお金の余裕はない。やがてなんとかお金を工面してガラスを買いに行くクーチェキだったが……。
1枚のガラスのためにひたすら奮闘する少年に感動します。学校のガラスを割ってしまった生徒に、自分でガラスを調達してくるように言う学校側にも、当時のイランという国の不思議さを感じさせます。何とかお金を工面してガラスを買うことが出来た少年。今度はそのガラスを学校まで持っていかねばなりません。果たして無事にガラスを届けることが出来るのか?この辺はもうサスペンスで、ハラハラドキドキですよ。脚本は巨匠のアッパス・キアロスタミだけあって、ちょっと意地悪な作品でした。最後は少年の背後に広がる夕暮れの空の美しさに涙が出ました。
4.🎦友だちのうちはどこ?🎦
1987年 83分
監督:アッバス・キアロスタミ
あらすじ(DISCASより)
授業が終わり、教室で隣の席の子が駆け出して転んだ。その手当をしてやった主人公の少年は、自分のとよく似た彼のノートも一緒に持って帰ってきてしまう。その日も遅刻して、おまけに宿題を忘れて、先生にキツく叱られたばかりの隣の席の子に同情し、少年は自分とはまるで反対の方角に住む彼にノートを届けることにしたのだが……。キアロスタミ監督の“ジグザグ道三部作”の第一作。
イラン北部のコケールという村を舞台にした3部作の第1作。敢えて俳優を使わずに、素人の子供たちに演じさせたということで、子役ちゃんたちの演技がこれまた瑞々しくも自然なのです。この時代のイランの田舎では、子供は労働力であり、学校の教師も叱咤するばかりで、大人の子供に対する接し方に優しさのかけらも感じません。そんな中にあって、主役の少年がともだちを思う気持ちが優しくて、その子の家を探して歩く(というより走る)だけの話なのですが、ラストにはほっこりしてしまうのです。
5.🎦彼女が消えた浜辺🎦
2009年 116分
監督:アスガー・ファルハディ
あらすじ(DISCASより)
2009年のベルリン国際映画祭で監督賞に輝いたミステリー・ドラマ。週末を使ってバカンスに向かったイランの中産階級の男女が、その中の一人の女性の突然の失踪をきっかけに、彼女の行方と原因を巡って混乱を来す中で、次第にさまざまな謎や問題が浮き彫りとなっていくさまを、イランならではの社会的事情を背景にサスペンスフルに綴る。監督は、これが日本初登場のアスガー・ファルハディ。カスピ海沿岸のリゾート地に週末旅行へとやって来たセピデーたち3組の家族。そこに、セピデーに誘われ、たった一人で参加した若い女性、エリがいた。セピデーには、エリに離婚したばかりの友人アーマドを紹介するという思惑があったのだが…。
上質のミステリードラマです。すごく引き込まれます。エリという一人の女性を巡って繰り広げられる人間心理が巧みに描かれていて、最後まで飽きさせません。ここに出てくる人たちは皆裕福そうです。そんなところもこれまで見てきたイラン映画とはちょっと違う感じを受けました。そして何より女性たちが素晴らしく美しいのです!↓見て下さい、美し過ぎる彼女たちを!
6.🎦オフサイド・ガールズ🎦
2006年 92分
監督:ジャファル・パナヒ
あらすじ(DISCASより)
女性のスポーツ観戦が禁じられているイランの国情を背景に、ワールドカップ出場をかけた対バーレーン戦の大一番を舞台に、男装しあの手この手でスタジアムに潜り込もうとする元気いっぱいの少女たちの姿を描いたはつらつ青春ストーリー。監督は「白い風船」「チャドルと生きる」のジャファル・パナヒ。サッカーが国民的スポーツのイラン。男性はもちろん、女性の多くも大好きなサッカーだが、イスラム教を重んじる同国では、女性がスタジアムで男性のスポーツを観戦することが法律で禁じられている。そんな中、2006年のワールドカップ出場がかかる大事な一戦が、首都テヘランで行われようとしていた…。
イランの政治体制を批判する内容であるとして、イラン国内では上映禁止とされた作品です。このときから20年以上たった今でもイランでは女性はサッカーを観戦出来ないのででょうか?そういえば、何年か前の日本戦とのときも観客は男性ばかりだったような気がしました。ただ、女性蔑視で観戦出来ないのかと思っていたら、それなりに理由があることが判ります。サッカー場では男たちが汚いことばを発するので、そんな汚い言葉を女性には聞かせられないから観戦させないのだというのです。でもそれはあくまでも表向きの理由。やはり女性は家に引っ込んでいろというような風習ではなかったのかと思います。
あの手この手を使って、男性になりすまし、競技場に入ろうとする女性たちは、決してか弱くもなく、決して女らしくもなく、みんな逞しいのです。そして逮捕するのは若い兵士たち。彼らも当然サッカーが好き。逮捕された女性たちと兵士とのやりとりがおかしいく、以外にも優しいところはほっこりしました。
7.🎦別離🎦
2011年 123分
監督:アスガー・ファルハディ
あらすじ(DISCASより:
「彼女が消えた浜辺」のアスガー・ファルハディ監督が、一組の夫婦のすれ違いが思わぬ事態へと発展していくさまを、伝統と近代化の狭間で揺れるイランの社会事情を背景にスリリングに描き出したヒューマン・ドラマ。アカデミー外国語映画賞受賞作。テヘランに暮らす夫婦ナデルとシミン。妻のシミンは娘の将来を考え、海外への移住を計画していた。しかし準備が進む中、夫のナデルは、アルツハイマー病を抱える父を残しては行けないと言い出す。夫婦の意見は平行線を辿り、ついには裁判所に離婚を申請する事態に。しかし離婚は簡単には認められず、シミンは家を出てしばらく別居することに。一方ナデルは父の介護のため、ラジエーという女性を家政婦として雇うのだったが…。
