カッツ
2025/12/04 11:57
天国と地獄
黒澤明監督、三船敏郎主演による『天国と地獄』は、社会の格差と人間の倫理を鋭く描いたサスペンスの傑作である。
物語は、丘の上に建つ豪邸に暮らす靴会社の重役の息子が誘拐されたかと思いきや、実際には運転手の息子が誤って連れ去られてしまうという衝撃的な展開から始まる。
犯人の要求通り、身代金は支払われるが、その受け渡し方法が特急列車の窓から鞄を投げるという大胆なもので、「こんな手があったのか」と思わず唸った。しかもその鞄には特殊な仕掛けが施されており、捜査の緊迫感が一層高まる。
モノクロ映画でありながら、身代金の鞄が煙を上げる場面だけ色彩が加えられていた記憶があり、その演出は非常に印象的だった。
社会の“天国”と“地獄”を象徴するような構図と、緻密な脚本、そして三船敏郎の重厚な演技が融合したこの作品は、今なお色褪せない力を持っている。
コメントする