帰って来たドラキュラ
帰って来たドラキュラ
1969年 イギリス 劇場公開:1969年3月12日
スタッフ 監督:フレディ・フランシス 製作:アイダ・ヤング 脚本:アンソニー・ハインズ
撮影:アーサー・グラント メイク:ワンダ・ケリー、ヘザー・ナース、ローズマリー・
マクドナルド・ピーティ 特撮:フランク・ジョージ 音楽:ジェームス・バーナード
キャスト クリストファー・リー、ルパート・デイヴィス、ヴェロニカ・カールソン、バーバラ・
エーウィング、バリー・アンドリュース、イワン・ホッパー、マリオン・マシー、マイケ
ル・リッパー ほか
ドラキュラが水中に没して1年が過ぎた。ある村にたちよった高僧は、村人たちが、教会に行くのを、いやがっているのを知り教会の神父を伴って、悪魔払いのため城へ行った。だが、司祭は逃げだし足をすべらして急流へ転落。その下に眠っていたのがドラキュラ泊爵(C・リー)である。司祭の傷口から流れ出た血をすって、吸血鬼は甦った。そんなこととは知らず村では、悪魔払いをしてくれた高僧に感謝のしるしとばかり、木の十字架を贈った。一方、高僧の姪マリアは、誕生パーティーで浮き浮き。給仕女のゼーナまでが騒ぎだした。そして甦ったドラキュラは夜ごと棺桶から現われ、村人の血を吸っていく。

ハマーのシリーズ4作目。監督はテレンス・フィッシャーから、カメラマンのキャリアを持つフレディ・フランシスに交代。この作品では様々な演出が試みられた。ロケーションの多用により、地理関係の広大さを明確にし、切り立った山頂に雲つくようにそびえ立つドラキュラ城であるとか、住宅街の屋根の上での追跡劇を加えることで「高さ」を演出。それまでにない舞台空間の広がりを、立体的に見せることに成功している。ことに、「高さ」が強調されるシーンが多い。これによって「不安定」さが演出され、自然に心理的不安に駆られる。また、ほのぼのとしたホームパーティのシーンに、狂ったように疾走するドラキュラの馬車のカットを差し込むといった、明暗の強調、これも神経にざらつく演出である。これらと、映画全般のどんよりした色調も手伝って、映画全体が実に陰惨で不安な空気を醸しだしている。シリーズ中随一、不思議な雰囲気に包まれている作品だ。ジェームス・バーナードの音楽も、お馴染みだったドラキュラ・テーマを一新。宗教曲を取り入れた重い曲調となった。