ユダヤ系の劇作家が挑む反ナチス運動決死行
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【2025 - No.28】
𝐓𝐡𝐞 𝐓𝐢𝐦𝐞𝐬 𝐇𝐚𝐦𝐦𝐞𝐭𝐭 𝐋𝐢𝐯𝐞𝐝
〜 ハメットの生きた時代 Vol.1 〜
ジュリア
アメリカ 117分 1977年
ハードボイルド探偵小説の始祖たるダシール・ハメット代表作「マルタの鷹」新訳版が刊行されたので早速手に取った。ストーリー自体やや面白味に欠ける印象は若い頃に読んだ際と変わらぬが主人公サム・スペードの人物像や秘書との二人三脚関係などは発表から百年近く経つ今尚新鮮で全く色褪せていない。ハメットについて個人的には著作よりもむしろ彼の歩んだ人生、キャリア絶頂期に筆を折り(長年伴侶として時間を過ごしたリリアン・ヘルマン曰く一応執筆は続けていたらしいが作品の完成には至らなかったそう)左翼活動に心血を注いだ、に興味がある。そこで此度はハメットその人にフォーカスされた映画を二本取り上げてみたい
劇作家ヘルマンの自伝短編をもとにした本作は反ナチス運動に関わる親友の依頼でそれに加担する彼女の様子をスリリングに追うと同時にハメットとの共同生活の一端が映される。ただし、話の中心はあくまでも前者なので後者の模様を知りたかった私には些か物足らない内容だ。主人公ヘルマンがパリからベルリンへ資金を運ぶ件は演出を担ったフレッド・ジンネマン流の緊張感で確かに見応えは十分なのだが、彼女と反ナチスの闘士ジュリアの間で築かれた友情、或いはそこに存在する幾ばくかの恋愛感情、の描写がお座なりでしかなく今ひとつ深みを欠く。女性同士のフレンドシップと並行して男女のパートナーシップを扱うと云う試み自体は面白いものの残念ながら結果として「二兎を追う者は」の恰好になった部分は否めない。アカデミー賞脚色賞を受けたスクリーンプレイに難癖をつけるわけではないけどもどうせならジュリア関連一本に展開を絞った方が作品の質はもっと向上したような気がする
煙草を吸ういい女と聞いて私の頭に浮かぶのはジーナ・ローランズとジャンヌ・モローの姿だが「ジュリア」におけるジェーン・フォンダもなかなかだ。タイプライターを叩きつつ紫煙をくゆらせるサマは実にクール
★★★★★★☆☆☆☆

原題 Julia
監督 フレッド・ジンネマン
脚本 アルビン・サージェント
撮影 ダグラス・スローカム
編集 ウォルター・マーチ
音楽 ジョルジュ・ドルリュー
出演 ジェーン·フォンダ, バネッサ·レッドグレーブ
受賞 1978年アカデミー賞脚色賞他三部門
公開 1977.10.02 (米)/ 1978.06.10 (日本)
𝑯𝒂𝒎𝒎𝒆𝒓 𝑵𝒐𝒕𝒆
脇役にメリル・ストリープがキャスティング。大輪の花を咲かす前の彼女がフィルムに刻まれている。私の記憶ではオープニングクレジットに名前は無く見過ごす観客は結構多いかも
Upcoming Film Review ↣↣↣
"ハメット " (1982)
【2025 - No.29】
ハメット
ピンカートン探偵社に在籍したことのあるハメットがかつての同僚からの依頼で中国人娘の行方を追うハードボイルドフィクション。製作フランシス・コッポラ&監督ヴィム・ヴェンダース。特筆すべき点を見出せずレビューは割愛
★★★★★☆☆☆☆☆

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投稿を表示本作は確か、テレビの洋画劇場で観たっきりですが、ジェーン・フォンダがリリアン・ヘルマンを演じることは適役と思ったのですが、リリアンの恋人がダシール・ハメットだというのを初めて知って意外な組み合わせにびっくりした記憶があります。
ダシール・ハメットは「マルタの鷹」が代表作のように語られますが、私も物語としては、それほど面白いと思わなかったです。どちらかというとハードボイルドの嚆矢ともいえる「赤い収穫」の方が面白かったですね。それと「赤い収穫」は黒澤明監督の『用心棒』の元ネタというかインスパイアされたことも黒澤作品が好きな私としては気に入っている要素かもしれません。