🎦ぼくは君たちを憎まないことにした🎦
とても心にずっしっとくる良い映画でした。なのにDISCASではレビュー数が少ないので、見ている方が少ないのかなと思い、とても残念な気持ちになりました。
なのでここでも本作を紹介したいと思います。
生きたかった明日を理不尽なテロで奪われた全ての人へ捧げる感動作です。
🎦ぼくは君たちを憎まないことにした🎦
2022年 ドイツ/フランス/ベルギー
監督:キリアン・リートホーフ
出演:ピエール・ドゥラドンシャン 、 ゾエ・イオリオ 、 カメリア・ジョルダナ 、 トマ・ミュスタン
あらすじ(all chinemaより)
2015年にパリで発生した同時多発テロによって最愛の妻を奪われたジャーナリスト、アントワーヌ・レリスが、幼い息子を抱え混乱と悲しみの中で過ごした事件後2週間の出来事を綴った世界的ベストセラーを映画化した実話ドラマ。主演は「湖の見知らぬ男」「エッフェル塔~創造者の愛~」のピエール・ドゥラドンシャン。監督は「陽だまりハウスでマラソンを」のキリアン・リートホーフ。
パリに暮らすジャーナリストのアントワーヌ・レリスは、愛する妻エレーヌと幼い息子メルヴィルと幸せな日々を送っていた。しかし2015年11月、同時多発テロが発生し、コンサート会場にいたエレーヌは事件に巻き込まれ命を落としてしまう。突然の悲劇に激しく動揺し、幼いながらも何かを感じ取っている息子のことを思い、大きな不安に襲われるアントワーヌ。それでも彼はSNSでテロリストに向けて“憎しみを贈らない”と宣言し、息子と2人で今まで通りの日常を続けることでテロに打ち勝つと決意表明するのだった。このメッセージは世界中に拡散し、動揺するパリ市民を落ち着かせ、未曽有の危機に立ち向かう勇気と団結力をもたらしていく。
アントワーヌがテロリストたちに向けて綴った手紙全文
金曜の夜、君たちはぼくにとってかけがえのない人の命を奪った。彼女はぼくの最愛の妻であり、息子の母親だった。
だが、ぼくは君たちを憎まないことにした。
君たちが誰か知らないし、知りたくもない。君たちの魂は死んでいる。
君たちは、神の名において無差別に人を殺したが、もし神が自らの姿に似せて人間を作ったのだとしたら、妻の体に撃ち込まれた銃弾のひとつひとつが神の心の傷になっているだろう。
だから、決して君たちに憎しみという“贈り物”をあげることはない。
君たちの望み通りに怒りで応じることは、君たちと同じ無知に屈することになる。君たちは、ぼくが恐怖におののき、隣人に疑いの目を向け、安全のために自由を犠牲にすることを望んでいるのだろう。
だが君たちの負けだ。ぼくは変わらない。
今朝、妻に会った。何日も待ち続けた末に。
彼女は金曜の夜に家を出たときのままで、そして12年以上も前にぼくが恋に落ちたときと同じように美しかった。
もちろん、ぼくは悲しみに打ちのめされている。君たちの小さな勝利を認めよう。でもそれは長くは続かない。
妻はいつもぼくたちとともにあり、再びめぐり会うだろう。君たちが決してたどり着けない自由な魂の天国で。
ぼくと息子は2人になったが、世界中の軍隊よりも強い。そしてこれ以上、君たちのために割く時間はない。
昼寝から目覚めたメルヴィルのところに行かなければいけない。
彼は生後17ヵ月で、いつものようにおやつを食べて、いつものようにぼくと遊ぶ。そして幼い彼の人生が幸せで自由であり続けることが君たちを辱めるだろう。
君たちは、彼の憎しみを勝ち取ることもないのだから。
憎まないことは悲しまないことではない
この手紙がSNSに投稿され、拡散されると、世界中から反響が!アントワーヌの想いに賛同した人々から沢山の励ましや、勇気をもらったというような手紙が届きます。マスコミもこぞって彼を取材します。
しかし、憎まないことと悲しまないことは別です。アントワーヌは最愛の妻を突然失ったことで、心にはぽっかりと穴が開いたようになり、息子のメルヴィルが「ママ~、ママ~、」とママを恋しがることに苛立ち、知り合いのママたちが彼に同情することにも戸惑い、妻の家族が葬儀の準備をすることも受け入れられず、お酒に頼って悲しみの淵から抜け出ることが出来ずにいます。電車の中でアラブ系の人たちがいれば、やはり睨みつけるように見てしまいます。家族で幸せそうに過ごしている人たちがいれば、羨まし気に見てしまいます。
それはそうです。突然に最愛の人がこの世にいなくなったら、普通の精神でいられるはずがありません。ましては犯人たちを憎まないなんて、とても難しいことでしょう。それでも敢えて、自分の気持ちを抑えるために、あのような手紙を書いたのでしょう。自分のために、息子のために。平静を装うことが唯一の反撃であることをあの手紙は私たちに教えてくれたのです。
悲しいのはあなただけではない
手紙の言葉とは裏腹にずっとめそめそしているアントワーヌ。私は思わず画面越しにカツを入れました。悲しいのはあなただけではないのよ!と。
母親は最愛の娘を失い、姉は大好きな妹を失い、何より息子は大切なママを失ったのです。めそめそしてはいられない。息子のメルヴィルのためにシャキッとしなさい、アントワーヌよ!
これが逆だったら、きっとエレーヌはメルヴィルのために、もっと強くあろうとしたことでしょう。泣いてばかりはいられない、自分がしっかりしなければ!と奮起したことに違いありません。それが母親というものだから、それが女性の強さだから。
ママはいつもここにいるよ
ママに会いたいとせがむ息子に、ママはいつもここにいるよ、会いたいときにはここにこよう、とお墓に連れてきます。そして、一緒に幸せになろうと、息子と誓い合うアントワーヌ。
悲しみは消えることはありませんが、幼いメルヴィルの父としてすこしづつ強くなるアントワーヌ。鼻の奥がツーンとなって涙が溢れてきたシーンです。
世界は憎しみの連鎖で出来ている今、私たちが出来ることはなんだろう?
アントワーヌとメルヴィルの親子の姿を見て、いろいろ考えさせられました。愛する者を突然奪われる悲しみを乗り越えるのはとても辛く悲しいことです。それでも前を向いて生きて行かなければ、それはやはりテロリストたちに屈することになるのだと思いました。
憎しみの連鎖が止まらない世界にあって、この作品は多くの人に見て頂きたいと思っています。人を殺すことを推奨するのは本当の神ではないことに、いい加減人は気づくべきですね。
それにしても、メルヴィル役の子役ちゃん、おそらく2歳ぐらいでしょうけど、演技が何かなんて多分理解していないと思うのですが、それがちゃんと演技しているのですよ!驚きでした。恐るべし子役ちゃん!この子の演技が更に涙を誘います。
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投稿を表示これは考えさせられる映画ですね。。タイトルからもその先の事を考えてしまいそうですし。。。昨日公開した関心領域についても、若干近い方向の映画なんじゃないかな?と妄想していました。笑
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