未婚の崖っぷち三姉妹の悲喜こもごも『お母さんが一緒』
■お母さんが一緒
〈作品データ〉
ペヤンヌマキ原作の舞台劇を『ハッシュ!』や『ぐるりのこと。』を手掛けた橋口亮輔監督が手掛けた重いヒューマンドラマ&コメディ映画。弥生と愛美、清美の三姉妹は母親の誕生日会を兼ねて佐賀の温泉宿にやって来た。長女の弥生が愛美が予約を取った宿に難癖をつける一方で、三女の清美は弥生が母の所にいった隙にあることを相談し、打ち明けることに。長女・弥生役を江口のりこが演じ、他内田慈、古川琴音、青山フォール勝ちが出演。
・7月12日(金)より新宿ピカデリー他全国ロードショー
・上映時間:106分
・配給:クロックワークス
【スタッフ】
監督・脚色:橋口亮輔/脚本・原作:ペヤンヌマキ
【キャスト】
江口のりこ、内田慈、古川琴音、青山フォール勝ち
公式HP:https://www.okaasan-movie.com/
〈『お母さんが一緒』レビュー(レビュアー:じょ~い小川)〉
『恋人たち』以来9年ぶりの作品となる橋口亮輔監督の最新作はペヤンヌマキの舞台劇を原作にした『お母さんが一緒』。アラサー&アラフォーの未婚の三姉妹らの悲喜こもごもを描いているが、長女・弥生役の江口のりこだけでなく、内田慈や古川琴音も感情を大爆発させたドロドロの家族劇を見せ、
圧巻の室内会話劇であり、しっかりとした日本映画に仕上げている!
ストーリーの大半は弥生、愛美、清美の三姉妹による会話劇に、たまに「ネルソンズ」の青山フォール勝ちが演じるタカヒロが加わる。この三姉妹のやり取りは小林聡美の「やっぱり猫が好き」や映画『かもめ食堂』みたいな女たちのしゃべくりを未婚のアラサーやアラフォーの
女としての崖っぷちな事情をモロにぶち込んだ内容になっている。
特に江口のりこの演技が素晴らしい。
感情剥き出しに怒鳴ったり、叫んだりと暴れまくり、途中からは顔面崩壊状態になるほど。それと、一重コンプレックスや己の容姿に関する恨み・つらみを次女、三女にぶつけている。
これに内田慈も呼応し、前半から絶妙な間合いの演技を見せつつも、こちらも感情爆発。そんな中で野郎のタカヒロがちょこちょこと変なタイミングで変なことをするから余計に弥生や愛美が騒ぎ、見事なコメディに仕上がっている。
唯一、一番まともそうな古川琴音が演じる三女の清美もああだこうだ騒ぐ姉二人に徐々に毒されて平静を失っていくが、明らかにベテラン二人に引っ張られたように見えなくない。
それと長女・弥生がやたら匂いを嗅ぐ仕草をするのを見ていると彼女がかつて主演した『ユリ子のアロマ』のことを思い起こすとなんともエモい。
それと、部屋の柱を使った断絶線ショットや折り鶴や織物など小道具の使い方も上手い。
おそらく舞台版からの売りと思われるお母さんの演出も悪くはないが、それ以上に女として人生に焦る三人の女たちの感情を大爆発させた会話劇が凄まじい。向田邦子原作の『阿修羅のごとく』を彷彿させる姉妹劇でありながら、
晩婚化や「お一人様」が常態化となった令和の現代を表した日本映画である。
かつて夫婦を徹底的に描いた『ぐるりのこと。』から思うと今回は徹底的に姉妹劇を描いており、世間から隔絶されているような地方の温泉宿という設定もお見事。
久しぶりの新作でも
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投稿を表示スゴくおもしろそうですね!✨
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