海外で評価され、沢山の賞を受賞しました。
2011年 アカデミー賞 外国語映画賞 2011年 ベルリン国際映画祭 金熊賞 2011年 ゴールデン・グローブ 外国語映画賞 2011年 NY批評家協会賞 外国映画賞 2011年 LA批評家協会賞 脚本賞 |
宗教的なこととか、イラン社会の仕組みとかを垣間見ることができ、なかなか興味深い作品です。どちらが悪いとか、どちらに非があるとかではなく、互いに隠していた小さな嘘が、自分を正当化しようとすることで生まれる争い。後戻りが出来ないところまできてしまいます。最終的に答えは出ませんが、とても引き込まれました。
8.🎦人生タクシー🎦
2017年 82分
監督:ジャファル・パナヒ 出演:ジャファル・パナヒ
あらすじ(DISCASより):
2010年にイラン政府から20年間の映画監督禁止令を受けながらも、様々な形で映画を作り続ける反骨の映画作家ジャファル・パナヒ監督が、自らタクシー運転手に扮して撮り上げた異色作。テヘランの街でタクシーを走らせるパナヒ監督が、“泥棒は死刑にしてしまえ”と訴える男性やそれに反論する女性教師、あるいは海賊版DVDで一儲けを企むレンタル業者に国内で上映可能な映画を撮影しようとしている監督の小学生になる姪っ子といった様々な乗客たちと織りなす悲喜こもごもの人生模様が、ダッシュボードに備え付けられたカメラを通してユーモラスに映し出されていく。
パナヒ監督が、自らタクシー運転手に扮して、次から次へと乗り込んでくる乗客を、車に取り付けたカメラで撮影しているという設定のモキュメンタリーです。この作品もイランでは上映禁止作品となっています。海外映画を観ることを禁止されているイランで横行する違法DVD配達人とか、娘の小学校での映画製作に対する制約とかに、イラン政府にはけしからん!となったのかもしれませんが、パナヒ監督は2010年から20年間の映画製作・脚本執筆・メディア対応と海外渡航が禁止ということなので、上映はされないですね。次から次へと乗り込んでくる乗客(普通に乗合タクシーなのです!)がこれまた文化の違いを感じさせる人々で興味深いです。
9.🎦君は行く先を知らない🎦
2023年 93分
監督:パナー・パナヒ
あらすじ(DISCASより):
イランの巨匠ジャファル・パナヒ監督の長男パナー・パナヒが記念すべき長編監督デビューを飾ったロードムービー。イランの国境近くを車で旅する4人家族を主人公に、兄との別れというこの旅の真の目的を知らず、ひとり無邪気にはしゃぐ幼い次男と、そんな次男に本当のことを打ち明けられずに持て余してしまう家族の姿を通して、一家が抱える深い苦悩とイラン社会の過酷な現実を浮かび上がらせていく。
この作品には今のイランの若者たちの現状を垣間見ることが出来ます。普通の家族旅行かと思いきや、この旅にはある重大な目的があったのです。やたらはしゃぐ次男、口数の少ない長男、骨折して歩けない父と心配そうな母は、とにかく明るく振る舞おうとします。広大な砂漠と高原とは対照的な車の中という狭い空間。この対比が生み出す絶妙のバランス。外国映画を観ることを制限されているイランで、劇中では長男が一番好きな作品として「2001年宇宙の旅」と言い、次男は「バットマン」が大好き。自由に歌を歌えない中、車の中で一家は昔の(イラン革命以前の)流行歌を歌います。そんなところにも、イラン社会への小さな抵抗を感じる作品でした。
現代のイランの若者たちはインターネットで外の世界を知っています。だからこそ、自由のない自国から出たいという若者が多くいるそうです。そんな現状をさりげなく、言及することなく描いていますから、え?何?長男はどこ行くの?と思われる方もいると思いますが、イラン政府の弾圧と戦ってきた父ジャファル・パナヒ監督の背中を見て育った青年らしい、骨太の映画となっています。あと、次男役の子役が鬱陶しいくらいおしゃべりで可愛らしかったです(笑)なんとも芸達者な演技にあっぱれでした。
異文化を知ることが出来る、それも映画の良さですね。
まだまだご紹介したイラン映画は沢山ありますが、今回はこの辺で!
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投稿を表示イランというと、どこか閉鎖的で封建的なイメージがあったのですが、こんなに素敵な映画が沢山あるのですね!しかも、戒律とかいろいろ厳しそうだし、現に政府から映画を撮ることを禁止されているのも関わらず撮るなんて、あの社会のなかで、そんなに反骨を示せる人が居るんだと思うと、映画制作の奥の深さのようなものを感じます。
監督さんの作風にもよるのですが、子供が活躍する作品が多いんでしょうか?子供の何気ない行動から子供の視点から見た冒険が始まるみたいな!そんなワクワクっぽい映画みたいですね
今度探してみてみます!ご紹介ありがとうございます!
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投稿を表示大学でイラン映画の授業取ってたんですけど、友だちのうちはどこ?見てました。
めっちゃ懐かしいです笑
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投稿を表示イラン映画って見た事なかったんですが、なんとも面白そうな作品だらけですね👀✨
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